第8話 人、それを同じ穴の狢と言う
距離が近くなったのか遠くなったのか分からない自己紹介タイムを終え、ついに新たな高校生活が始まった。
と言っても、今日は入学式兼始業式である。サイコ女子西森曰く見守るだけの担任がやってきて、学校生活における注意事項を事務的に伝えた後、時間になったら体育館に移動。
で、式典を終えたら教室に戻ってLHR。交流を深めるための座談会が開催されることに。……なお、担任は宣言するだけして不干渉の構え。自分の机で何か作業を始めやがった。
「本当に添え物ポジじゃねぇか……」
「先生がですかな? また随分な評価でござるが」
「いや、教室来る前に知り合った女子が言っててさ。特別クラスの担任、責任問題になるのを避けるから、トラブルが起きない限り基本は不干渉だよって」
「あー。確かにやる気はなさそうではござるなー」
「まあ、ボクらって客観的に見て面倒くさいしねぇ」
「なんなら人間性も面倒な奴ばっかですしね」
「あはは。何でボクを見るのかな豊久君」
「手鏡とか持ってます?」
「ここで退かずに攻める点は評価してあげるよ。それはそれとして殴るけど」
「どうして……」
笑顔で肩パンされてしまった。……待って思ってた以上に痛いんだけど!? テレフォンパンチのはずなのに芯に響く!
え、マジで何で? 俺たち肉体的には非力な女子だよ? こっちの防御力が下がってることを加味しても、ちょっと信じられない威力してるんですけど。
「あの、もしかして格闘技とかやってました?」
「いやー、格闘技はやってないよ? 格闘技はね?」
「凄い含みのある言い方してる……」
もう怖いわこの人。さっきの言動といい、もう既にこのクラスのヒエラルキーの頂点に立ってそう。
「それはそうと、座談会だけどどうする? 適当に雑談でもして時間潰す?」
「あの、い、一応授業ですし。真面目にやった方が良いんじゃ……?」
「凛太郎。細かいことは気にしない。先生が何も言ってこない時点で、自由時間と変わらない」
「そこでおもむろにスマホを取り出すのはどうかと思うよ、刹那君……」
「この学校、校則だとスマホどうだったっけ?」
「授業中でないなら使ってオーケーでござるな」
「はい刹那スマホ没収〜」
「そんなー」
当たり前だろこのクソロリ。なに初日から堂々と校則違反しようとしてんだ。ほぼ自由時間とは言え、一応授業中だからな?
「HR終わったら返すから、それまで我慢しなさい」
「稲葉さん、意外と真面目……」
「何で『意外と』なんて付けた?」
不真面目判定されるような言動とかしてないんだが? よしんばしてたとしても、お前にだけは言われたくないんだが?
「それはそうと、大沢コラ。お前もボケッとしてないでこっちくる。一匹狼気取ってないでまーざーれー」
「……んだよ。偉そうにしやがって」
「変態ロリけしかけられたいの?」
「……クソが」
「俺の扱い」
「残当」
むしろ、このクラスから叩き出されてないことを感謝した方が良い。なんなら、そのまま豚箱にまで放り込まれてもおかしくないし。
「……で、よ。何を話す? お題とかある人いるー?」
「性転換する前のこととか?」
「それワンチャン地雷だったりするのではござらんか?」
「マイサンがいなくなってたことはトラウマ」
「刹那君。それは多分、皆同じ……」
「ボクはガッツポーズしたけど?」
「お前やっぱり元からカマだろ」
「はいライン越え。ぱーんち」
「いやふざけっ、ごふっ!?」
くの字に曲がったぞ今。軽いノリでエグい拳ぶち込まれてて可哀想。憐れ舎弟。……それはそうと生きてる? 明らかにあの細腕から出ちゃ駄目な威力出てそうだけど。
「……見事な体重移動でござるな。あの打ち方は内部に響くでござるよ」
「どうした急に。格闘漫画のキャラでも乗り移った?」
「……まあ、そんなもんでござるよ」
「今なんか間がありませんでした?」
俺もあったと思う。何で大道寺まで無駄に含み持たせた返答するん? あともしかしてなんだけど、このクラス俺の想像以上に武闘派だったりする?
「もう、大沢君! 今の時代、そういうこと言っちゃ駄目なんだゾ! 面倒くさい人たちにメッてされちゃうからね!」
「もうしてるでござるよ」
「あれは『メッ』じゃなくて『滅』では……?」
「面倒くさい人とか自己紹介かな?」
「あの、大沢君。大丈夫ですか……?」
「い、いつか泣かすこのカマ野郎……」
「人の話聞いてたか?」
「ごッ……!?」
また躊躇なくストンピング入れたなあの人。そんで大沢は大沢でよく逆らう気あんな。その反骨心だけは尊敬するわ。
「いっ、いちいち蹴り入れんな……! あとお前スカートだろうが……!」
「はん? なにお前。ボクのパンツが気になるの?」
「気になります」
「ちょっと変態ロリは黙ってようか。話がややこしくなるから」
既にややこしい定期。
「ばーか。男同士で見られたからなんだってんだ。動揺するとでも思ってんの?」
「ならっ、ちったぁ男らしくしろや……! テメェ本当に男か女どっちなんだよ!?」
「性別『飛鳥』だよ文句あっか」
「現実でその表現する人初めてみたでござる」
「てか、それ言うなら全員そうでは?」
「あとその分け方だと、飛鳥家の全員が特殊性別になりますよね?」
「み、皆さん、この短期間で馴染みすぎじゃないですか……?」
それは俺も思った。全員、いやアクの濃い面子が無駄に息合ってんだよな。コイツら実は古馴染みだったりしない?
それともアレかな? それぞれが変な方向に尖ってるから、パズルみたいに上手い具合に噛み合うのかな?
「まあ、変人同士惹かれ合うってやつでしょ。この面々がおかしいだけだよ。俺たちは俺たちで、ゆっくりこの面子に慣れていこ」
「……」
「なんで俺のこと無言で見てくるの?」
「な、何でもないです……」
目逸らされた。ちょっとー? 日下部くーん? その反応はどういうことなのかなー?
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