第13話 何をすれば…
私、ナガトの船体は地上で隠蔽偽装されながら秘匿建造されていたようです。なんでそんな事してたのかわからないけどね。
そのせいなのかブロック毎に組み上げられてる。ブロック工法は、大型造船では当たり前のやり方だけど、ナガトの場合はちょっと違う。「拡張性を持すため」という理由もあって連結と切り離しがロックシステムによって容易にできるようになってる。そのため、私の姿は現在ほぼバラバラ状態。艦橋部や連装砲を、吊るし型の超大型クレーンで持ち上げていて、私の内臓は剥き出しになってる。いやん。
ドックと私に搭載されたメンテナンスロボット達が、24時間フルタイムあくせくと働いてくれてる。流石疲れ知らず。私はそんな彼らに仕事を任せ、ドックのメンテナンスロボ1体を借りて接続し、アルファドック内を巡っていた。
ロボは子供サイズで無限軌道輪で移動するタイプ。人型にしていないのは効率なのかしら?、予測した通り、基地内には人っ子1人いない。そして遺体も見つからない。
現在、主機の火は待機運転させているので、ドック内の電力供給は最低限に抑えてる。必要のない生命維持装置や照明なども働いていない。基地内はとにかく空気がない状態、気温も−55℃、人間なら宇宙服が必要なレベル。こんな環境下で生きている人はいないと思う。
…
巡り巡って、私は外から溶接され閉じられた部屋の前に来た。
センサーには生体反応はなし、ライブラリ情報だとここは発令所。私はロボの溶断器で、溶接部を焼き切り、扉をこじ開けた。
…
中は凍っていた。僅かに大気が残っていた証拠。中は真っ暗闇、サーチライトで照らすと、正面に大きなモニター、階段状に列なった座席、そしてこの基地での初めての遺体を発見した。数は3、当時の姿で座ったまま眠る様に凍ってる。
私はその中で1人のネームプレートを見た。
ジョンソン・テイラー
あの映像の人物だった。
最後までここで指示を出していたのね。さっきは不敬な態度を取ってしまいました。謝罪します。
あ、そうそう。
エネルギー効率498.9%のカラクリだけど、まず補機、補機はエーテル炉により充電された待機電力を僅かに使用するので、エネルギー効率が98.9%、それでも効率的にはすごい。そして主機、主機は単純な話し、ちょっとした火種をエネルギーの起点にして、反復増幅させている計算なので400%。これは物理的にあり得ないはずなんだけど。例えるなら崖からひと握りの石を一個落としたら山が崩れた的な話しになる。要するに核分裂や核融合の状態と似た様な話しなんだけど、核融合炉でさえ冷却や廃熱の関係で90%行かないのに、補機と主機がどれだけチート機関なのかは分かったわ、それだけのモノが必要なのは後々知ることになるんだけどね。
居住区
人の営みがそのまま残ってる。壁に貼られたスケジュール表、止まった時計、家族の写真、基地職員の子供が描いたと思われる青い地球の絵…
機械の身体でなければ私は泣いていた。
取り戻したい、全てを。
でもそれは最早叶わないと認識してる。ここは未来であり、地球は修復不可能なまでに破壊し尽くされ、人類は滅亡してた。
私はこれから何をして、何をすればいいのか、この先の展望がまるで見えない。
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