第22話 マリネリス峡谷…
『マリネリス峡谷』
火星の赤道付近にある、長さ4,000キロ、最大深さ7キロの渓谷、目的地はその谷の西側にある『ノクティス』と呼ばれる複雑地形の場所。
…と、侵入してみたものの、近づくにつれ霧状の氷が漂い始め、遂には周囲を覆い尽くし視界は最悪に、それに赤外線が通らないし、なぜかX線までも通らない、そのため地形が読み取りにくい、アクティブソナーに切り替え周波数を色々変えた
しかたなく、急な回避行動が取れるように、速度を落とし峡谷を進んだ。
情報だとこの辺り……ん?
突然に霧を抜け視界が開けた。背後を見ると霧がカーテン状になっていて、上空も霧に覆われてる、なんか異様な空間だわ。
更に進むと……あら?、都市?
風化した石造りの建造物が立ち並ぶ、かなりの規模な街並み……なんなのここ?、遺跡?、火星に?、ん?、んん?、んんんん?
その都市のほぼ中心位置に存在する一際高く大きな建造物が存在する、私の視線はソレに釘付けになった。
私の知識の中にある見知った建造物…、想像に得難い代物、でも変に納得してしまう。
それはピラミッド型建造物、…いいえピラミッドそのものだわ。それも「エジプト」の…ではなく、南米「テオティワカン」のピラミッド、太陽なのか月なのかはわからないけど、意匠がそのまんま。
まぁこういうのは大体異星人の遺跡と相場が決まってるわよね。
ここから地球に移り住んだと言う流れかしら?、それともコッチに移住したのかしら?、でも星を渡る様なテクノロジーを持っていたかと言うと疑問が残る。だって建物が全部石でできてるんだもの。巨石を扱う建築技術は高そうだけど、まさか石で宇宙船を造ったとか?
…まぁ、地球レベルで非常識でも、宇宙レベルだと常識なのかもしれないけどねー。
この遺跡を発見した当時の考古学者は、発作を起こすほどの大発見だったんでしょうね
…だからと言って、この遺跡がなんだというのかしら?
私はドローンを使って、全センサーを総動員して都市遺跡を走査、分析して回らせた。
私自身は有線通信プローブを峡谷の上まで伸ばし、哨戒中のシンデン達と通信しながら異星人の動きを監視。火星にいた宇宙船を撃沈して、艦載機を大量撃墜しちゃったから、メインベルト付近をウロウロしてる異星人連中が、なんらかの動きを見せてもおかしくないからね。
……
…遺跡調査の結果
結論から言うと、人っ子1人いない、ここは放棄されたただの都市遺跡、それから重金属反応はなかったけど、建材の一部に高度に加工されたセラミック材が使用されてた。それが有れば宇宙船が建造出来るかもしれないわね。
そもそもこんな深い谷底に、さも隠蔽するかの様に都市を建設した理由は?
実はここ、大気が非常に安定してる、窒素と酸素濃度が地球の高山地帯程に高められてる。さすがに気温が低すぎるので生身で過ごすのは難しいけど、氷の霧に覆われてるおかげで宇宙放射線が遮られてる。気温さえどうにかできれば人が住めそう。
そうすると氷の霧は、自然由来ではなく、人工的に作られてる可能性があるわね。発生源までは特定できてないけど。
ここは言わば環境を整えたテラフォーミングされた場所、この遺跡にマークがされていたのは、地球人の避難地候補だったのかも。
まぁでも、推測の域は出ないけど、人類が滅んだ今となっては、無意味な場所よね。
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