第2話 泣いた赤鬼の話
『泣いた赤鬼』の話を知っていますか?
人間と友達になりたい赤鬼が、青鬼に相談したところ、
青鬼は、
「俺が、わざと悪役になるから、お前が俺をやっつけて人間を守れ。そうすればお前は人気者になる」
そのアドバイス通り行動した赤鬼は、人間と仲良くなることに成功しました。
けれども、青鬼は置手紙をしてどこかに消えてしまします。
「俺と仲良くしているところを人間に見られたら、ひと芝居うったのがバレてしまうだろ。
だから、俺はここを去る」
その手紙を読んで、赤鬼は泣きました。
そんな話です。
前置きが長くなりました。
幼稚園で初めてこの紙芝居を見た時、私は悲しくて泣きました。
こんな悲しいことってあるか!
青鬼の自己犠牲はちっとも美しい話じゃないぞ。
赤鬼の立場に自己投影して、ひどく泣いていたのを覚えています。
そのあと、先生はいいました。
「今のお話を聞いて、印象にのこったところを絵に描いてみましょう」
机に画用紙とクレヨンが配られました。
絵を描くのは得意な方だったので、さっそくクレヨンを取りました。
その時の私は赤鬼に自分を重ねすぎていて、手にしたクレヨンの色が肌色であることに何も疑問も持たずに絵を描き始めました。
もちろん、絵の主人公は泣いた赤鬼です。
画用紙の中央に大きく描き始め、虎のパンツまで上手に描きました。
すると、隣に座っていた子が言いました。
「きゃー!裸を描いてる。パンツいっちょの裸の絵!〇〇ちゃん、いやらしい!」
他の園児も何、何?と私の周りに集まってきました。
「本当だ。裸の絵だ! 先生、○○ちゃんがいやらしい絵を描いてます!」
私は、泣いた赤鬼を肌色のクレヨンで描いていたのです。
みんなに言われて、はじめてその失敗に気が付きました。
(そうか、赤鬼だから赤のクレヨンを使わないといけなかったんだ。
なるほど、これはどう見ても虎のパンツをはいた人間だわ。)
幼稚園児が何をもっていやらしさを判断したのかわかりませんが、
あまりにもみんなにいやらしいと言われると、そう見えてくるから不思議です。
先生が絵を見に来た時、私は画用紙の上にうつぶせになって隠しました。
今、思うと隠す必要なんか全然なかったのにね。
泣いた赤鬼の話を聞くと、今でもこの光景を思い出します。
赤鬼は赤いクレヨンで描きましょうという話でした。
小さなカトリック幼稚園で 白神ブナ @nekomannma07
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