こんな時でもおれたちは笑いたい・2


「雄大は何か覚えていることあるか?」


 うろ覚えだけど何となく覚えている事柄について発言した。


「確か…この世界の数字や漢字などの表記は、異世界者が分かるようにしてあると言ってた気がする……」


「うん、言ってたね」と小松。


「それも魔導具のおかげらしいよ。しばらく待つと、エドラド語表記が認識できる文字に変換されるみたい」



(小松は記憶力が良いな)



「わしらの年齢…あれは驚いたな……」


 そう呟いたのは、ディエゴだ。


 全員の脳裏に、リュドスから鏡を渡された場面が蘇る。自分の顔を見た瞬間、誰もが息を飲んだ。


 中には「だから何?」という感じで鏡を見つめている者も居はしたが……。その差は実年齢にあった。


「信じられるか? わしらはみんな20歳になったんだぞ……」


 ディエゴがそう言った。


 小松が続ける。


「エドラドの魔導具で、全員を20歳の肉体に変えたと言っていたね」


「ああ、強い兵士として活躍してくれそうだからって言ってたよな!」


 ライアンがテーブルを叩いた。


「戦争に行くために若返ってものぉ……」


 ディエゴが呟いたその一言が、全員の胸にのしかかった。


 その後しばらく沈黙が続いた。暗く重い雰囲気が、部屋に充満した。


 ライアンが「あーもう!」と立ち上がり、

テラス窓と、出窓を開けてまわった。


「誰かドアを開けてくれ!」


 小松が立ち上がり、出入口のドアを開けに行った。


 涼しい風が一気に入り込み、通り抜けていく。


「辛気臭せえから、風通しよくしてやったぜ!」


 彼はドヤ顔で、みんなにグッドサインを見せた。


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