第7話

 精霊のお姫様がこの学園に来てから早数週間が経った。

気品溢れつつも人当たりの良さからルインは色々な人達と仲良くなっていた。


「お姫様相変わらず人気だね」


 シモンは相変わらずの爽やか笑顔で寄ってくる。此奴も人気なくせに…と、妬みながら、そうだなと答える。


「でもルインさんな~んか元気ないよねぇ~」


「それは僕も思ったよ。ルインさんまだ戦った時の方が活き活きしてたね」


 ノンデリ代表とも呼べるフィリーですらそう思うならそうなのだろう。事実彼女は来た時から日に日に疲れているというか窶れているというか…正に憔悴していっている感じだ。あの時から違和感があったが今は確信と言える。何か彼女にはあるのだろう、それがどういったものかはわからないが。



                 *



 そう思っていた次の日。昼休み少し眠かった俺はお昼寝日和だったのもあって外で気分よく昼寝した。チャイムと同時に起きたので急いで教室に戻っていると目の前からルインが歩いて来る。


「お。お姫さま、どうしたんだ?もう授業始まるぞ」


 そういって通り過ぎようとした瞬間、彼女が前屈みになる。

瞬時に気付いた俺は彼女の前に腕を出し倒れこむのを阻止する。


「ハァ…ハァ…」


「おい、大丈夫か?…これは魔力の乱れか」


 彼女はちょっと色っぽくなっているが少し苦しそうだった。彼女は連日の憔悴のシワ寄せが今来たらしい。魔力の乱れが起きていた。

 魔力の乱れとは所謂精神等からくるもので、例えば何徹もしてふらついてますとか、とても悲しいことがあって精神的に参ってるとかそういう精神的な要因から魔力が乱れ体調が悪くなる現象だ。とてもひどい症状でもないので休めば直るはずだが…


「とりあええず医療室に向かうか」


 彼女を安静に休ませるべく、ついでに俺もお姫様を口実にサボるべく医療室へと向かう。幸い距離もそんなに遠くないのでさっさと運んであげよう。



 ―――結論からいうとやはり魔力の乱れだった。安静にしていれば治ると医療の先生は言って自分の仕事へ戻っていった。俺はさり気無く彼女の看病を口実にサボることに成功した訳だが。


「…眠くなってきたな。こういう医療室とかみたいなところは何故眠くなるのだろうか。何かの魔力があるのだろうか」


 そう思いうつらうつらしていると彼女が少し魘されていることに気付く。


「うっ…お父様…姉さま…どうして…」


 彼女は泣いていた。まるで何かを失い、それにどうすることもできない自分に悔やんでいるというか、後悔や悲しみの感情を感じる。

 ルインを見て俺はペイルーの事を思い出す。後悔や悲しみを持ちながら自分ではどうしようもない歯痒さと悔しさ、強気には見せているけど実は繊細なところとか、とても似ていた。そして同時に思ってしまったのだ、助けてあげたいと。

 俺の今世は世界のいろんなところを見て周り、平和を享受しのんびり過ごして死に逝くつもりだった。俺の本能が助けるべきだと告げる。それと同時にこの手を取れば俺の平和を享受するという目標が遠のくような気がした。だから俺は…


「まぁ精霊ならお前との縁もあるかもしれないしな、そうだろ?ペイルー」


 彼女の手を握る。仲間を、友を思い出してその面影を感じた俺は、救うべきと思ったのだ。

 彼女は少し気が楽になったのか規則正しい寝息になっていた。

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