死滅精霊聖界 ペイルー編

第1話

 1000年以上前、全ての種族を巻き込んだ戦争があった。

大災害、最悪の戦争、終末…人々は様々に呼んだそれは『黙示録アポカリプス』と歴史に刻まれる事となる。


私利私欲、魑魅魍魎が跋扈しこの世の終わりが近づく中『魔神』が出現した。

魔神は配下と共にとてつもない力を示し全世界の敵となった。


しかし世界は結託し魔神は『勇者』に打たれた。

そして戦争は終わり世界に平和が訪れ、実に1000年が経とうとしていた―――





―――キーンコーンカーンコーン

終業のチャイムがなる。ようやく終わったか…と、思いながら帰り支度をしている俺の元に男女が寄ってくる。


「ヨハネ、もう帰るのかい?」


「ヨッチーもう帰るの~?」


「なんだお前らか。…学園にいてもやることないしな、そりゃさっさと帰るさ」


 爽やかな見た目してるこの男はシモン・アンドレー、そしてこの元気な見た目してるこの娘はフィリー・フレープ、二人とも学園では数少ない友人である。


「君は相変わらずだねぇ、僕たちみたいに恋人作れとまでは言わないけどもっと青春したら?日々つまらなそうというか…黄昏ているというか」


「ヨッチーなんか寂しそうだよね~」


「お前らな、結構ひどいこと言ってる自覚あるか?俺泣くぞ」


 こいつら二人はほぼ毎日これでもかと恋仲を見せつけてきやがる。

俺だって作りたくなくて作ってないわけじゃねぇ!と声を大にして言いたいのだが、自分から作ろうと思って行動したことは無いので俺は小声にとどめている。

 それに俺は黄昏ているのではなく平和を味わっているのだ。


「まったく…ほぼ毎日お前らのラブラブを見せられている俺の身にもなれっていうんだ。それに俺は趣味もあるしそこそこ青春してるっての」


「確かに君は趣味の魔法があったね。僕は剣の方が好みだから気持ちはわかるよ」


「あたしは剣も魔法も正直自信ないからなぁ…でも身体を動かすのは好きかな!」


「君はビックリするほど多彩な魔法が使えるからね。成績と比例してないのが気になるけど」


 そりゃ実力出してませんからね。とはいえないので苦笑いをしておく。

俺の実力を発揮しようものなら普通に学園が壊滅するし面倒だしでいいことないので平均前後を保っている。

魔法は昔から好きなので日々新しい魔法を考えたりしているのは確かなのだが、そもそも昔の魔法と今の魔法が色々と違うから尚更なのだ。


「いいだろ別に。どうせ俺は使える魔法の種類が多いだけの平凡男ですよ」


「あ~拗ねちゃった。シモン言いすぎだよ」


「いや、そこまで言ったつもりはなかったんだけど…ごめん」


「別に拗ねてはないんだがな…まぁいいや俺は帰るわ。どうせ放課後イチャイチャデートでもするんだろうからな、邪魔者はクールに去るぜ」


「もう、変にカッコつけちゃって!」


「ふふ、まぁ君がそうやって気にかけてくれるのは嬉しいけどね。そういえば来週編入生が来るって言う話聞いたかい?」


「編入生?そりゃまた唐突な…夏の大型連休後とはいえもう明けてから一週間だぞ」


「それがこっちに来るのに何かしらのトラブルがあったらしくてね、二週間遅れでこの学園に編入して来るって話さ」


 編入生か…。この学園は亜人族の中でもかなり大きい学園だ。少なくとも人族最大の学園であるこのクライ総合魔法学園は魔法を軸とした学園だ。

誰でも入学できるが、入るのは結構厳しめな入学試験を突破しないといけない。

そんな厳しめな入学試験だが、途中編入となれば更に厳しいものとなっている筈。

それを合格したとなればかなり優秀な生徒なのだろう。


「まぁなら俺関係ないか」


「おいおい…でも確かに君が考えているであろう通り優秀な生徒だと思うよ。僕たちには無縁の存在かもね、はは!」


「さらっと心を読むな。それにお前ら二人はむしろ突出している方だろ」


「そうかい?君にそう言ってもらえると嬉しいな」


「魔法とか剣はうまく扱えないけど拳には自信あるかな!」


 こいつらは確かに総合的に見れば平均なのだろうが、突出しているところがある分優秀だろう。俺は平々凡々なので全てが普通前後なのだが(本当はそんなことは無い)こいつらは妙に勘付いているのか俺は強いと思っている節がある。困る。


「まぁその辺の話はまた明日な。じゃあな二人とも」


 このままでは何時まで経っても帰れないので、後ろで何か言ってる二人を背に教室からさっさと出る。

俺は寮に帰ってのんびり魔法研究するんだ。と考えながら少し早歩きで帰路につく。


あれから約1000年経って転生した俺、ヨハネ・アルケーは今こうやって平和を享受していた。

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