海に伏せる

犀川 よう

さざなみ

 姉はわたしを海に押し倒すとき、とても素敵な笑顔になる

 わたしは海水に浸りながら、そんな姉の表情を見て安堵する


 わたしはできるだけ黒い服を着せられ葬られる

 さざなみの音だけが葬儀を本物リアルにして死人を労わる


 姉の手の傷が薄っすらと見える

 どんなに化粧で隠しても、傷は消せない

 わずかな傷であるからこそ、姉は怒り、わたしは嬉しくなる


 わたしは死んでいる

 さざなみの音だけが葬儀を本物リアルにして死人を労わる

 

 姉はどうやって死ねばいいのだろうか

 いつか、聞いてみたいものだ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る