第13話 エロあるよ(笑)

 その日の夜のことだ。昨日約束した通り、つゆりに「おやすみ。君も早く寝ろよ」とメッセージを送ってからベッドに入ると、枕元でスマホが「ブブッ」と振動した。

 ロック画面にはつゆりからのメッセージが表示されている。

「エロあるよ(笑)」

 なんなんだ突然。そこは「おやすみ」とか「私も寝ます」とか返すところではないのか。

一体どうしたのだと思ったところで、画像が送られてきた。

 姿見に映った寝間着姿の写真だ。顔はちょうどスマホで隠れている。

 僕はお世話になったことはないが、裏垢女子の上げてる画像みたいだ。もっとも、あの手のアカウントは基本的にスパムで、画像も拾い物かAI生成なんだろうけどな。

 Xでも頻繁にフォローしてくるのが鬱陶(うっとう)しいので、見かける度にブロックしている。

 しかし、つゆりのやつはなんで突然、自撮りを送ってくる気になったのだろう。

 僕が注意したから、ちゃんとパジャマを着てることを証明するために送ってきたのか?

 返信しようとしたところで、もう一枚送られてきた。送られてきた写真を一目見て、僕は思わず息を呑む。

なぜなら姿見の中のつゆりはパジャマの上を脱いで、肌着になっていたからだ。

スマホ越しに野球拳を始めた覚えはないんだがな。

風呂上りなのか、髪の毛はしっとり濡れて首筋に張りついている。身体の水分も拭き取れていないらしく、肌着は身体にぴっちりとくっついて、煽情的だ。

てか、よく見たら乳首透けてない?

 もしかして、ブラ着けてないのか、アイツ。

 衝撃の事実を発見してしまった僕は慌ててスマホから目を逸らす。

 寝る前になんてもの送ってくるんだよ!

 アイツの方は恥ずかしくないのだろうか。

写真を見返してみると顔が赤い。いや、風呂上がりだからこれは当たり前か。

 って、なんでちゃんと見てるんだ僕は。

 スマホをスリープ状態にして今度こそベッドに入る。

 目を閉じるとさっき見たものが、瞼の裏にチラつく。

 必死で振り払おうと羊を数えはじめたところで、スマホが振動する音が聞こえてきた。

 まさか、さっきの続きか!

 そう思ってスマホを手に取ると、こんなメッセージが表示されていた。

「続きはFANBOXで」

 さては攻めた画像を送るのが恥ずかしくなってごまかしたな?

ホッとしつつもなぜか残念に思っている僕がいる。

万一の可能性を考えて市田明日のFANBOXを見ても、続きは投稿されていなかった。

いや、時間差で投稿される可能性もないわけではない。

そう思って30分おきに確認してみたが、なにも投稿されることはなかった。

 いつまで経っても寝付かれず、山鳥の尾のように長く感じられる夜だった。

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