第33話 天を震わすは霆の如く…

 異星人の重力井戸の罠に嵌められらた。ケレスに仕込まれていた重力変動に囚われ、今私は脱出不能に陥っている。


 展開していたストライク各機に緊急退避を指示、ケレスから距離を取っていたストライク隊は、重力の影響が少なく、お互いカバーし合って、スラスター全開でケレスを離れて行くのを確認した。


 だけどナガト近くにいた特殊戦は、私と共に脱出不能に、私はワイヤーアンカーを射出して、特殊戦4機を捕まえ引き寄せた。すると特殊戦4機は、スラスターを全開に吹かして、私を引き上げようとそのまま飛行する、だけど超重力の影響下にあり、4機1艦の推進力だけでは圧倒的に足りない、もの凄い引力で、ケレスへと徐々に引き寄せられて行く


 ストライク隊が戻って来ようとするも、私は「厳に待機」のコードを発信し、彼らを止めた。


 周囲のジャガ級は、逃げる姿勢も見せず、黙ってケレスへと次々と落下していく、落ちたジャガ級は、重力に押しつぶされ、ひしゃげ分解した。


 …ヤバイ


 周囲の時間の流れは大きく変わってない、中心部はブラックホールじゃないのはわかった、それだけでも救い。でも恒星クラスの重力が掛かってる、それも主星太陽の比じゃないわ、こんなのが続いたら、他の天体にまで影響する。


 艦の姿勢が維持できない!、どんどんケレスへ降下して行く、…なっ!?


 そんな中、ジャガ級が正面から落ちて来た。仙術防壁も物理的な質量の衝撃は防げない。


くっ!!


 船体を捻り、なんとかスレスレでそれをかわす、でも次が落ちてくる。それもかわす、かわす、かわす、次々とかわす。


 …そして、私はその後に落下して来る巨大物体に絶句する。


 スイカ級だった。


 こっちへ徐々に加速して向かって来る、回避は……間に合わない!


 荷電粒子砲!、ダメだわ、補機のエネルギーも、今主機の補助に回してしまってる、チャンバーへのチャージが間に合わない!


 たった1艦の私を誘い出し、潰すためにここまでするの!?、仲間ごと潰すの!?


前がダメなら後ろケレス


 私は光子魚雷を全弾打ち尽くしてる。残っている通常弾頭ミサイル、…ダメ、焼石に水だわ、魚雷を残しておくべきだった。迂闊過ぎ!


ん?、残す?


特殊戦!、まだある!、彼らがまだ持ってる。


 特殊戦2機に光子魚雷の投下を指示した、目標はケレス、至近だけど、背に腹は変えられない!、随伴4機の特殊戦のうち、2機が陽電子砲をパージし、ウェポンベイを開く、そして光子魚雷を各機がベイから2本押し出した。特殊戦達は衝撃防御のため、私の影に入る。仙術防壁を最大にして彼らを守る…


吐き出された4本の光子魚雷は、回転しながらケレスへと落ちていく……しかし起爆せずに圧壊した。


 だ、ダメだわ、光子魚雷が重力に耐えられない、指令爆破前に潰れてしまう!


 どうする、どうする!、どうする!?、ほかに脱出する方法は……手が思いつかない!


 …詰んだ、終わった


 人生が走馬灯の様にって……


 え?、なに?、補助AIが私の指示外で、何かのコードを勝手に発した。それも特殊戦に対して


 すると突然に、特殊戦2機が、陽電子砲をパージすると、自らに繋がっているワイヤーを機体捻って引きちぎった。


 何をしてるの?、私は不安に駆られ、残った特殊戦2機の方を、無理矢理艦へとワイヤー固定し、ワイヤーを切った2機へともう一度ワイヤーで捕まえよとした…


 でも、ワイヤーを切断した方の特殊戦2機は私から離れて行く、これではワイヤーが届かない


 ちょっ…まって!


 その時私は、彼らが何をしようとしてるのかわかった。さっきの補助AIのコード、あれは……、私は補助AIに怒りを覚えた。


 やめなさい!!、私はアンタ達に教えた覚えはないわよ!!


 私の叫びは彼らを止めるに至らない。「必ず帰還せよ」という命令コードを拒絶された。


 どうして…


 やめて…お願いよ……


 その時、シンデン達は翼を2回振った、まるで挨拶するかのように。そして、こちらに向かって発光信号を放った。


“SFJ7W1 Sindenシンデンより to Nagatoナガトへ


“Good Luck”


 シンデン2機がエンジンをカット、ケレスへと勢いよく堕ちていった。私はそれを光学カメラで追うことしかできない。


ああ、シンデンが…


 崩壊する地表面近く、潰れゆくシンデン2機、ウェポンベイの扉が弾け飛ぶのが見えた、中に見えるのは温存していた光子魚雷。


そして、2機が抱えた計4本の光子魚雷が…


炸裂した。


 背後から至近での閃光と凄まじい衝撃波が私に襲いかかる、艦内中枢の緊急保護が働き、全ての回路が遮断された。


 文字通り私は意識を失った。


 ……

 …、

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