第7話 デパートへ
はい来ました。ここは丸山駅。
私たちの県で1番大きい場所だ。
電車で15分くらい揺られて着いたが、その間には満員電車で潰れかけたり、ユキトの近くにいた人類は目を離せずにはいられる変な恋愛漫画みたいなことになったり地獄だった。そんな皆もここにつくと一目散に出ていく。
皆、娯楽を求めているんだな。分かるよ。私は流されていくユキトを捕まえ外に出た。
「大丈夫?」
「……あぁ。人に潰されかけたのは初めてだ。」
そりゃそうだよね。
「よし、じゃあ行こうか……っいて」
前を向くと誰かにぶつかった。
「すみません」
「あっ、すみません。」
前を見ず、つい部活のユニフォームを着た人とぶつかってしまった。あの服、確か同じ大学の部活している人だよね。死にかけた顔で電車に乗っているが。
大変だね。私はサークルやめたから自由だけど。
地下が一番近いから地下街を通っていこう。そして、ユキトはキョロキョロしながら通り過ぎていく店を一つ一つ見ている。
「ここは地下に町があるのか?」
「違うよ。ここはただの通り道。上に行くともーっと大きな店があるんだよ」
「そうなのか。俺の街はこのくらいの広さで店もこれより少ない」
「そうなの?じゃあびっくりすると思うよ。すっごいから」
ということで、その道を抜けて大きなイオラにきました。実はイオラはデパートではないらしい。まぁ、デパートみたいなもんだしデパートでいいよね。
「なんだ……ここは。闘技場か」
「違う。店の中の店」
「店?これがか?」
大きな広場はよく芸能人がきてくれるところだ。まぁ上からも見やすいし闘技場できる……かなぁ。
まぁそんなのはほっといて、色々案内してあげよう。
「ここは娯楽もご飯も何でもあるお店なんだよ。この建物にはすっごいのがたくさんあるの、案内するからついてきて!」
「お、おい。待ってくれ。本当になんなんだこれは。」
ということで。混乱しているユキトを連れて一番上にあるゲームセンターにきました。映画も良いけど映画は映画でこないと気分あがらないんだよね。
なんか普通にデートみたい。
まぁ、相変わらず視線やらイケメンやらの言葉が聞こえてくる。四方八方から。ここに来る途中アイス屋のスタッフがユキトをみて10秒くらい固まっていた。あと、小さな少女が目を奪われていた。もう仕方無い。なんか慣れてきたよ。
「なんだこの箱は。そういえば人間は箱を開けるのは好きだったな。これも開けられるのか?」
「開けちゃダメだよ。みててね」
私は100円だまを入れてアームを動かした。
「このアームというものでこの中にある景品を落とすゲームだよ」
「なるほど。これがこの世界の娯楽か」
持ち上がったがすぐに落ちてしまう。相変わらずとれないなぁ。確率ってきついよね。
「一回やってみる?」
「あぁ、やってみたい」
ユキトにさせてみると一回目はボタンをすぐに離してしまった。私も一回子どもの時にやったな。それ。
ということで二回目、彼の手の上に私が最初アシストして横軸を動かし、縦軸を一人で動かさせた。
持ち上がったクマの目とユキトの目が合う。すると、アームからずれ落ちるとき、クマは自分から落ちるようにはねてとれてしまった。
「……」
「……」
クマは喋らない。だが、無機物にもこの男は通用してしまうのかもしれない。
「見ろ。とれたぞ!」
「すごい!これ難しいんだよ」
「そうなのか。これは単純だが、すこしはまりこんでしまうな。全く人間は恐ろしいものを作る」
「これだけじゃなくて他にもあるよ」
ということで、太鼓んの名人かゾンビゲームをみた。リズムゲームよりはスリリングな方がいいかな。
「じゃあゾンビゲームだ」
「ゾンビ?モンスターか?」
ユキトに銃を持たせ、映像に殴りかかるなと教えお金をいれた。
「――!」
「はい、撃って撃って!!こうやって」
私が撃つ姿を彼は頑張って真似しながら打ち込んでいく。流石、異世界育ちのドラゴンだな。手の動きが銃に勝っている。銃が追いついていない。
「あーゲームオーバーだ」
「これは作り物だが、撃った感覚を上手く再現しているな。だが、モンスターはもっと速い」
