第23話 オリンポス山…

 遺跡に関して特に有用なモノは発見出来なかったわ。異星人が遺跡まで来た形跡も無し…、特に重要性は感じない。とは言え、ここに居座って奴らに見つかって壊されるのも、なんか癪よね。


 てなわけで、私は早々に峡谷を出ることにした。ちなみに、真っ直ぐ上に出ればすぐだけど、わざわざと4,000キロの渓谷を戻って抜け、東の平原側へと抜け出るルートを通った。どんな維持がされてるのかわからないけど、覆っている霧を壊さないようにするための私的な配慮。


 …あと火星ですることはー…


 そうね、撃沈した異星人の宇宙船を調べに行こう、少しは奴らの事を知っておいた方がいいものね。


 私としては積極的に彼らに関わるつもりはないわ。


人類としての復讐?


 確かに最初は腹が立ったけど、今はそんな気も起きないわね。別に自分が人じゃ無くなったからとかじゃないわよ?


 宇宙が誕生してから138億年と言われてる、地球人類が栄えた時間なんて、そのスケール間で言えば「ポッと出てパっと消えた」てレベル。ちょっとした宇宙の弾みでいつ消えてもおかしくない。実際に消えたけど…


 私が26歳で儚く潰えたのと同じ。…極論過ぎるのかもしれないけど、今の私には同じに思える。


 だったら2度目の人生は、やりたい事をやりたい、この宇宙の始まりを、宇宙の果てを見て、宇宙の理を感じてみたい。


 航海の邪魔をするならどうぞご自由に、私は全力で排除します。


 異星人の宇宙船が墜落した場所は「オリンポス山」の中腹付近。私はマリネリス峡谷を出た後、大気圏巡航速度まで加速して、火星を東周りで進み、小一時間ほど飛行した。


…そして火星を四分の三周ほどすると、見えてきた。


 高高度上空をスーパーシンデン6機が、旋回してる。


『オリンポス山』

 人類が観測した中で太陽系最大といわれており、標高は2万メートルを超える超巨大火山。地球で一番高い山の倍以上、山体裾野の直径も600kmぐらいあるらしいので、単純にデカい。


 外周裾野は崖になっていて、そこだけでも6,000〜7,000メートルぐらいの断崖、崖だけでエベレストの高さ近くある、もう何もかも桁違いに大きい。


 その中腹、5から6合目付近で、異星人の宇宙船墜落現場を発見……なんだけど…


 あれ?


 墜落し地面を引きずった痕跡あるのに、肝心の船体がない?、シンデン達のもたらした情報ではここに落ちて、完全に破壊されていたと報告されてる。


 それなのに破片1つ転がっていない。


 仲間が回収した?


 いえ、そんなはずないわ、周囲を哨戒していたシンデン達は何も感知してないし、ここに来るまでに、私の長空間レーダーにも反応はなかった。ジャミングされてる形跡もない。


 消えた?、その場で?


 異星人に関しては、「ほとんど何もない」と言ってもいいくらい、情報がないのよね。なんで残されてないのか? …改めて思う、国連航宙艦隊はなんで戦闘記録を残さなかったのか、もしくは残せなかった?、残すことができなかった?


 私は周囲を警戒しつつ、再ローテションさせるため、シンデンを2機づつ呼び戻し、2機は対艦爆装を、4機は機体チェックだけに留め、そのままの武装で、ストライクモードのシンデン2機の支援エスコートとして再び発艦させた。


 それにしても、墜落地点に妙な違和感があるのよね。


 シンデン達には上空監視を徹底させ、私は墜落地点を調べるために、調査分析用ドローンを飛ばした。

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