第2話 開戦 魔女サラの不気味な笑顔
ロンはまず地面に手をあてて目を閉じた。
(こっちが…揺らいでいるな?新しいトラップでもできたか?)
どうやら噂になっている東方の妙な呼吸法でトラップの位置を探っているようだった。
ロンは立ち上がり一直線に走っていく。
あるところで急に立ち止まり、また地面に手をあてた。
(ここはだいぶ新しいな?数十分…いやさっきできたもの?まだ揺らぎが残ってる。逃がさないぞ)
ロンはまた立ち上がり一気に走り出し街を出た。
森の中を猛スピードで駆けるロン。
一気に木を駆け上がり、まるでヤマネコのような身のこなしで木の枝を足場にジャンプし、腕を伸ばした。
そこには空中でのんびりとホウキにまたがって飛んでいるいかにも魔女の恰好をした女性がいた。
ロンは魔女のホウキを掴み、地上にぶん投げた。
「うわ!?ちょっと!!うわぁぁ!!!」
魔女はホウキと一緒に地上に落下していく。
地面に打ちる寸前になにか魔法を使い、ふわっとゆっくり着地して見せた。
ロンは魔女とは対照的に、ダン!という力強い音とともにまるで隕石のように着地してきた。
地面が少し凹んでいる。
魔女はそんなロンにドン引きしていたが、落とされたことを思い出し、わかりやすくプンスカ怒っていた。
「こらこら!危ないだろ!」
「あんたが魔女のサラか?」
「そうだけど!急に何するんだ!私が君になにかしたか?」
「すまん。俺はされてはない。だがあんたに困ってる人がいるそうだ。懸賞金もかかってる。悪いがギルドに連行させてもらうぞ」
「私に懸賞金?あぁ、トラップのことかな?でも迷惑料は払ってるつもりだし…見逃して?これあげるからさ!ね?」
魔女のサラはどこに隠していたのか、胸の谷間からポーションの瓶を取り出しウインクしてきた。
そんなサラにおかまいなく、ロンは右手の親指を立てた。
その瞬間サラが持っていたポーションの瓶が割れる。
「うわ…すごいね君。あんなスピードで小石飛ばす人初めて見たよ」
「手荒な真似はしたくない。大人しく捕まってくれ」
「ふぅぅ‥‥ふざけてる場合じゃないみたいだね」
さっきまでお茶らけていたサラの表情が一気に真剣になる。
持っている割れた瓶とホウキをマジックバックに入れてゆっくりと手を下した。
ロンは上体を低くし、右手を大きく突き出して独特な構えを取った。
一瞬の静寂…先にサラが動いた。
サラはロンから逃げるようにビュン!と真上に風に乗って飛ぶ。
ロンは上空に飛んだサラを追わずに何故か真横に駆ける。
二人は開けた河原でまた相まみえた。
「逃げられると思ったか?」
「ちがうよ、森を傷付けたくないからね。私の魔法で…いくよ!」
サラはニヤッと笑った後、手を前に出してロンに向けて何か放った。
ロンは手を縦に振り下し、その何かを斬る…ロンが立っている両脇の地面が大きくえぐれている。
「割と本気で打ったんだけど…いまなにしたの?魔法じゃないみたいだし」
「知る必要はない!」
ロンは一気に距離を詰めサラに襲い掛かる。
サラは自分の周りに球状の結界を張りロンの掌底を受けようとした…が、受けきれない。
結界が割れ、サラの横っ腹をロンの手のひらがかすった。
「くぅ!!」
サラがビュン!と風に乗ってロンと距離を取る。
風魔法でいなそうとしたがロンの攻撃を躱しきれなかったようだ。
サラはロンに触れられたところを不思議そうな顔でさすっている。
見た目には外傷はないが効いているようだ。
「くっ!なんだいこれ…体に響いてるんだけど」
ロンはサラには応じず再び構えなおす。
(浅かったか。次は外さない)
ロンが殴りかかり、サラが風魔法でいなしつつ反撃の魔法を放つ…そんな激しい攻防が何度も続く。
しかしサラの魔法はなぜかロンの謎の手刀で斬り払いされて無効化されてしまう。
風、氷、火、雷…どんな属性を放っても結果は同じだった。
あんなに動いているのに息一つ乱さないロンに対し、サラは何度かロンの攻撃を食らったうえ、魔法をバンバン放っているせいもあり明らかに疲弊していた。
「はぁ…はぁ…君さぁ、ヤバ過ぎない?本当に人間?」
「もう勝負はついてる。さっさと捕まってくれ」
「そうもいかないんだよ…ね!」
サラは残った魔力を振り絞り、ロンの逆方向に飛ぼうとする。
しかしロンはそれを逃さない。
一瞬でサラに追いつき、サラの手を取って後ろ手に拘束した。
「ぐぅぅ!!!」
「もう追いかけっこはなしだ」
そして持っているマジックバックからバングルを取り出し、サラの両手、両足に装着した。
サラは観念したかのようにその場に座り込み俯いている。
「はぁ…はぁ…完敗だよ…君さぁ、名前は?」
「ロンだ」
「ふぅぅ…ロンね?」
サラはロンに顔を向けニヤリと意味ありげに笑った。
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