第26話 火星圏離脱…
さすがに天体の軌道域が広がると、全天をカバーするのは単艦じゃ無理があるわね。私の長々空間レーダーは、1A.U.(天文単位)までの範囲だし、恒星の放つ電磁波揺らぎが大きくて、時折りノイズがゴースト化して映ったりして、一瞬ドキッとする。哨戒機は常に飛ばしておく必要がありそう、その点は要検討。
でも、メインベルトに展開する異星人の情報はまあまあ収集出来たわ。やっぱり『ケレス』を中心に集まってる。索敵範囲内で約1万隻…、メインベルトに展開してる総数は、それ以上にいると思う、あーめっちゃ多いわ。
とりあえず大きさで分類してみたわ。
全長2キロ以下クラスを「ジャガ級」と呼称、数は索敵範囲内で9割と一番多い。地球のラグランジュL5と火星の衛星に偽装していたのがこのタイプね。
次に全長5キロ前後クラスを「カボ級」と呼称、数は範囲内で1割弱程度、ジャガ級を従えてる動きを見せてる。
そして最大の10キロ越えクラスを「スイカ級」と呼称、動きは不動で、数は5と少ないわ。恐らく異星人達の司令要塞じゃないかと思う。
それって「ジャガイモ」と「カボチャ」と「スイカ」じゃないのかって?、うんそうよ、別にA、B、Cでもいいけどね。なんだったら「アブラムシ」と「ナメクジ」と「ゴキブリ」でもいいわ。
あ、シンデンから緊急通信だわ……え?、異星人から?
索敵哨戒中のシンデンが、異星人からの通信を受信した。向こうからコンタクトして来るとは思わなかったわ。
シンデンのAIが、どう回答するか求めてきてる。
えーと、異星人の電文は……
「オマエハ、ダレダ」
「オマエハ、ダレダ」
「アラガウナ」
「テイコウスルナ」
コンタクトちゃうやん、直球か。地球の言葉は一応使えるのね。……というか、なにその電文?、言葉は交わせるって聞いてたけど…
「オマエハ、ダレダ」
「オマエハ、ダレダ」
「アラガウナ」
「テイコウスルナ」
同じ電文をしつこく繰り返してきてる、なんて頭悪そうなのかしら、こんなのに人類は滅ぼされたわけ?
うーん、とりあえず無視と返信、するとシンデンから「了解」の旨のコードが返ってきた。
シンデンにはそのままの宙域で待機するよう指示、もし奴らが接近して来る様なら退避するよう命令してあるし、いざとなったら『光子魚雷』を撃ち込んでいいと、反撃許可も出してある。ただし最優先コードは「無事の帰還」、戦力を失うわけには行かないからね。
その間に、私は艦載機全てに戦闘AIユニットの搭載を完了させ、準備を整えた。戦闘AIと言ってもメンテロボ君達だけどね。
はい、兼業です。
さてと、そろそろ行動開始と行きますか。
私はフォボスの軌道を離れ、火星の重力圏を離脱する。更に、異星人にコチラのスペックを悟らせないよう、面倒でも第2宇宙速度から第3宇宙速度までゆっくり加速してメインベルトへと徐々に近づいていくコースを取る。準惑星ケレスを追う形のランデブーになるので、第4までは加速しないとね。
さあさあ、外惑星領域へ抜けるための最初の正念場、張り切って参りましょう。
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