第14話 静かの海…
本体は、まだまだ改修に時間がかかる。
それならばと私はナガトに搭載されていた大型多目的艦載機「ゲッコウII」を使い、アルファ基地を出てとある場所へ向かって月面上を飛行中。目的地は「静かの海」と呼ばれる場所、地球が見える側が良いかなと思って……そこで死者の埋葬を行うつもり。
「静かの海」に到着した、でもデブリが落着してゴミ捨て場の様な有り様になってましたわ。クローラーを降ろしてある程度付近を掃除し、テイラーさん達を含む、回収した12遺体をその地に埋葬した。
墓標も建て、埋葬の終わった私は、そこでただじっと地球を見つめた。海が干上がり赤黒く醜く焼けた星、でも地球だ。
地上走査の結果、地球は各地で今も火山活動をしているし、プレート運動もしてる。あんな姿になっても地球自体は活動をしてる。それはすなわち地下には十分な水分が埋蔵しているはず。何千年、何万年、何億年、いずれ地球は薄くなった大気層を取り戻し、自己再生するかもしれない。新たな生命を宿すかも知れない…
でも、私がそれを見届ける事は恐らく叶わない。機械の身体とは言え、メンテナンスなしではいずれ朽ち果てる。
アルファ基地はナガトの改修が終われば基地機能を完全停止する様にプログラムされていたから……
クローラーをゲッコウに戻し、私は再び飛び立ち、今度は居住基地へと向かった。
……
最初に見た時から気づいていたけど、この居住基地は比較的に建造物が残ってる。
…でも、やっぱり生体反応はない。
中にも入って見た、人が居住していた形跡はあるものの、遺留物が殆どなく遺体も発見出来ない事から、慌てて脱出したという感じじゃないわね。
ここまで何もないと、地球人類は、実はどこかで静かに潜んでいるのかも知れないと思ってしまう。
…少なくとも地球から1AU(天文単位)、すなわち1億5000万キロ圏内ではなさそう。内側は太陽まで、外側だと火星軌道より更に外、アステロイド群体軌道に届くか届かないぐらいまでの距離に相当するわ。
どういうことか?
簡単に言うとワタシ(ナガト)の長々空間レーダーの索敵範囲に天体運動以外で動くモノが感知されないから。
それでも分解能はそこまで精細ではないわ。うーんそうね、小惑星ぐらいの大きさの表面を歩いてる人は、見つけられないわね。
あ、サブコンから補機、主機の運転ができるようになったと連絡が来たわ。
それでは、アルファ基地に戻るとしますか。
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