第47話 二人で育てる
とりあえず、予感は的中した
だが、問題はここからだ。
「ブレナさん、これはどうしたら良いですか?」
「まず、見つけるまでの状況を説明して頂けますかな?」
俺はドラゴンと出会ってから、卵を見つけるまでを説明した。
「なるほど……まずは、そのドラゴンの卵で間違いないかと。ドラゴンは賢い生き物で、人語も理解できるとか。なので、いきなり攻撃をしてくるのには理由があるはずです。ましてや、ハクドラとクロウ様の力を見抜けないわけもない。引けない理由があったのでしょう」
「私達、悪いことしちゃったかな? この子の母親を殺しちゃったわ……」
カグヤはそう言い、落ち込んだ表情を浮かべた。
きっと、自分と重ねてしまったのかもな。
母親を、早くに亡くしているからな……。
「カグヤ、それは仕方のないことだ。殺らなければ、殺られていたのは俺達だ」
「うん、わかってるわ。私……偽善者だね。今までだって、魔物がいっぱい死んでるの見てきたのに」
「いえいえ、お嬢さん。そんなことはありません。我々テイマーも同じ気持ちです。良い魔物もいれば、悪い魔物もいます。そして出会ったからには止む終えない場合も……そして、我々が生きるためにも」
「人間同士でもそうですよね……戦争や、貧しさをなくすにはどうしたら良いのかな? 魔物が人間を襲わなくするには、どうしたら良いのかな? でも、そうすると冒険者の仕事を奪っちゃうし……」
カグヤが唸りながら、必死に考えているようだ。
そうだ、この子は戦争をやめさせたいと思っていた。
それもあり、王妃になろうとしていた。
「カグヤ……それは、後にしよう。俺も、一緒に考えるからさ」
「あっ……話の腰を折ってごめんなさい」
「いえいえ、心優しいお嬢さんですな。ところで、呼ばれたと言いましたね?」
「え? ……はい、そうですね」
「すみませんが、少々お待ちください」
すると、ブレナさんが職員の方々と再び話し合う。
俺達がハクを撫でながら待っていると、ブレナさんが戻ってくる。
「お待たせいたしました……少し試してもよろしいですか? すでに契約をしている可能性があります」
「ん? どういうことですか?」
俺が聞くと、少しブレナさんが考えた素振りを見せ……。
「……呼ばれたと言いましたね? そして、聞こえたということは波長が合ったということです。ごく稀にあるのです、契約をせずに自然の形で結ばれることが。よほど、気に入られたり相性がいい場合ですが」
「なるほど……カグヤ、どうする?」
「やってみたいわ! それで、私が代わりに育てるの!」
「では、こちらへ」
俺の時と同じように、卵を血を垂らした魔法陣の上に置く。
すると、卵とカグヤの間に赤い糸が発生する。
「やはり、すでにパスが通っており……自然契約を結んでおります。おそらく、お嬢さんを気に入ったので魔力のパスを出したのだと思います。そして、お嬢さんがそれを無意識に受け取った。だから、声が聞こえたのでしょう」
「あっ、そういうことなのね。でも……この後はどうすればいいのかしら?」
「触れ続けて、魔力を送るといいでしょう。後は声をかけたり、一緒に寝たり」
その言葉に、俺は疑問を投げかけることにした。
「魔力ですか?」
「ええ。ドラゴンの卵は、親から魔力をもらい成長します」
「へぇー、そうなのね。じゃあ、本当に私が育てるってことね」
「……俺が送っても良いんですかね?」
「問題ありませんよ。嫌なら拒否して受け取らないだけですから」
「なるほど。じゃあ、交代でやるか」
「ふ、夫婦みたいね……」
「え?……そ、そうかもな」
カグヤと俺の魔力で育つドラゴン……護衛としてはうってつけだな。
その後、生まれるまでの簡単な予想を聞いた。
きちんと謝礼を払い、一度家に帰ることにする。
「さて……後は、どれくらいで生まれるかだな」
「最後に聞いたわよね。もう卵に意思があるから、そんなに時間はかからないって」
「そうだな、大体一週間くらいと。その間は、依頼を受けるのはやめておこう。これを連れてはいけないからな」
その間、お金は稼げないが仕方ない。
俺が一人で行っても良いが、卵を抱えたカグヤを守るのはハクでも大変だろう。
何より、俺が落ち着かない。
「え? でもお金が……そういえばアレを受けてたわ! あれならじっとしてても平気だわ!」
「ん? ……ああ、治療院の依頼があったな」
「そうよ! あれなら平気だわ! クロウが暇だろうから、その間はクロウが温めるの!」
「護衛ならハクがいるし、そうするか。幸い、ドラゴンを売れば良い金にはなる。一週間くらいなら問題ない」
「エヘヘ、協力して子育て……二人の子どもみたい」
「二人の魔力を卵に注ぐわけだから、間違ってはいないか」
すると、何故かカグヤの顔が真っ赤になっていく。
おかしい、俺は変なことは言っていないはず。
「そ、注ぐ……ク、クロウのエッチ! バカァァァァ〜!」
「なんでだ!? どうして殴るんだ!?」
「グルルー……グルァ〜」
「おい!あくびしてないで助けろ! やれやれ、みたいな顔をするんじゃない!」
その後、何故か耳が真っ赤になっているカグヤをなだめる。
一体、俺が何を言ったというのだ?
相変わらず、女性というのは不思議なものだ。
そんなことを考えながら、治療院に向かうのだった。
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