第35話 復旧作業…
で、現在に至る。
私は今、メイベルトの外側を漂流しています。すでに木星の重力圏にあり、少しずつ木星方向に流されてる。
まずは電力確保のために、補機の復旧作業を進め始めた。
補機には27本の「エーテル流動倍増管」と呼ばれる、酸化アルミガラスの器で封じられた装置が円形に並んでる。大きさは大人の背丈ぐらいもあって、大昔のアナログ部品で存在した「ニキシー管」という「真空管式」の表示器に非常に良く似ていて。その管の中になんと「仙術式」が、発光フィラメントで形作られてる。そうエーテル炉は実は仙術で動かされていたと言う事実に驚いた。更に驚かされたのは、補機エーテル炉の製造年プレート、そこには「2051年8月末日」と刻まれていたわ、アルファ基地で主機に施した仙術循環式の初出どころか、私のいた時代よりも40年も前にすでに仙術式はこのエーテル炉に使用され、存在していたことに……、そして製造者の名前は……意図的に削り取られている。
記念艦としてミナトミライエリアに係留されていた時から、「ナガト」は宇宙戦艦としての使命が与えられていたのかしら?
…いえいえ、そんな事じゃないわ、エーテル炉だって核融合炉を遥かに凌駕した機関。100年も前に存在してたなら、航宙艦隊にもっと早く導入出来たはず、なぜそうしなかった?
アルファ基地のテイラーさんは…
「人類は、団結するのが遅すぎた」
と言っていた。そう言う事なのかしら?
記録がないからわからないけど……エーテル炉の採用を拒んだ?
だとすると、やっぱり人類は愚かだったとしか言えない…
…とまぁ、思考を重ねたところで、過去は過去、今は今。状況は変わらないし、そこは割り切りましょう。
さて、そのエーテル炉の管球は、27基中24基が破損すると言う大惨事。内部のフィラメントが焼き切れた状態だと分かったわ。どうやら仙術防壁が関係してるみたい。それでも3基が生き残ったお陰で、僅かに艦内電力が維持出来てる。
メンテロボ達がストックされていた予備管を集中的に交換中。補機に関しては交換だけなので、そんなに時間をかけず復旧はできそう。
問題は主機の「反転重力炉」
こちらは、本体である炉心容器は無傷だけど、仙術循環式と制御系統が破損してる。複雑な制御をしているだけに、慎重な修理が必要で、メンテロボ達も補機交換の合間に
外回りの外装は、高熱と衝撃でとにかくボロボロ、アンテナ類は溶けて無くなってるし、塗装なんかは、さっぱりと剥がれてしまって、耐熱装甲板が剥き出しに…まるで裸状態、いやん。
でも航行には支障が無いので、そちらはとにかく後回し、おいおい直しましょう。
次に電探類や慣性制御系。
補機の次にメンテロボ達が修復にあたってる、自分の位置や索敵、船体を動かすには重要だからね、コレと補機さえ稼働すれば、とりあえず自立航行が可能になるわ。
そして肝心の「兵装」と「火器管制システム系」、オールトの雲まで広げると太陽系は広大、まだまだ異星人は潜んでいると思うし、会話の成立しない連中だと言うのはよくわかったので、出くわしたら戦闘は必至、だから早々に使えるようにしないといけない。
でも主機の次に深刻なのもまた事実。
主砲塔群は、砲塔内部やエネルギーチャンバーに問題はないものの、砲身のほとんどが歪んだり折れたりしてる。更には、根幹のエネルギー伝導系統がダメージを受けているため、荷電粒子砲の復旧は今のところ目処が立っていない。その中で第2砲塔だけは比較的無傷で、測距儀さえ直せば、電磁砲による砲弾使用は可能。亜光速戦闘では意味ないけど…
「陽電子対空機関砲群」
これはほぼ全損、全部を直すのにどれだけ時間がかかるやら…
唯一救いなのは「魚雷発射管」並びに「各種ミサイル発射セル」が健在なところ。
コチラは内装系の兵装だったので、発射装置などは全くの無傷、ただし光子魚雷も通常弾頭弾も、ケレスの戦闘で全弾撃ち尽くしてしまい残弾は「0」、もし弾が有ったとしても、火器管制システムと電探がダウンしている状況では、撃つことができないと言う「四面楚歌」な状態。
とにかく、弾薬庫に魚雷とミサイルを並べて早く安心したいわ、生産プラントを稼働させるにしても、補機が必至、メンテロボ君達、早々の復旧を切に願います。
……他力本願だなぁとつくづく思うわ。
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