第41話 カグヤ視点

 ナイルさんが帰った日の夜、私は自分の部屋の机に座って日記を書く。


 クロウには内緒だけど、実はこっそりと買っていた。


 クロウとの思い出や出来事を、書き留めていたいって思ったから。


 今はそれを見返し、色々なことを思い出す。

 

「この都市ランスロットについてから、色々なことがあったわ」


 楽しいことも、辛かったことも、苦しいことも……。

 クロウと、宿屋で色々なお話をしたり。

 こんな私でも、少しは役にたてたかな?

 クロウの辛い気持ちを和らげられたかな?


 「クロウは、育った環境のせいなのか、弱音を吐くことが苦手みたいだから」


 あとは、一緒の部屋で寝たり……すっごくドキドキしたわ!

 最初の日は、気がついたら朝だったけど。


 「多分、クロウが運んでくれたのよね」


 クロウは、寝込みを襲うようなことはしないとは思う。


 「ね、寝顔見られちゃったわよね? 可愛くないって思われちゃったかな?」


 でも、そんなこと聞けないし……口とか開いてたらどうしよう?

 ダメダメ! 考えたら気になってきちゃう!


 「コホン……あと、冒険にも出たわ」


 クロウと一緒なら、どこでも幸せな気持ちで一杯になる。

 もちろん、魔物とか怖いけど……クロウがいるもの。

 強くてかっこよくて優しいけど……とっても、鈍感でタイミングの悪いクロウ。


 「私が心構えができてない時に限って……か、可愛いとか、言ってくるんだもん」


 すっごく嬉しいのに、上手く伝えられない。

 もう! クロウのバカ!


「……でも、バカは私も同じかも」


 素直になろうとしてるのに、全然上手く出来ない。

 クロウには助けられてばかりだし、私は何も出来ていない。


 「でも、そんな私にクロウは言ってくれたよね」


 焦らなくていい、側にいるって。


 「……私は、私にできることをするしかないよね」


 そんなある日、事件が起きた。

 クロウが楽しそうに話していた、ナイルという人が敵に回ってしまった。

 私は彼に捕まり、攫われてしまう。


 「クロウもそうだけど、私も疑いもしなかったのよね」


 そして気がついた時には、クロウと……その父親と妻がいた。

 私はあの人を、ほとんど覚えていない。

 何故なら、彼自身がクロウと関わっていなかったから。


 「覚えているのは……クロウを冷たい眼差しで見ていたことくらい」


 そんな中、クロウは毒をくらい倒れてしまう。

 私のせいで、クロウが死んじゃうって思った。


 「私はやっぱり、クロウの足手まといなんだ……クロウの弱点になっちゃうんだって落ち込んだわ」


 でも、そっからのクロウはすごかったの。

 機転を利かし、使い魔を撃退し……そして、実の親をその手で。


「クロウは辛い顔一つしないけど、そんなわけはない」


 もちろん元々憎んではいたから、そこまでではないとは思う。

 でも、何も感じないなんてことはないはずだわ。


 「私はクロウを癒してあげたかった……」


 だから勇気を出して、キスを……あぅ〜!?


「お、思い出したら火が出そう……」


 初めてのキスが血の味だなんて、ロマンのかけらもないけど……でも、ようやく伝えられた。

 好きだって、私が側にいるって。


 「でも、クロウも悪いわ……全然気付かないんだもん」


 でも、その後に……優しくキスしてくれから許してあげる。

 そして、とっても幸せな気持ちに包まれた後、私は思った。


 「強くならなきゃ……私はクロウと一緒にいたい。ずっと、これからも」


 もちろん戦うのは怖いし、強くなれるかもわからない。

 でも、クロウを大好きな気持ちだけはあるもの。

 クロウだって、その気持ちで強くなったって言ってた。


 「なら、私にだってできるはず」


 ナイルさんのことに関しては、少しは力になれたかな?


 とてもクロウのこと好きなのは、横にいて嫌でも伝わってきた。


 クロウもきっと、許したかったと思うから。


「だから、私が言ってあげなきゃって思った」


 クロウが、私のせいで辛い思いをするのは嫌だから。


 これからは、もっと気をつけないといけないよね。


 そんなことを思いながら、私は日記を書いていくのでした。








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