第28話 武士道と云ふは…

「武士道と云ふは死ぬことと見つけたり」

 葉隠


 これは、武士は死んでナンボという話しではなく、人生観を説いた言葉だそうです。死に際を見極め、散る時は潔く散る。そのためにはとして、として、人生悔いなく全力で生きましょう的な解釈。


 26歳で人としての人生がいきなり終わった身としては「悔い無く」は、まだまだ途上だったけど、未来世界の第二の人生は悔いなく全うしたい、…と、つくづく思った。


 …まぁ、私は武士でも人でもないけどね。今や宇宙戦艦であり、頭脳は機械、心は一応……だと思う。


 と、戦場いくさばに赴く前に、人生を振り返る、残す恋人と結婚の約束をする、帰ったら残りのカレーを食べるぞ、などなどを語るのは愚の骨頂、そういう場合は何故なにゆえか「死亡フラグ」なるモノが立つのでございます。


 戦いで死ぬ時は、それらを思い、気を抜いた瞬間に訪れる。


…死んだと思った。


 破壊という「死」は免れたけど、まさに今がそう呼ぶに等しい状態、ボロボロになった私はただ今、木星重力に引かれて絶賛漂流中であります。補機はおろか、永久機関のはずの主機までもがダウンするほどの大ダメージを受けました。現在死に体の私は、メンテロボ達の頑張りで、なんとかダメージコントロールが出来てる。主機の再起動はかなり時間がかかりそう…


 まさか異星人が、すべてを捨て石にしてをするなんて…


 でもきっかけは異星人だけど、大破したのは別の理由……


 保険をかけておいて良かったわ。


 保険とは、艦載機の親分「ゲッコウII」との合流。光子魚雷を全弾発射させた後、ゲッコウには戦線を離脱させる指令を与えておいた。何故かと言うと、メンテロボ達を積んでおいたから。

 そもそも、単艦による敵大部隊との大戦おおいくさ、無事に済むとは思っていなかったわ、その為の措置だったけど、私が生き残れたのは保険だけじゃない、の上に成り立ってるのが大きい。想定外の事態が起きた。そのせいで特殊戦シンデン2機が未帰還となってしまった……


 けっして無謀な戦いを挑んだつもりはないわ、十分に作戦も立てた……はず。だけど戦場では何が起きるかわからないという事を、改めて思い知らされた。


では一体何が起きたのか?


 時間を、異星人との会敵直前まで戻します。

 ………

 ……

 …

 ケレスまでの距離約800万キロ、ついに異星人達が動き出した。


 迎撃のためのと思われる異星人の戦闘艦「ジャガ級」がコチラに向かって急速接近、数は120隻、4手に分かれ密集隊形で高速で迫って来てる。単艦でも平均全長2,000mもあるジャガ級、レーダーに映る密集する影は、まるで小天体。

 それでもケレスに集結している総数の1割にも満たない。


 面舵転舵


私はあちら様を引き込むべく、メインベルト深くへと突入する。


「オマエハ、ダレダ」

「オマエハ、ダレダ」

「アラガウナ」

「テイコウスルナ」


 あちら様からの頭の悪い電文、まだ言ってるし。


 こちらから呼びかけてみようかしら?、ダメ元でも、戦闘が避けられるなら御の字。なので、ワタシから初めてのコンタクトをする事にした、ただし名前は名乗らない。


「コンニチハ、コンニチハ、コチラ、ウチュウヲタビスルモノ、セントウノイシナシ、クリカエス、セントウノイシナシ」


 するとなんと接近中の120隻全てから圧力のように同じ電文が返って来た。スパムメールかよ。


「アラガウナ」

「アラガウナ」

「ホロビニ、キョウジュンセヨ」

「ホロビニ、キョウジュンセヨ」

「アラガウナ」


 電文が変わったわ。滅びに恭順??……んー?、ようは「死ね」ってことよね?。ほんとアイツら直球だわ。仕方ない…


 砲雷撃戦ヨーイ、シンデン全機発艦


 先行していたストライクシンデン4機が間もなく迫りくるジャガ級と会敵する。艦内に残るストライクモード4機と、ファイターモード6機も全機発艦させた。


 そして私の直衛は、特殊戦モードのシンデン4機が担当。特殊戦はシミュレーションスコアの高かった、いわゆるエース機エイセス達。チャージの関係で数発しか撃てないけど、機体下部に陽電子単装砲を持たせてある。


 そして先行中のストライク4機が、光子魚雷の発射をコール。

 

後に引けない戦端がひらいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る