第5話 勝利(?)のしゃぶしゃぶ
こうして、半額のしゃぶしゃぶを求めハロープに来ました。半額シールのやつ買う女はダメとかいうけど、同じもん買うなら安い方がいいだろクソったれ。
限界大学生やぞ。節約術の1つなんだよ、嫌ならお前が全て払え。
そんな事を考えていると、ユキトはまた固まっていた。
「なんだここは」
「スーパーマーケット。ご飯の材料とか大体の必要なものは売ってるからね。」
「大きすぎないか?これがこの世界のショップか。」
彼が見るこの世界はどれも珍しいものなのだろう。ゲームのショップとか細々しててちいさいし、多分あんな感じだったんだろう。
「このカートに欲しいものを入れて、あそこでお金を払う。OK?」
「わかった。この世界も通貨はあるのだな。あいつはよくご飯に金を使いすぎて後でモンスターを狩るはめになっていた。」
お金という概念あるんだな。それなら、この商品を払う前に食うということはないだろう。
「よし、じゃあお金を上手く抑えて買いたいものを買いに行くわよ!」
カートをおしながら、パンに牛乳、鍋の元、野菜、肉など入れていく。ユキトはカートを便利そうに見ていた。
そして、コソコソとした目線を感じる。ユキトに。そんなにイケメンなのか。まあ一緒に来ているし、家庭的がプラスになっているのかもしれない。
人々は顔に夢中で裸足に気づかないが。
「この赤いシールはなんだ?」
「これは半額のシールで、お金が半分になるの。まあ食べられる期間が短いけど。直ぐに食べるならコッチの方が安く買えるでしょ?牛乳は期限が長いものを買うけどね。」
「なるほど。それがこの世界の買い物か。」
変な事を教えているかもしれないが、まあ私にとっては大事なことだしヨシ!
あとはアイス、炭酸ジュース、ポテトチップスを買い込めばパーティっぽくはなるだろう。
よーし、こんなもんでいいかな。じゃあお会計へゴー。
カゴを置くと、店員のおばあさんがユキトをみて一瞬固まった。もはや武器だろ。これ。ルッキズムの権化だ。
異生物だから変に魅力的に見えるのかな。
「金はどうやって手に入るんだ?討伐依頼か?」
「うーん、この世界は契約すると同じ仕事をずっとするの。で、その分お金が貰えるって感じ。あの店員さんは週に3回働いているよ」
「そうか。力は必要ないのか。」
「モンスターなんて出ないよ。危ない獣とかはいるけど熊とか。」
そう言ったものの、彼はよく分かっていなさそうだ。
とりあえず、会計を済ませたのでエコバッグに詰めていく。
「なるほど。軽いものを上にしているのか」
「正解」
察し能力が高いのか、すぐに行動の意図を読み取れるようだ。変に人の世界に馴染んでいるからかな。
私がバックを持とうとすると彼が手に取った。
「重そうだな。俺が持とう」
「ありがとう」
「キャー」
私は悲鳴を言っていない。そう背後のおばあちゃん店員達が言ったのだ。うーん。このドラゴン、魔性の男になりかねない。
それにしても、中身はドラゴンだがこうやって配慮してくれる優しい1面がある。普通にカッコイイ、中身を見てな。
まあ、最初はイケメンだからと部屋に入れたが。
私たちは部屋に入りカバンから材料を取り出し冷蔵庫にぶち込んだ。よし、しゃぶしゃぶだ。といっても、普通の鍋料理に肉をぶち込むだけだ。
「じゃあ作るから待ってて」
「いや、俺も手伝う。何をしたらいい」
手伝ってくれるの?そうだなあ、何してもらおうかな。
「じゃあまずは火の入れ方を教えるわ」
「火は俺が出せる」
「その炎とは少し違うから出さなくていいよ。」
火を出すと言っても電気ガスだしな。多分、火を出されるとこの部屋は燃えるだろう。
「まずはこれに水を入れて、こうやって火をつける」
カチッとスイッチを捻る。
「火?どれがだ?」
