第2話

 休日は実に有意義な時間を過ごし編入生が来るという週になった。

話は広まっており俺の学年である一学年に留まらず上級生にも噂が広まっているらしい。こういう噂話はどこの世界も好きなもんだな、と思いながら定位置である窓際の席に着く。授業が始まるまで時間があるので本でも読もうかと思っていると、


「やあ、おはようヨハネ。聞いたかい?どうやら噂の編入生はお姫様らしいよ!」


「おはようシモン。あぁ、教室に入るまでに色んな所から聞こえてきてたよ」


「学園で話題になっているもんね。おはよう、二人とも!」


 挨拶を交わし、いつメンの二人が俺の後ろに座ると話題の編入生の話をしてくる。


「でもどうやらそれだけじゃないらしくてね?精霊種らしいんだよ、それもハーフ」


「ハーフだって?」


「ハーフ?ってことは異種族との間に産まれたんだ。凄い!」


「だろう?どの種族でもハーフは産まれづらいからね。それにどうやら先祖返りしているらしくてとんでもない強さなんだとか。実技試験担当した先生が興奮気味に喋ってたよ」


 守秘義務とかないのかこの学園は。と思いつつ、先ほどの話を考える。

そもそもハーフというのはあまり生まれない。当たり前の話に聞こえるが物語などでは割と見るもんだから言うてそこまでと思うもんだが、この世界では本当に希少だ。

 だが精霊種のハーフだと?異種族との間に産まれるハーフは大抵途轍もない力を持つことが多い。そのお姫様の場合は先祖返りという形で現れたのだろうがそもそもの話、精霊は交わったりしない筈だ。

 精霊は死後、生命力が霧散し新たな精霊が産まれる。転生とは少し違うが概ね同じようなことが起きるのだ。新たな精霊が産まれる時に複数産まれたり、逆に産まれず世界に漂う魔力や生命力に還る者もいる。なので種の存続の為に交わりはしないのだ。だからこそハーフはありえないと言っていい筈なのだが、どういうことだ?


「はーい皆さん席について下さい。皆さん知ってるかと思いますが本日から編入生が来ますよー」


 うちの担任であるメェイ先生がそう言うと女の子が一人入ってくる。

なんというか妖艶というか、蝶のように育てられたのかという具合な儚さを感じさせる雰囲気に綺麗な紫のさらさらロングで生徒は全員魅入られているようだ。


「皆さん初めまして。マティア精霊聖界第二王精ルイン・マティアです。これから宜しくお願い致します」


 深々と頭を下げ、頭をあげ微笑むとクラスは爆発する


「「「うおおおおおおおおおおおおおおお」」」

「「「きゃああああああああああああああ」」」


 まさに阿鼻叫喚の嵐。まぁこうなるのもわかるのだが。

それよりもマティアか。強いというのは一目でわかるが懐かしい感じもする。

これはそういうことと考えるべきか…。それに確かにハーフ特有の魔力の感じがする。一体なにがあって精霊にハーフなんかが?

 クラスメイト殆どが騒いでる中俺はそんなことを考えていた。


「皆さん落ち着いてー。仲良くすることはいいことですが進まないので後にしましょうねー」


 メェイ先生がそういうと皆渋々席に着く。こいつら基本優秀だからそういうところちゃんとしてるよな…。それともメェイ先生の人望か。


「実習試験を見ていましたが本当に凄くてですね、皆さんも是非仲良くなって色んなことを学びあってくださいね!さて席は…あそこがあいてますね!」


 そう言って俺の横を指さす。反対側もあいてるだろと思いながらそうも言えないので泣く泣く受け入れる。…近くに来ると尚更感じるな、が。


「隣失礼しますね。えっと…」


「あ、あぁ。ヨハネだ、よろしくな」


 そういうとルインは笑顔で横に座る。奴は男だったし雰囲気も違うが懐かしさはしっかりと感じる。お陰で少し虚を突かれた。


 ―――そうして編入生というイベントを迎えたこの日も既に終わろうとしていた。

昼休みなんかはかなりやばかった…。お陰で俺は教室から出ていく羽目になった。

放課後になったので俺は、気になることも出来たし早く帰ろうと席を立つと


「待ちなよヨハネ。どうせ放課後暇でしょ?隣なんだから学園案内してあげたら?」


「そうだよ、してあげなよ~。好感度アップのチャンスだよ~?」


「ニヤニヤするな、こういうのは言い出しっぺがやるべきだろ。何故俺に託す」


「ルインさん。ヨハネがどうやら学園案内してくれるらしいんですけどまだ学園の場所とか覚えてないですよね?」


「あっおい!」


 したり顔をしたシモンはこちらにウインクを送ってくる。

大変余計なお世話だし面倒だしで困るのだが、大丈夫だ断るはずだと思っていると


「本当ですか?まだ来たばかりでしっかりと学園を見てなくて…もしよろしければお願いします」


「まじかよ」


 ルインは軽く会釈してお願いしてくる。俺は口をひくつかせながらどこか懐かしい友人の面影があるような少女を見つめるのだった。

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