幕間 計画通りです

 うぇへへ、計画通りです。スマホの画面を見ながら、私は思わず心の中でガッツポーズをしました。

 朔くんはスマホが重いからとカメラをオフにしましたが、もちろんそんなのは取ってつけた方便で、大方私に表情を見られたくないとかでしょう。

 オフにする直前、結構混乱した様子でしたし。

 男の子との距離を縮めたいなら、まずはビデオ通話で隙だらけのプライベートを見せつけること。美帆ちゃんからのアドバイスです。きっと今頃彼は画面の前で悶えているに違いありません。

「ふへ、ふへへへぇ」

「つ、つゆり。ニヤニヤしてるけど、なにか面白いことでもあったのか?」

 真っ黒な画面越しに彼の訝し気な声だけが聞こえてきます。

「ちょっといいことがありましてー」

 今の彼の表情を見れないのがもどかしいです。

 と、その時、階下から突然ママの大きな声が聞こえてきました。

「つゆりー! リビングにパンツ脱ぎ散らかさんといてやー! こんなとこ置いとうと、しまいにほかすでー! ちゃんと洗濯機に入れときやー」

 私はとっさに映像と音声をミュートすると、ドタドタと階段を駆け下りました。

「ママ! そんな大声で言わないでくださいよ! 朔くんに聞かれたらどうするんですか!」

「そんなこと言うとうけど、二階におるあんたに聞こえな、注意の意味ないやろ?」

「そうは言いましても」

「それにな、彼の方かて、つゆりのパンツ想像して悶々としとうかもしれへんで?」

「へあっ!」

 もしかして。私は考えていなかった可能性に行き当たります。暗くなった画面の向こうで彼がなにをしているのか。ビデオをオフにされてしまえば私にはわかりません。それこそ、彼が私をおかずにしていたってわからないわけです。

「つゆり、ほんま顔真っ赤やな。明石のタコみたいやで」

「ママのアホー!」

 その後、私が部屋に戻ってからの朔くんとの通話は、お互いビデオを切って音声だけのものになったのでした。さすがに真っ赤な顔を朔くんに見せるわけにはいきませんからね。

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