幕間 朔くんは悩んでるみたいです
最近、朔くんの様子が変です。
思いつめたような表情をしていることが多いですし、話しかけても心ここにあらずという感じです。
「朔くん、体調悪いんですか?」
「なんでもない」
「いやいや、顔色悪いじゃないですか。普段から青白い顔してますけど」
「なんなんだ、君は。僕が思わずツッコみたくなるようなこと言わないと死ぬのか?」
「そりゃ、関西人ですもん」
「それはステレオタイプというものだ。おもんない関西人なんて山ほどいるし、関西と言えばお笑いみたいな偏見ははっきり言って嫌いだよ」
アホなやり取りは相変わらずしてくれるのですが、元気がないですし、私と会話しているとき以外は四六時中考え込んでいる様子です。
朔くんはいったいなにを悩んでいるのでしょうか。
私には一つだけ心当たりがあります。
彼の初恋の人のことです。
朔くんが思い悩むようになったのは彼の誕生日の翌日からですし、それ以外に彼を悩ますような出来事や話題が私たちの周りで出た覚えはありません。
私に向き合うため、どうすれば初恋の人を忘れられるのか、彼なりに悩んでいるのでしょうか。
「つゆりちゃん、なに難しい顔して考えてるの?」
昼休みの終わり、朔くんと別れて戻った教室で、私は親友の美帆ちゃんから声をかけられました。
「え、私そんな顔してましたか?」
「してたしてた。悩みがあるみたいだね」
私は思いきって美帆ちゃんに相談してみることにしました。
美帆ちゃんなら他人に洩らさないでしょうし、変にぼかすと伝わらないこともあるので、朔くんの初恋の人のことなども話しました。勝手に話して申し訳ないので、朔くんにはあとで謝っておくことにしましょう。
「なるほどねえ。気持ちは分かるけど、ちょっと重いな、二人とも」
「お、重いですか……」
「初恋の人を引きずってるからと両想いなのに保留する棚倉くんも重いし、相手に初恋の人がいたくらいで気に病むつゆりちゃんも重い。恋人をとっかえひっかえするパリピの中に放り込んだら二人ともショック死しそうだね」
「そんなこと例えでも言うのやめてください、吐き気がします」
「ただ、重いけど、メンヘラまではいかないし、誰に迷惑かけてるわけでもないんだから、悪いことではないと思うよ。お互い相手のことを深く愛して、相手のことを考えてる結果だからね」
「どうすれば解決できると思います?」
「時間に解決してもらう手もあるけど、一番いいのは二人でじっくりと話し合うことかな。それこそどっちかの家に泊まって酒でも酌み交わしながら一晩中話し合うくらいするのがいいけど、高校生じゃ難しいよね」
「難しいというより、酒はダメですよね? お泊まりして話し合うのはできなくもないですけど」
「お互いの家に行けてる時点で、親の許可さえあれば、お泊まり自体は難しくないだろうし、やれるのならものは試しでやってみたらいいんじゃないのかな。もうすぐゴールデンウィ―クだしね」
「一緒に帰る時に提案してみます!」
朔くんが受け入れてくれるかは分かりませんが、とりあえずお泊まりに誘ってみようと私は決意するのでした。
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