なみしぶき

 人間というのは何かに美をみつけ、それを傷つけたくなるもの

 

 幼い頃の積木遊びで姉が塔を作るたびに壊す

 人形遊びをしている姉の笑顔を壊したくて、人形の頭を引きぬく


 別に悲しませたいわけではなくて

 ただ、一点の曇りなき姉の笑顔に潜む綻びを導き出したい

 そんな気持ちだけで、わたしは姉の完璧さを崩そうとする


 それがわたしに与えられた仕事であるのだから


 幼い頃のキャッチボールで姉の顔をめがけて投げる

 姉が怖がる表情だけが、この世で表現できる真実


 世界が姉に完璧を与える度に、わたしはそこに穴を開けていく

 

 幼い頃から理解していた

 神が「答え」を教えてくれたのだ

 

 この世の美は、わたしが決めるということを

 そのために、姉は美しくなければならないことを

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る