第24話 マテリアル…

 異星人の宇宙船墜落現場


 あえて直接の現場調査を避け、墜落地点から高度500mの位置にドローンを滞空させ、そこから探索プローブを4本投下した。


 地面の分析を行う。


 ……分析の結果、夥しい量の「炭素」と「重金属」「ガラス状結晶」、…そして「正体不明の物質」が検知された。更にプローブを投下して、その範囲を調べてみる。

 …その物質は墜落点から、約1.3キロの範囲に広がっていた。その範囲から外側は火星表面を形成している通常成分(火山成分含む)が定量的に検知されたことから、どうやら異星人の宇宙船は分子レベルで綺麗さっぱり分解したと推測される。


 環境に優しい異星人?、だったら地球をあんな目には合わせないわよね。異星人の遺留物がなにも残されていないのは、コレか。


 問題は「正体不明の物質」よね。


「新元素」だとか「未知の物質」とかではなくて、主成分を炭素とした超微細ナノマテリアルな物質で、窒素、酸素、水素、ナトリウム、リンや硫黄?、マグネシウムなど…、既存のさまざまな元素で構成されていて、一種の化合物結晶のような代物。ただ結晶と言っていいのかしら?、とにかく妙な物質なのは確か。ナガトのライブラリにも符合するものはないし、…でも、どっかで似たようなモノを……


 私はそこでふと思い出した。親友のミカサとそんな話をしたことがある、彼女は製薬会社の技術者だった。


 …ああそうだ、タンパク質だ、タンパク質に似てるんだわ、そっかータンパク質だー、ははは、そっかそっか。


 ……えー!?


 ちょっとまって、異星人の体が分子レベルでバラバラになって飛び散ってるって事!?、いやいや散ってる量が半端ないぐらいあるんだけど!?


 え、なに?、どういう事?


 私はもう一つの頭脳である量子演算機のAIをフル回転させる。常識という範疇を捨てるため、ライブラリに蒐集されている「娯楽メディア関連」をソースに入れた。すると推測結果があっという間に出たわ。


 推測

「異星人の宇宙船は生物に近い、もしくは生物そのもの」


 そう来たかー


 こういうのは回収して培養したり増やしたりした日には、突然大きくなって人を襲って…最後の1人になって、助かったと見せかけて、…結局死ぬ的な?


 SFホラーかよ。


 結晶がもし生きてるなら、ナガトに人は乗ってないけど、接触したら私自身を乗っ取られる可能性も捨てきれない。


 ゾゾゾっ


 背筋が凍る、背筋ないけど。直接触れなくて良かったわ。私嫌いなのよねそういうのは……うん、焼こう。


 勿体無いけど汚染されてる可能性もあるので分析に使ったプローブごと焼却処分する事にした。


 私は、十分に距離を取り目標に対し艦を横に向ける。


 通常弾頭ミサイルだと、マテリアルを飛び散らすかもしれない、光子魚雷だと山を吹き飛ばしかねない。


 ならば…


 主砲発射、準備

 荷電粒子連装砲、3番、右旋回0-9-0


 後部3番砲塔が素早く旋回し、オリンポス中腹にターゲットする。指示してないのにシンデンがレーザー誘導してくれている。カワイイ奴め。


砲撃目標、異星人宇宙船墜落地点

測的、自動追尾補正


 連装砲2つの砲身が、火星の風に僅かに揺られる船体を検知し、自動補正する動きを見せる。


 ただし、主砲でも慎重に撃たないとオリンポス山に穴を開け、火山噴火を引き起こすかもしれない。


 薬室内荷電量満充電、出力制限2%、最終安全装置セーフティーロック解除


 この号令、ちょっと言ってみたかったのよね。


 ウチーカターハジメ!


 主砲が煌めく。


 瞬間、オリンポスの中腹を舐めるように、荷電粒子の熱線が通過する、すると地表があっという間に超高温となり広範囲に渡り溶岩のようにドロドロと溶融しだした、直接打ち込まないで、そうする事で飛び散るのを抑えた。


 さすが私。

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