「まぁこの世界にはそんな経験なんてできないかたね。イメージで楽しんでいるの。」
彼にはアニメとかも見せてあげると喜ぶかな。それとも違うと否定するかもしれない。まぁ試してみる価値はあるだろう。
「ここはとんでもない魅力も持った娯楽だらけだな。他にはないのか?」
「ある!」
私は下に降りて本屋に連れていった。少し静かなものだけど、彼にとっては興味深いと思う。
「これはなんだ」
「本って言ってね。色んな物語とか体験が書かれているものがあるの」
「なら、あれか……とある人物や物語を歌と共に語る者が俺の世界にはいた。それに似たような者だろう。言葉でなくても表せるのか」
彼は本を開くと興味深そうに眺めていた。
「これがお前達の記録の残す暗号か」
「そう、まぁ住む場所によって変わるけどね。言葉は喋れるみたいだけどこれは読め無い?」
ユキトは少し見つめていたが、納得したように首を縦に振った。
「俺の言葉は魔力で無理矢理合わせている。ドラゴンの発音では人間の言葉を出すのは不可能に近い。俺の言葉をお前は言語で聞き取れていると思うが、俺は獣の鳴き声のようにお前の声が聞こえている」
なるほど。まぁ、一から学び直すよりはそっちの方が効率がいいか。
「じゃあ読め無いか」
「目に魔力をこめればいけそうだが目に流すのはやったことがないから難しいな。あとピントが慣れない。だが、読んでみたくはある。」
「じゃあ、少しずつ教えてあげるようか?」
私はひらがなノートを買ってあげた。どのくらいいるかは知らないけど、本って読めると色んな面白いことが知れるからね。
そして、ユニトラにきてパジャマを買ってあげた。身長は180ちょいあるからLだな。恐竜のかわいい柄があったのでこれにした。普通の男が着るとアレだが、彼は何でもいけるだろう。
あとは服だけど、男性用の専門店で店人に聞いてみようかな。
「すみません。あの、彼に似合う服ってありますか?」
「――!」
「……?」
イケメンなお兄さんがユキトをみて固まった。嘘だろ……こいつ。同性だぞ。
「俺、この服屋のデザイン兼オーナーしているんです。絶対似合うものを持ってきます」
そういうと、男は高そうな服をもってきていて彼を試着室に連れて行った。
うーん、まぁおしゃれに金使うのはいいんだけど。なんか財布が血を吐きそうだな。
「どうですか!」
「……どうだ」
「おぅ!」
ユキトはシュッとしたシャツとズボンを着こなしていた。
「あのーめちゃいいんですけど。ちなみに何円ですか、これ」
「5000円です。他の店と変わらない価格を目指してます。あ、でも」
男の人はそわそわしていた。
「彼をモデルで写真を撮らせてください。すっごく逸材です!! モデルといっても店に貼るだけです。それなら謝礼の代わりに無料で提供します。」
「うーん」
お金はそこまでケチる気はないんだけど。モデルねぇ。絶対にとんでもないことになるのは今日だけでも充分にわかりきっているからな。
「実は経営がきつくて」
「よく分からないが、お前には世話になったからな役に立とう」
「本当ですか!!」
こうして、彼は承諾し私は無料で手に入れてしまった。彼は写真を撮り嬉しそうに手を振っていた。どうやら新作を彼に合わせて作るのでまた着てほしいと言い残して。ついでに下着もいれてもらってしまった。
なんか、人の運命さえも変えてしまいそうだな、この人。
まぁ、いっか!!
「楽しかったが、疲れてしまったな。こんなに楽しそうなものがあるが頭が追いつかない」
「じゃあ今日は早く帰ろうか。」
こうして私達はおうちに帰ることにした。
次の日に、その店はとんでもなく繁盛し彼が着た服はすぐに売れてしまったらしい。私はそんな未来もしらず、電車に乗って揺られていた。
知らない君との約束を現実で果たす〜私が生まれ変わりで変なドラゴンの男とスローライフする約束とか知らないんだけどイケメンだからいっか。〜 大井 芽茜 @oimeamea
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