第34話 漂流…
……どうなったの?
また……死んだ?
…いえ、死んでないわ、強烈な爆発の電磁波から、船の中枢を保護するため、全ての回路が自動的に遮断されたと、ログに残されてる。
そしてシンデン2機の最後の発光信号ログ
“
……状況を
異星人は、ケレスに重力井戸の罠を仕掛けていた。私を生体反応で誘い込み、ケレスに引き摺り込んで、圧壊させようとする手段を取って来た、それも異星人は自分の仲間諸共に…。
そして主機の出力低下、重力井戸の影響なのか、原因不明により速度が出せない私は、ケレスの重力井戸に完全に捕まり、脱出不能に…
更には、落ちまいと堪える私の上から、雨霰と落ちて来るジャガ級群、それらを何とか避けたものの、最後にはスイカ級要塞がトドメに落ちて来た。
荷電粒子砲もダメ、光子魚雷もダメ
ああ、もうダメだと思った。
そんな絶対絶命のピンチに、直衛の特殊戦シンデン2機が、思いもよらぬ行動に出た。
「必ず帰還せよ」と言う私の命令コードを、シンデンのAI達は自ら破棄し、「自爆」の道を選んだ、魚雷を潰さずに、ケレスに近づくにはそれしかないと判断したんだと思う。私が生き残る可能性を賭けて…とても優秀でいい子達だった、失いたくなかった。宇宙に取り残された今の私には、家族みたいなものだったから…でも彼らは私を護るために逝ってしまった。
どうして私の優先命令をシンデンは自ら破棄できたのか?、どうして「自己犠牲」を選択したのか、私の補助AIが、あの時ななんらかのコードを送っていた。上位命令は私のはず、でも問いただそうにも補助AIは、現在スリープ状態にある。今は確認しようがないわ
彼らが身を挺して繋いだ私の命、…命と言って良いのかわからないけど、なんとか繋ぎたい。
…だからまず、やる事がある。
……
制御系統が何箇所かエラーを出してる。艦内電力制御エラー、電探使用不能、火器管制使用不能、姿勢制御異常、慣性制御不安定…、補機出力低下…、主機停止中…
なによ全部じゃん
補機は……動いてるけどエーテル管がいくつか破損して出力が3%以下に。でも辛うじて艦内への電力供給を維持してる。
主機は?…物がモノだけに頑丈すぎる本体炉は壊れてないけど、仙術循環式、制御系統に異常、保全停止中
で?、ここはどこ?
…わからない、各光学カメラ…ダメだわ、レンズが溶け落ちてる。かなりの高熱に長い時間晒されたんだわ。艦橋の対防爆シャッターも歪んでいるのか開かない。
レンズ無しでも太陽の光りは感じ取れるけど、予備も含め2つの空間ジャイロがそれぞれ異常な動きをしていて、姿勢が定まらない、位置情報が取得できない。グルグル回ってる感覚があるわ。じゃあ各砲塔の測距儀は?……こちらもダメだわ、砲塔そのものが応答しない…
ゴゴン!
何かに当たった?、…あ、メッセージが流れ込んできた。
“Welcome back, Nagato”
ゲッコウ?、ゲッコウだわ、ああよかった無事だったのね。
早々に戦線を離脱していたゲッコウⅡと、私は合流を果たす事が出来た。
私はまだ1人じゃないと安堵した。
ゲッコウⅡから位置情報が送られて来た。カメラもゲッコウの視覚を借りた、戦闘宙域を脱したシンデン達も集結していた、破損してる子もいるけど、未帰還2機を除いて、全機健在、私はもう一度ホッとした。
ゲッコウⅡのカメラを通して惑星の姿をとらえた。
アレは…木星?、太陽系5番目の惑星にして最大のガスジャイアント、望遠で確認すると、特徴的な大斑点が微かに見える……ん?
何アレ?、木星を何かが覆ってる??、んーゲッコウの光学カメラじゃよくわからないわね……でも詮索は後にしましょう。
ここはメインベルトの外側?、ケレスは?……
……光学視認での確認は出来ない、いずれにしても、まず先に補機の修理をして、電力確保と制御系統を回復させないといけないわね。
話はそれからだわ
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