こんな時でもおれたちは笑いたい・3
改めて4人が中央のテーブルを囲んで座った。
「なあ、雄大はモノマネ芸人なんだろ? 今気分を変えたいから、誰かのモノマネを見せてくれよ」
とライアンが、雄大にお願いしてきた。
「え! 嫌だよ。プロにあんまり軽々しくそういうことを頼むなよ」
雄大は、少しイラっとしながら返した。
「何で? 別に良いじゃないか。だったらこれでどうだ」
ライアンは立ち上がり、その場でシャドーボクシングを見せた。彼は真剣な眼差しで「シュッ、シュッ」と言いながら、連続で拳を打ち抜いていく。
(そこそこ本気のやつじゃないか……)
雄大は、ちょっと引いた。
小松はそれを見て「おお!」と声を上げ、ディエゴはパチパチと小さく拍手をした。
「どうだ? 元プロではあるが、オレもボクシングの腕前を見せたぞ。これで雄大もプロのモノマネを見せてくれるんだろ?」
ライアンが、雄大に詰め寄る。
「そういうことじゃないんだよな…」
雄大は呟いた。
「でも、僕も久しぶりに観たいですよ。雄大さんのモノマネを」
小松は、雄大を見ながら目をキラキラさせている。
「まぁ、わしも興味はある……」
さらにはディエゴまでもが、雄大に詰め寄ってきた。
「ああ…もー、仕方ないな〜」
雄大は、とうとうみんなに押し切られ、モノマネを披露する羽目になってしまった。
雄大は、誰のモノマネをやるか迷った。
(ここに居る全員が分かる人物と言えば……)
彼はそう考え、ケイギのモノマネをやった。
「皆さんおはようございま(す)。昨日はよく眠れましたか。今日は皆さんに通信魔導具を配りま(す)。こちらの通信魔導具は皆さんが元居た世界にメッセージを届けることができま(す)」
ケイギは、ですますで終わるときの語尾に少し癖がある。それを雄大は誇張してやってみた。
3人が一斉にドッと笑った。
「似すぎだろ!」
ライアンは床を叩いて笑った。
「さ、さすが堂本雄大ですよ!」
と、小松が大笑いしている。
ディエゴは「ズッフッフ」と独特な笑い方で笑っている。
(ヤバい…ディエゴのモノマネもしてみたい!)
雄大のモノマネ芸人の血が騒いだ。
(しかし…まさか異世界に来てモノマネを披露することになるとは…でも、やっぱりウケるのは気持ち良いな)
雄大も気がつけば楽しい気持ちになり、みんなと一緒になって笑っていた。
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