第10話 月へ…
地球上には一切の生命反応がなかったわ。
私は今、いちるの望みをかけ、地球の重力を離れ、月に向かっている。私の時代とその先の未来では宇宙開拓時代が始まっていて、月面には居住基地があり、月面裏には国連の航宙艦隊基地がある。と、ライブラリーに記録されてる。そこで人類が生き延びている可能性がある。
でも、無線は使えない。
どこで誰に聞かれているかわからないから。
人類を滅亡に追いやった連中が今も太陽系内に潜んでいるかもしれない。
…それにしても静かすぎるわ。
地球を滅ぼした連中はどこに行ったのかしら?、滅ぼしに来ただけっていうのも解せないわよね。
かつての地球圏には様々な電波や信号が飛び交っていたはず。今感じ取れるのは恒星の放つ電磁波ぐらい。人工的な信号は何も拾えない。
それでもどこかで人類は生き延びていると信じたい。
でも、憧れの月に、こんな形で来るなんて思わなかったわ。
月の重力圏に入る。
月を巡る周回軌道に入り、ギリギリまで減速、地球程でもないけど月の重力も馬鹿にはできない。
月近くもデブリだらけだわ。
月には大気層がないのでデブリは燃えたりせずに月面へと落着する。月面が不法投棄のゴミ捨て場みたいな有り様になってる。
月面サーチを開始。
居住基地を光学で補足……建物は部分的に破壊されてはいるけど、幾つかは残ってる。動生体反応は…なし。基地に向けてピンポイントで信号発信。続いて発光信号も送る。
『ワレ、ココニ、イル、オウトウ、サレタシ』
居住基地からの応答はなし、捜索は後にして、そのまま月面裏へと周って行く。
なぜかと言うと、突如ビーコンを受信したのよね。発信源は月面裏の国連航宙艦隊基地の辺り。生き残りがいる?
月面裏は穏やかな表とは異なり、隕石クレーターだらけでボコボコになってる。
航宙艦隊基地を補足……私はその現場を見て絶望感に苛まれた。基地は完全に破壊されていた。軌道上にあったとされる基地は支えていたエレベータータワーごと倒壊し月面に落下していたわ。周囲には大破した艦船群が横たわったり、突き刺さったりしてる。生体反応は…無し、か…。
でもビーコンは発信されてる、基地じゃないわ、何処から?……見つけた。
基地から少し離れた場所にある深い隕石クレーターの中、日の影になっていて光学では中が伺えない。
私は周囲を索敵してから月周回をやめて降下を始めた。
底部探照灯ON、地形をレーザー走査。
人工物?
クレーターの底は整地され、底に、ナガトが通るに余りある程の、巨大な開閉式ゲートがあった。ただし閉じられている。
あっ
その巨大なゲートが左右に開き始めた。誘導ビーコンはその中から出てる。
サーチライトで照らすも奥の方は暗闇で見えない。
開けたのは一体誰?
こちらから無線で呼びかけるも反応はなし。
……んー、入ろう。
私は意を決して、クレーターへ降下を始めた。
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