第4話 蹂躙

 俺は馬に跨りながら、背中から二本の剣を抜く。

 片方はアロンダイトといい、特殊な鉱石で出来た幅のある大剣で、斬れ味はないが折れず錆びずという一振りだ。

 もう片方をアスカロンといい、クレイモアタイプの剣で斬れ味抜群の一振りだ。

 両方とも、ムーンライト辺境伯から頂いたものだ。

 これがあったから、俺は戦場で生き抜いてこられた……本当に、感謝しかない。

 そして、この剣でカグヤを助けてみせる。


「おい!? 貴様、何をしている!?」


「剣をしまえ!」


「邪魔だっ!」


 俺は二つの剣で、それぞれの首を落とす。

 首から血が噴き出し、相手が倒れる。

その音に反応し、兵士達が異変に気付く。


「おい!? 何を……兵を集めろ! 反逆者だ!」


「こっちだ!」


 天幕から、ぞろぞろと兵士達が出てくる。

 だが、こいつらは俺らを使い捨てにしてきた高位貴族達だ。

 遠慮なく殺せる……もう、我慢する必要はない。


「良いだろう、血祭りにしてくれる」


 俺は二本の剣で、兵士達を蹂躙していく。

ある者は腕を斬られ落馬し、ある者は頭を斬られ絶命する。


「や、やめ——ギァァァ!?」


「お、俺は伯爵子息だぞ!? だから、や、やめてくれ——ゴフッ」


「こいつ白き虎!? 待て! 俺は降参する! だか——グフッ」


「知らん。貴様らは兵士達の頼みを聞いたことがあるか? 家族に会いたいという些細な願いを断り、怪我をした兵士の治療を断り……更に、もう戦いたくないという兵士を斬り殺す。そんな奴らが……救いを求めるんじゃない!」


 俺の喝に歩兵達が動揺する中、フードを着た連中がやってくる。

 後衛であり、俺たち味方を敵ごと焼き払うクソッタレな魔法部隊だ。

それに調子づいたのか、兵士達が騒ぎ出す。


「魔法部隊が来たぞ! やってしまえ!」


「ファイアーボール!」


「ウインドカッター!」


「ロックキャノン!」


 火の玉と、風の刃、岩の塊が同時に飛んでくる。

 それに対して避けもせずに、俺は魔力を体内で溜めて放出する。


「ハッ!」


 それにより、魔法は俺に当たる前に破壊される。

 俺には魔法を使う才能はないが、魔力だけは多いのでこういう特殊なことができる。


「なに!? 魔法を消し飛ばすほどの魔力放出!?」


「こ、こいつ魔法殺しのクロウです!」


「その二つ名持ち……白き虎か!」


 こいつらは前線のことなど気にかけない。

 だから、俺の顔もよく知らないのだろう。

 そんな中、指揮官らしき男が指示を出す。


「遠距離から仕留めろ! 弓部隊と魔法部隊で攻めろ! あいつとて、魔力は無限ではない!」


「良い判断と言いたいところだが——魔刃剣!」


 魔力の斬撃が飛び、後衛部隊を切り裂いていく。

ひ弱である奴らは、手足が千切れる感覚に耐えられまい。


「ァァァァァ!?」


「ガァ!?」


「悪く思うなよ——俺の前に出た不幸を呪え」


 俺は激情に身を任せ、兵士共を蹂躙する。

 すでに殺した数はわからないが、俺の全身は血まみれになっていた。

 本来なら、このまま駆け抜けるべきだが……そのままとある場所に進んでいく。


 「どうしても、許せない奴がいる」


 どうせ、奴は一番奥にいるのだろう。


 どっちにしろ王都への通り道だ……アークライト辺境伯、覚悟するがいい。

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