第19話 それにしても…

 私はラグランジュL5で、異星人と会敵するまで、人類が勝手に滅んだのではないかと、心の中で思ってた。

 全ては人類の妄想で、自分達のしでかした滅への道を、居もしない異星人へとその罪をなすりつけようとしたのではないかと…


 でもいたわ、確かに存在した。


 彼らはこの宇宙における地球人類以外の知性体、もう少し会話があってもいいんじゃないかしら?、問答無用というのはどうなのよ?

 あちら様からいきなり攻撃してきたし?、SSIFに反応もなかったし?、もう応戦するしかないじゃない?、結果的に撃滅してしまったけどねぇ…

 …だけど不思議と屠ってしまった事に対する罪悪感はまるでないわ。それどころか怒りや、恨みと言った憎悪感情も湧いてこない。そういったモノが随分と希薄な気がする。


「ごめーんやっちゃった、テヘぺろ❤︎」


…といった感じ?

…うーん、なぜに?


 コレって機械脳のせいなのかしら?、地球人という業によるものなのかしら?

 どうも、私と融合したAIが関係してる気がする。ひょっとして無意識に感情をコントロールされてる?


 でもなー、楽しいとか、嬉しいとか、悲しいとかは、ちゃんと理解できるのよね。


 うーん。


 それにしても異星人か、ここに来るまであまり考えないようにしてたけど、この先もっと遭遇するわよねー……地球の生きとし生けるもの全てを死滅させた連中は、いったいどんな奴らなんだろ?


 その辺りの情報はライブラリには残されてないのよね。どこから来たとか、容姿だとか、規模だとか、戦闘力だとか、ただただ残忍だとしか記されていない。……


 今度遭遇したら、ダメもとで呼びかけてみようかしら?、会話出来るって聞いてるし…


 …ああでも初めての遭遇で、いきなり吹っ飛ばしてしまったわ、だいたい私の兵装がチート過ぎるのよ!、「エンタープライズ」も、月で見た「ツングースカ」も主機は『核融合炉』だったし、反動推進器は核タービン水素ロケット、兵装も荷電粒子砲や陽電子砲と言った凶悪なモノは装備されてなかったわ。せいぜい大出力のプラズマレーザー砲と電磁砲、それから極超音速ミサイルぐらい、光子魚雷さえなかった。


 アルファ基地に残されていたテイラーさんの記録説明では、ナガトに使用されたテクノロジーは実戦配備に間に合わなかったとあったわ。…明らかに、地上で放置されていたナガトの方が建造古そうなのにね。


 もしナガトの装備が既存の航宙艦艇に普及していたら…、もし『仙術』の技術だけでも、先に広められていれば、戦況は大きく変わっていたのかも。


 でも『if』を言い並べても切りがない、「あの時こうすれば」「あの時こうしておけば」なんて、人生後悔は沢山ある、過ぎた時間は戻せない、前を向くしかない……


 ……ふふ、前を向くか


 人類の未来は既に終わってるのにね。

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