しんしょく
汚い者は綺麗な者を妬む
綺麗な者を汚い者を羨む
妹が妬むのは当然
あたしがいないと、存在できないのだから
あたしが羨むのも当然
美しさが欠ける恐怖を、妹は知らなくてよいのだから
波は引いてこそ、大きなエネルギーとなって砂浜を打ち砕く
長い時間をかければ固い岩すら削っていく
妹も同じようであった
静かな劣等感で胸がいっぱいになったのだろう
引くだけ引いて
後は怒涛の如く、悪意をあたしにぶつけこんできたのだ
朝起きると、わたしの手の甲には数センチの傷がついていた
赤い血も流れていたのか、どす黒い色が固まっている
不思議と痛みはなかった
痺れるような、痒いような感覚
あたしの一片を汚したのは、どこから持ってきたのかもわからないガラス片。
それを握りしめて泣いている汚い女
あたしは全てを理解した
美しいものは、結局は汚されるのだと
それも、汚い者によってだ
あたしは妹の髪を掴み上げ、汚れしまった手で殴った
美の処女を喪失したあたしには、怖いものがなくなった
海に伏してやろう、と思った
繰り返す波の中で、汚い者は洗われて浄化されるといい
あたしは自分のクローゼットから真っ黒なワンピ―スを取り出す
それを妹に渡す
「これを着なさい」
葬儀をしてあげようと思った
あたしがひかりを失った弔いだ
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