そういうので、少し暖まってから手をかざさせた。
「なるほど。」
水に鍋の素を入れて沸騰させている間に、私は野菜を切る。彼はそうだな。うどんをだしてもらおう。
「まずはこれを袋から出してほしい。次はこのお肉をこのお皿の上に置いて」
「やってみよう」
白菜を切り、えのきの下を切ってばらし、ネギを斜めに切った。
ユキトも何となく出来ている。
「俺がこの姿を手に入れる前は、あいつばかりにやらしていたからな。俺がやることは火をつけるくらいだった。」
それで火を出そうとしていたのか。
「ね、貴方がその姿になろうと思ったのは勇者の影響?」
「……あぁ。あいつは人には愛されなかった。もっと傍にいてやりたいと思っていた。あの時、俺が人になればいいとは思わなかったが。」
何年過ごしたかは知らないが、彼が人の姿を手に入れようとしたのも勇者の影響らしい。
「でも、褒められたんでしょ?」
「褒められるのは結果だけだ。褒めるというのは一方的な与えだ。俺はあいつの背を見てこうやって傍で手伝いたいと思っていた。」
その勇者の記憶があれば、きっと彼はもっと喜んでいたんだろうな。ごめん、ただの大学生で。
「そっか。じゃあ色々教えてあげるよ」
「あぁ。」
沸騰した鍋に固い野菜から入れ、最後に柔らかい野菜とうどんを入れた。そして、小さいコンロを机の上に置く。
「完成!」
「早いな。」
しゃぶしゃぶ用の肉と炭酸ジュースを置き、私たちは座った。
「では、手を合わせて」
ユキトにも真似をさせ、ご飯に向かった。
「頂きます!」
「……頂きます。」
「んー我ながら美味!!」
すぐに野菜を口に運ぶと、出汁の旨味が溢れ出す。そして、肉を鍋でしゃぶしゃぶして
口に運ぶ!!
「んー!! おいっしい!!」
今日の戦いもあってか、疲れと達成感が染み渡る。これが勝利の味!
ユキトは口に合うかな……
ん?
「薄いのも美味しいな」
「あっ」
この人、しゃぶしゃぶしないで食べてる。そうだ。教えてなかったんだ。
犬が生肉を食うように、ドラゴンも生肉を食うのだろう。
「それも美味しいけど、鍋に入れて色が変わるまで待って食べてみて」
「……っ。……――――!!」
ユキトは味に衝撃を受けて驚いていた。1口1口を噛み締めるように食べ頷いた。
「うまいな。気に入った」
「やった」
こうやって誰かとご飯を食べるのはいつぶりだろう。今日まで色々あったけど、なんか色々と報われた気がする。
暖かいな。
「じゃあ締めに追いうどんを入れて食べよう」
「これも美味しい。」
こうして、いつもより幸せに感じるご飯はあっという間にすぎてしまったのだ。
いやーお風呂でさっぱりリフレッシュしたし、あとはユキトに教えるだけか。
「お風呂入る?男用のシャンプーもあるし入りなー」
「水浴びか」
「違う。これはこうして……大人しく入って。」
といったものの、彼いわく冷たい水が好きらしい。まあ誰かが泊まりに来るといつもタンクギリギリだしこれなら困らないだろう。
あーパジャマも買わないとなあ。明日にでも買いにいくか。でも、あのスーパーマーケットであの騒ぎだ。デパートは心配だが、もう考えるだけ無駄だ。何とかなるだろう。
「よし、寝るぞ」
ベッドの下に布団を引き、そこで眠らせる事にした。
「懐かしい。あの時は、こんなに暖かい部屋じゃなかったから俺にしがみついて寝てたんだ。」
そういうと、ユキトはあくびをしながら身体を猫のように伸ばしていた。
「ここで寝ればいいんだな。」
そういうと男は丸まり猫のようになった。
「おやすみ。」
「あぁ。改めて、受け入れてくれた事に感謝する。変な話だがな。」
「信じるよ。色々とね。」
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