第7話 サヨウナラ…

 イオウジマ


 かつてニッポン人と米国人が、第二次世界大戦で苛烈な戦闘を繰り広げた火山島。

 私の時代でも、まだ戦没者の遺骨の一部は回収されずに残っていたと聞いてる。

 元々、サガミノ国はこの島に軌道エレベータを建設するつもりだったみたいだけど、ニッポン、米国双方の慰霊の地でもあり、サガミノ国も無関係ではない。特にサガミノ国と米国にはお互い禍根が根深くあり、折り合いがつかず、オオシマに建設を始めた。


 さて、そんなイオウジマに来てみたものの……


 どこにあるのよブースター。


 火山活動をしていて溶岩流のせいで、島の形も変わってる……記録情報では、島の東部監獄岩との間の海域と記されてる。


なぜこんな所に??


 海、干上がってますけど……おぉっと?、地上走査に反応ありです。該当地点の地下に巨体な構造物反応。


 …って、埋まってるの?


 さっそくナガトに搭載された重機達を下ろして慎重なる掘削作業を始めると、地面下に空洞を発見。しかし超音波探査の結果、どうやら内部は崩落していて、肝心のブースターは空洞内で埋没している、掘り出すにはかなり時間がかかりそう。


 ブースターの掘り出し、そしてメンテナンスまでを含めて試算すると、約1週間と試算。それならばと私は再び母港ミナトミライへと戻り、極東地域をみたび探索することにした。


 なぜそこかと言うと、感情的に同郷の人々を探したかった。


 北はホッカイドウエリア、北方四島も範囲に含めた。南はキュウシュウエリアとアマミ諸島エリア。チョウセン半島も念のため再捜索、ただしリュウキュウエリアは索敵機だけを飛ばした。…あそこはタイワン島を含め大きなクレーターになって島が消滅していたから…


 念入りに捜索した結果は……やはり誰も、何も見つからなかった。

 こんな有様で生き物が生き延びてる方が奇跡に近い、でもコレで後ろ髪引かれる事なく宇宙に出られる。


 ブースターの掘り出しが完了したと、連絡が届いた。


 サヨウナラ、我が祖国


 イオウジマへ向かう途中で、私が死んだあの日に行く予定だったオオシマ軌道エレベーターが、現在はどうなっているのか確認したけど、…無かった。土台部の巨大構造物と支えていたであろうダンパーは残っていたので、エレベーターがそこに存在していたことだけはわかった。こんなものまで失われてしまっていたのね。

……

そして、再びのイオウジマ


 そこで掘り出されたブースターを見て一言……


 え?デカっ!?


 掘り出されたブースターは、仮設された巨大な架橋の上に載せられてる。仮設といってもしっかりした造り。コレも1週間で構築したの?いったいどうやって…


 それにしてもブースターの大きさには驚かされる。私の船体より倍でかい、こんなもの1週間で掘り出してスタート台を建設して載せるとか、重機君達の仕事がすごい。メンテナンスは今も継続中。


 ブースターの全長は500メートルはある、後部には巨大なバーニヤノズルが8基星形に並んでる。ソ連の宇宙船用ロケットブースターに似てるわ。まぁでも排水量4万トン越えの宇宙戦艦を軌道上まで上げようとするなら、コレでもコンパクトな方かも?


 多少のサビは見られるけど、埋もれていたせいか意外と綺麗、私はゆっくり降下しドッキング態勢に入った。確かにナガト用だわ、コードが一致する。


 でもこれって海上滑走用なんじゃ……、ええい、でもコレが無いと宇宙には行けない。


 ドッキングシークエンス

 後部推進器閉鎖、微速後進、トラッキング同調。

 私は位置決めし、ゆっくりと下がる。

 パッカリ口を開いたブースター接続部にお尻を入れて行く…って、なんかHだわ。


 距離100、50、30、15、3、2、1……接続位置、ブレーキング、


ゴゴゴンっ!

緩衝ダンパーへの接触音


 船が停止する。

 船体ロック、接続確認。

 伝導回路開く、ブースターの状態を診断……


 電気系統、問題なし

 メイン、サブコン、問題なし

 空間ジャイロ、問題なし

 推進剤、問題なし…普通は発射直前に充填するんじゃ?

 冷却システムにエラー

 本船とブースターの同調、制御系問題なし

 オールクリアー

『エネルギー伝導を開始しますか?』


 ちょっと待てコラ、オールクリアじゃないっしょ?、冷却システムにエラー?


 再診断の結果、エンジンの冷却システムに問題があったわ、冷却剤が漏れていて飛行時にエンジンが冷やせない。


 …大問題じゃん。


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