第9話 ゴミだらけ…

 ふふ、死ぬかと思ったぜ。

 いやいや、死んでる死んでる。

 と、1人ノリツッコミ


 なんとか衛星軌道まで上がったけど気は抜けない。もっと加速して高度を上げないと、また地球に引き寄せられてしまう、ぶん回したせいで主機の動作が不安定、メンテナンスが必要なのよね…


 …それにしても


 宇宙空間はもの凄いゴミと岩石だらけ、デブリってやつ?

地球に落下した巨大隕石が巻き上げた岩石がほとんどだけど、人工物も見て取れる。

 航行に支障をきたすほどに、大小様々なモノがごちゃ満と漂ってる。それが、地球の重力にとらえられて集まり、三層の惑星リングが出来上がってる。1つ弾いてしまうと連鎖的にデブリが舞い始める。


 ヤバイヤバイ。


 ん?、パッシブに感あり?、前方に大型デブリ?、って…何よアレ!?


 進行方向に巨大な物体。画像識別が物体の正体を判別した。それはかつての軌道エレベーターポート、崩壊したシャフトから外れ、宇宙空間をポートだけが遥か彼方のカウンターウェイトにぶら下がる形で漂ってる。


全長全幅は約500メートルもある。ちょ…デカっ!、接触まで20秒!、相対速度が速すぎてコレは避けられない!


 ええい!!


1番、2番、荷電粒子砲射撃用意!

薬室内エネルギー満充電

エネルギー伝導回路開く

目標、前方巨大デブリ!

測的正面進行ライン

安全装置解除


発射シークエンス省略、発射!!


 ぎゃっ!


 私の光学カメラを潰さんとばかりに、41センチ荷電粒子連装砲2基が同時に眩い閃光を放った。


 …エレベーターポートは周囲のデブリごと一瞬で融解、蒸発してしまった。


 ……こ、こっわー、何よ今の威力、あの大きさが一瞬で消滅って、洒落にならないわ。


 でも今の、人はいなかったわよね?

 動生体センサーのログを辿り、私はホッとした。生体反応なし、無人だった。


 咄嗟の判断とは言え、してはならない事をした気がする…


 あ、あれ?、1番、2番砲が使用不能になっちゃった。え?、なんで?…エネルギー充填に4000時間??、うわ、なにそれ先に言ってよ!、ココぞって時にしか使えないんじゃん!!


 迂闊…


 ちょっと自分の身体の使い方や制御系のコントロールを覚えないといけないなぁと、つくづく思った。


 艤装の把握、アクティブ、パッシブ両レーダーによる索敵範囲、各種センサーによる宙域の観測、船体制御、艦載機やドローンのコントロール、連動した火器管制、それらをまとめる統合情報処理をマルチタスクで出来る様にしないといけない。

 ああ大変だわこりゃ


 …


 地球を周回しながら、私は訓練した。おおよその制御が出来る様になってきた。鼻歌混じりにダンスも出来るわよ?、冗談だけど。後は主機が完全になれば、晴れて全ての能力が解放される。どうやら現状の出力は10%にも満たないみたい。大気圏内でちょっと浮かすぐらいが関の山だったのよね。

 …それと、火器管制の中にアクセス出来ない封印された情報領域があった。それは独立した制御領域で、私からのアクセスは実質出来ないのよね。その制御キーはCICになってる。

 …なんだかわからないけど、多分ロクなものじゃない気がする。

 自分の中に異物があるようで気持ち悪いけど、触れないなら放っておこう。


 それにしても、娯楽施設が充実してて凄い嬉しい、特にライブラリーが素晴らしい、偉人達の創作した壮大な楽曲や絵画など、人類が作り上げた様々な文化が蒐集、記録されてる。特にマンガ、アニメ、映画のサブカルチャーが恐ろしいほど充実してる。絶対にマニアな人が集めたに違いない。


 引きこもりになるわ。


 と、まあ冗談はさておき、地球を周回しながらだいぶ船体からだの使い方に慣れてきた。

 人間やるもんだ、もはや人間じゃないけどね、ははは。


 取り敢えず空間上の邪魔になりそうな大きなゴミは、大気圏に落として取り除いた。このゴミ達は恐らく異星人との戦闘で散らばったモノなんだと思う、何体か漂う遺体も回収した。凍っているため腐敗してない。


 地球に落として大気火葬する事も考えたけど、気がひける。地上にも降ろせないし…月に埋葬しますか。


 さあ、月を目指すわよ。

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