第40話 ステルス…

 補機の補修が間もなくおわる、慣性制御系の補修が完了すれば、再稼働に入れる。主機もあと500時間もあれば修理を完了できるとメンテロボAIリーダー「テイラー」からの報告。


うーん500時間?、日数にして20日、短いのか長いのか…


 兵装については、比較的損傷の少なかった上部2番連装砲、と下部4番連装砲を優先して直してもらってる。この2つが有れば、大規模戦でもない限り、なんとかなりそう、シンデンもいるしね。


 さては新体制にて、プラントラボでの「マテリアル」生産をチマチマと始めた。


 異星人の?、違うわ。


 あちら様のは使えない。と、言うか使いたくない。怖いしキモい。


 だから、0から改良して生産してる。材料はに潤沢にあるしね。今は少量生産だけど、補機が完全に動き出せば一気に数を増やせるわ。


 マテリアルについて、あれから色々わかって来た。


 先にマテリアルの弱点を述べておきましょう。


 まずやっぱり、超高温の環境では、マテリアルは分解してしまう。ナガトの荷電粒子連装砲の砲身や、陽電子砲周り、主機や補機への使用はアウト、耐熱装甲板としても当然使えない。


 まぁでも、今までの経緯から、マテリアルが高熱に弱い事は想定はしていたので、そこまで残念ではないわ、使い方を工夫すればいいだけ。


 マテリアルの使い方としては,今のところ艦の内外装とか、構造補助とかに限定される。そのコントロールは私がします。大した事がないように思えるけど、一番範囲が広くて手間が掛かる部分。A9と統合して処理能力が上がったからこそ出来る技。

メンテロボ達には船体周りの保全作業が手離れ出来るので、主要部のメンテナンスに注力してもらえる。マテリアルの使用範囲の拡張については研究を進めて、おいおい手を加えていけばいいわ。


次に優良な点。

 コレが中々に凄い、作業中のメンテロボ達にワガママを言って、船体16ヶ所、艦橋4ヶ所、及び砲塔5ヶ所の計25ヶ所に、「マテリアル放出口」なるモノを設置してもらった。そこからプラントラボで生成したマテリアルを船外へと供給する、マテリアル操作は私自身が行う。放出したマテリアルに電荷を加えると、電位に従いマテリアルが自在に変化する。電荷については仙術防壁の術式を応用。


 おもしろーい


 これは異星人のテクノロジーを盗み転用し、新たに生み出したマテリアル、タイプ「D」の恩恵。それで私は色々と試してみた。


構造体を造れるのは異星人の船からもわかる、かなり頑丈に出来る、構造基礎としても十分に耐久性があるわ。


 そして面白いのが色の変化


 地球の生物、主に昆虫に、色鮮やかな者達が暮らしてた。それらは「染料」的な色での発色ではなく、「構造色」と呼ばれる方式で色を作り上げていた。表面に電子顕微鏡で見ないとわからないぐらいの極微細な構造が形成されていて、その構造が光の反射と吸収、散乱を促し、特定のスペクトル波長だけを見た者に認識させるという、生物進化が生み出した神秘を獲得していたわ。


 色んな模様のある美しい蝶の翅が、この構造色を用いて生み出されてる。特に有名なのはタマムシという甲虫。メタリックグリーンで、赤や黄色のラインで彩られ極彩色を放ち、死んでもなおその色は朽ちることも褪せることもない。古代の化石で発見された時も、この色が残っていたと聞いたことがあるわ。


 そんな虫達も総じて異星人に滅ぼされてしまったけど……


 で、私はいろんな色を試してみた。パールホワイト、メタリックブルー、イタリアンなトリコロール!からのー、ショッキングピンク!、…いやちょっとピンクはなしだわ。


 それよりも一番有用な色を見つけたわ。それは


 漆黒ノワール


 構造を調整する事で、99.999%、ほぼ完全に光を吸収するウルトラスーパーマーベリックなブラックは、宇宙空間で絶大な効果を発揮。まず遠目では光学視認が難しくなる。更に副産物として熱も電磁波も遮断、もしくは吸収するので、光学視認どころか、赤外感知や、レーダーも撹乱できる。まさにステルス素材、これはめっちゃ使えるわ。


 なんて遊んで…いえ、実験をしていたらメンテロボ達から抗議がきた。


「作業の邪魔」と言われてしまったわ。


 ごめんなさい。はは、どちらが上位なのかわからないわね。

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