第12話 一騎当千

 さて、この感動の再会を邪魔する者片付けなくてはな。


 両手が空いた俺は、二本の剣を鞘から抜く。


「カグヤはそこにいてくれ。俺は、奴らを追い払うとしよう」


「クロウ、無茶だわ! 相手は何千人もいるのよ!?」


「どうってことはない。一度にかかってこれる人数は決まっている。むしろ、乱戦の時は一人の方がいい。ヨゼフ様、カグヤをよろしくお願いします」


「クロウじゃと!? まさか、あのヒヨッコが……」


「あれ? 気づいてなかったんですか。まあ、挨拶は後で」


 俺は馬を反転させ、帝国軍に近づいていく。


「も、戻ってきたぞ!」


「あ、あいつはなんなんだ!?」


「見たことないぞ!?」


 俺を知らないとは……やはり、国境に来たことない奴らか。

 ならば俺の敵ではない、さっさと片付けるとしよう。


「聞けぇ!帝国軍の兵士よ! 逃げるのならば追わないと約束しよう! だが、歯向かう者には容赦はしない!」


「ははっ! 何言ってんだ!」


「馬鹿じゃねーの!?」


「いや、俺はさっき見たぞ! 兵士達が瞬殺されるのを……!」


 反応は様々だ。

 恐れをなして腰が退ける者、バカにする者、分からず戸惑うものなど。

 だが、戦場に残るのならば容赦はしない。


「さあ、どうする!? 十秒間だけ時間をやる!」


「どうする!?」


「俺は逃げるぞ!? 冥土のエリゼがいないから平気だと思ったのに!」


「お、俺も! まだ死にたくねえよ!」


 一部の兵士達が帝都方面に逃げだしていく。

 おそらく俺が後ろから攻めた時に、何人か指揮官クラスを殺していたのだろう。

 逃げ出す者を止める奴が少ない様子だ。


「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1……0」


 よし、どの程度残った?

 大体千人くらいか……それなら問題ない。


「では……参る!」


 馬を走らせながら、二つの剣を構える。


「向かい撃て! 相手はたった一人だぞ!」


「まずは魔法を放て!」


「遅い! 魔刃剣乱舞!」


 まずは斬撃を飛ばし、魔法使い共を一掃する。


「グハッ!」


「や、やめ——ギヤァァァァ!?」


 「よし、これでいい」


 魔法使いは痛みに弱いので、腕の一本や二本飛ばせば戦闘不能に出来る。

 後は敵の真っ只中に突撃し、縦横無尽に剣を振るうだけだ。

 乱戦に持ち込めば、こっちのものだ。


「もう、やめっ」


「し、死にたく……」


「いやだ!」


「俺は逃げてもいいと言ったはずだ! 戦場に残ったらなら覚悟を決めろ!」


 そして時折、指揮官クラスが槍や剣を向けてくるが……。


「隙あり!」


「隙などない」


 相手の馬ごと、兵士を一刀両断する。

 その隙を突いて、騎馬が後ろに迫る。


「よし今だ!」


 どうやら、背中から槍で突くようだが……甘い。

 俺は、魔力を背中に集める。


った……何故だ……? 何故槍が刺さらない!?」


「貴様ごときの突きで、俺の魔力の壁が壊せるわけがなかろうが!」


 振り向きざまに剣を振るい、敵の首を切断する。

 驚愕の表情のまま首が落ち、遅れて身体が地面に伏す。


「将軍がやられたぞ!」


「に、逃げろ!」


「もうだめだ!」


 今のが将軍か……アレぐらいなら、俺の部下の方が強いぞ。

 さて、ほとんど始末したか……さすがに、少し疲れた。

 すると、カグヤ達が駆けよってくる。


「クロウ無事〜!? 怪我はない〜!?」


「ああ、問題ない。少し疲れただけだ」


「なんと、あの小僧だったクロウが……噂には聞いておったが」


「ヨゼフ様、お久しぶりでございます」


「お父様! クロウが命がけで助けてくれたのよ!」


「そうか……クロウ、感謝する……我が娘を助けてくれたのか」


 ヨゼフ様が、俺に頭を下げてくる。

 相変わらず、律儀な方だなと思う。

 俺はこの方に大恩があり、そんなことはしなくても良いのに。


「何をおっしゃるのですか。あなた方がいなければ、俺はとうに死んでいました。感謝するのは俺の方です」


「……立派になりおって、亡き祖父に似てきたのう」


「クロウ、本当にありがとうね!」


 2人の笑顔を見て、俺は思う。


 ひとまずは、ここまで来られた。


 だが、ここからが問題になるだろうと。

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