第37話 廃棄物処理施設…
漂流しているスイカ級の処遇について、目を覚ました補助AIと、メンテロボAI群達と協議した。
協議と言ってもシミュレーションによる議論。時間はリアルタイムで僅か3秒。でも仮想加速空間内では2時間近く会話のような作業をしていた感覚。
そうそう、全く関係ないけど、仮想加速空間は、実時間よりゆるりと進む、いわゆる思考加速される空間。ここなら短時間で沢山の映画が観れるんじゃないかと思い、試してみた。すると…
画面が動きません。
正確には動いてないと見まごう程に、もの凄〜くスローモーションな画像が再生されてるみたい。リアル時間では普通に再生されてるけど、思考加速された空間には同期されませんでした。
もし、加速空間に同期させたいなら、映像データを量子化して時間圧縮するとか?……そこまでして見るとかめんどくさいわ。
話を戻して
スイカ級の存在に関する検証を実施。
「廃材」を、ただただ溜め込むゴミ捨て場だとは思えない。そんなことして何の意味があるのか?、捨てるなら恒星にでも放り込めばいい。
そうなると、スイカ級の「廃材」は、彼らにとっては「資源」、リサイクルの対象なのではないかと三者で一致。
次にマテリアルの検証
廃材が「資源」だと仮定した場合、異星人はどうやって活用しているのか?、すでに半壊しているスイカ級。消滅した部分にリサイクルプラントがあったのでは?と、意見した。だけど、補助AIが否定して来た。
構造的な配置から、その様な施設はスイカ級には存在しないと言ってる。
AIが提示して来た可能性は、例の「マテリアル」、異星人の船の根幹はこのマテリアルであり、マテリアルを使い、廃材を資源に変えていると指摘してきた。
どういうことか?
AI曰く、マテリアルは、「ナノマシーンであり、資源の分解再構築を行うものであり、構造維持の物質である」
と、AIは大胆な仮説を立てて来た。でも否定する材料もないわ。あれだけの大艦隊を維持、保全するなら、これほど理想的な方法はないわよね。
そうなると今度は、「マテリアル」を私達に制御可能なのか?、というフローが生まれた。
マテリアルが制御可能であれば資源の運用どころか、船体の修復に大いに役立つ可能性がある。役立つなんてものじゃないわ、メンテナンスが楽になるし、被弾した箇所を素早く直せるかもしれない。
でも制御不能な場合は?
資源はマテリアルに汚染されていて、もし取り込んだりしたら、逆に乗っ取られる可能性大。制御不能な代物を体内に取り込むとか、ゾッとする。それこそSFホラーだわ。
と、いうわけで現場現物検証です。
ドローンを使用して、スイカ級内部を調査しつつサンプルを採取、それをいくつかの格納容器に入れ、汚染なき事を確認し、持ち帰る。そして艦内プラントの空きスペースに、メンテロボが急造で新設した「隔離ラボ」にて分析を始めた。分析自体は補助AIが担当。
私?、見てるだけ、何もできないもん。
…小一時間程して結果が出た、早いわー、さすがだわー
結果は、AIが推測した通りだった。
かき集められた廃材は、マテリアルにより資源にへと変換されていた。
そしてマテリアル…
制御が可能。
これが一番大きな成果。
マテリアルは、実は3種類のタイプで構成されていて、それぞれが役割を持っていて、
コアとなる「A」、骨組みとなる「B」、結合を担う「C」、Cは物質の分子間相互作用を促してるとかなんとか…
この中でCが重要なんだけど、一度分子間結合が成されると固定され、形が決定してしまう。自在には動かせないとわかった。そこで補助AIは、さらに発展させたマテリアル「D」を編み出した。
Dは電磁作用をもたらすマテリアルで、任意の電位により、Cの分子間結合の間で作用して、マテリアルの在り方を自在に変化させる事ができるというもの…
……いやいや、君は一体何を造った?
うちの補助AIは、異星人のマテリアルそのものを再構築してしまったわ
怖っ。
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