第32話 準惑星ケレス…

 私達は、異星人の大船団を突破し、苦もなくケレス上空へと辿り着いた。ストライカー達が暴れ回ってくれたおかげでもあるけどね。

 辿りついたその途端、異星人達の動きがピタリと止まった、沈黙と言っても良いわ。


 彼らの戦力はまだ1割以上は残ってる。メインベルトに展開している異星人の艦艇を集めれば、もっといると思う。


 それなのに全てが完全停止した。


 なぜに?


 私がケレスに近づいた事で、攻撃できないのかしら?、それにしては腑に落ちない、前哨戦の異星人の戦い方はなんだったのか?、あの群体行動を、千単位でして来るだろうと予測してたのに、肩透かしも良いところ。


なんか気が抜けたわ……


 …それに、いつのまにかケレスからの動生体反応も消えてるし、気配を感じないのよね…


 なによ異星人め、どさくさに逃げたわけ?


 この間に、ストライクシンデン達を交代で艦に戻して弾薬を再装填させ、再度発艦、そのまま宙域の哨戒を任せた。特にスイカ級の動きを警戒させつつ、彼らが攻撃行動に出るなら即応していいと指示。


そして私は外周約3,000キロあるケレスの周りを、地表面を走査しながら、周回を始めた。


 「準惑星ケレス」

 球体天体であるものの、質量が小さく、公転軌道も傾いてるせいで、地球では惑星に分類されなかった天体。太陽系内には他にも似たような天体が幾つかあって、その最たるは、太陽系9番目の惑星「冥王星」。この星の基準を巡って、当時は国際天文学会で揉めたと記録にあった。冥王星を惑星認定してしまうと、ケレスを含めた小型天体が一気に惑星に格上げされ、太陽系内の惑星が20個以上に増えてしまうと言う事で、結果的に、冥王星は準惑星に格下げされてしまったとのお話。余談として「準惑星」の定義に関しては、冥王星発見者の国である米国の猛反発もあって、妥協案として生まれたとかなんとか……星は星なのにね。


グルっとケレスを一回りしてみて、人工物とか何もなし、代わりにケレスの地表面から塩分反応が検出されたわ。


塩分?


 更に赤外線と蛍光分析をかけると、あちこちある隕石クレーター内に所々水分が検知された。それらがなんと、海水成分に近い事がわかったわ。どうやら地下から湧き出してる見たい。まさか生物とかいるのかしら?、それが反応した?


 …いえ、今は何も感じないわ。ただの小天体。


 私はスイカ級の方を見た、そちらにも生体反応なし……、一体ケレスとはなんだったのかしら?、星図の赤マークの意味がわからなくなった。


 不気味さと、後味の悪さを残し、私はケレスを離れようとした。


 その時だった!


 え?、なに!?


 突然、ガクンとケレスへと船体が引っ張られた。


 なっ!、重力変動!?、


 ケレスの重力が急激に増した!


 あり得ない!、なんなのよ!?


 ケレスの重力が対数的に増加して行く、周りのジャガ級や、デブリ、近くの小天体までもが吸い寄せられ始めた。


 重力値が異常を示す。でも脱出できない程じゃない。


主機、全力運転!


ゆっくりとだけど、船体がケレスから離れ始めた。


舐めた真似してくれるわ!!


でも、そこで事態が変わった。


え?


急に主機の出力が下がり始めた、原因は不明、何かが作用してる!?、


なっ!、なんで!?、今!?


再びケレスへと引きずり込まれ始めた!


振り切れない!!、落ちる!?


 そうこうしているうちに、ケレスの地盤にヒビが入り始め崩壊を始めた。


 なんなの!?、まさかブラックホール!!?


 こんな罠を仕込んでいたなんて!!、クソ異星人め!!

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