第15話 ククルカン(2)

 ククルカンがマジックポーチから武器を取り出す。

 どうやら、ククルカンが使用する武器は大剣のようだ。


「いくぞォォォ」


 という掛け声とともにククルカンが俺に斬りかかる――が、俺はこれを難なく受け流す。

 やっぱ大剣の一撃は重いなぁ。まともに食らったら致命傷になりそうだ……。


「挨拶代わりの一撃だったとはいえ難なく受け流すたァ、思った通りつえェな。オレ様の目に狂いは無かったようだ、安心したぜ。ここからは全力で行くからよォ、ユリウス死ぬなよッ!」


 いよいよ全力で来るらしい!

 さぁ、こっからが本番だ。


「ウッシャー、オラオラオラオラァァァ」


 ククルカンが雄叫びとともに間髪入れず、十連撃を繰り出す。

 俺がこの連撃をさばいていると、ククルカンが挑発をしてきた。


「どうしたユリウス、防戦一方じゃねェか? 受け流すだけじゃなく攻撃して来いよォォォ。つまんねェだろ」


 ククルカンの強さは大体分かった。

 確かに今まで出会った奴より、段違いに強い――が、これなら問題なく勝てそうだ。

 挑発されたことだし、攻撃に転じるとするか!


 ククルカンを蹴り飛ばし、距離を取る。


「お言葉に甘えて攻撃してやるよ。死ぬなよっ」

「ア゙ーハッハッハ。いいねェェェ、かかって来なッ!」


 俺は一気に間合いを詰め、ククルカンに斬りかかる――が、これを難なく受け流された。

 やっぱり余裕で捌くか! さすがはこの国最強の冒険者。こうでなくては。

 俺は間髪入れずに十五連撃をし、そのうちの二撃がヒットする。


「へェ〜、やるねェ〜。かすり傷だが二発食らってしまったぜ。アーハッハッハ」


 ククルカンが楽しそうにしているから、俺まで楽しくなってきた。

 喜怒哀楽の感情は伝染するというが、まさにその現象だな。


 この後も、十分近く戦闘が続いた。

 ククルカンがどこまで本気だったのか分からないが、終始俺の優勢な展開だった。


 ここでククルカンが口を開く。


「いやぁ、想像以上だ! まさかここまで強いとは思わなかったぞ」

「どうもっ」

「だが、魔法はどうかな? 試させてもらうぜっ」

「魔法勝負をやりたいのか? なら止めといた方がいいぜ」


 俺が自信満々に言うと、ククルカンはビックリした様子で聞き返す。


「――ッ!? なぜ?」

「俺が使用する宇宙魔法にブラッ――」

「――宇宙魔法!? いま宇宙魔法……と言ったのか?」


 ククルカンが宇宙魔法という言葉に反応して、俺の話を遮り食い気味に質問してきた。


「ああそうだが……何か問題でもあるのか?」

「宇宙魔法は失われた魔法ロストマジックの一つだ。まさか使える奴がこの世に存在していたとは……。その様子だと知らなかったようだな」


 宇宙魔法が失われた魔法ロストマジックだと!!!

 よく考えると、ゲームでも特典で得ることしかできなかったレア魔法だから、この世界でもレア魔法ってことか。


「ああ、知らなかった。ついでに教えてくれ。さっき宇宙魔法は失われた魔法ロストマジックの一つと言ったな?」

「ああ」

「ということは、他にもあるってことだよな?」

「ああ、ある。宇宙魔法以外に【時間魔法】と【蘇生魔法】の使用者が見つかっていねェから、この二つも失われた魔法ロストマジックと言われてるな」


 失われた魔法ロストマジックとは言え、使用できる者がいる。まぁ、俺のことだが。

 つまり、時間魔法と蘇生魔法を使用できる者が発見されていないだけで、この世界のどこかにいる可能性がある。

 もしくは、今後生まれてくる可能性があるってことか。


「そういやァ、話を遮ってしまっていたな。何を言おうとしていた?」

「ああそうだったな。宇宙魔法に、ブラックホールという魔法がある。これはどんな魔法でも無効化する魔法だ。だから、魔法勝負では俺に勝てねぇと言おうとしていた」


 これを聞いたククルカンは、子供がおもちゃを買ってもらった時のようなワクワクした目で俺を見つめながら喋る。


「どんな魔法でも無効化? だとォ。そんなこと言われたら、試したくなるじゃねェかよォ」


 俺もブラックホールを使ってみたかったし、ちょうど良い機会だ。

 俺とククルカンは距離を取る。


「いいぜ、打って来いよ」

「じゃあ、遠慮なくいくぜ。炎龍のブレス」


 ククルカンが放った炎龍のブレスは、ルティと同じくらいのデカさだった!!!

 もしかして、ククルカンはルティと同じくらいの強さなのか?


「ブラックホール」


 突き出した左手からジャングルジムくらいの大きさの真っ黒な球体が出ると、俺目掛けて飛んで来る炎を吸い込み跡形もなく消した。


「ほォ、ならこれはどうだ。炎龍王のブレス」


 炎龍王のブレス!? 炎龍のブレスの上位魔法か!

 だから、炎が青白いのか!


 いかに強力な魔法だろうが、ブラックホールは全ての魔法を無効化できる。よって、炎龍王のブレスも例外なく吸い込み跡形もなく消えた。


 これを見たククルカンは嬉しそうな口調で喋り出す。


「アーハッハッハ。ホントに魔法を無効化できるとはなぁ、文句なしの合格だッ!」


 合格!? 何の?

 意味が分からない俺はキョトンとした顔でククルカンに質問する。


「合格とは何のことだ?」

「オレ様が探し求めている人材の基準に、ユリウスが達していたということだ」

「探し求めている人材!?」

「言葉通りの意味だ。オレ様の夢を叶えるために強い仲間を探している。戦闘の前に言ってたろ? 確かめたいことがあるってよっ」


 そう言えば、そんなこと言っていたな。

 確かめときたい事とは俺の実力だったのか!

 で、ククルカンが求めていた実力に達していたから合格ということか。


「そうだったな。確かめたいことってのは分かったが、夢ってのは何だ? もちろん教えてくれるんだろ?」

「あぁ。その前に確認させてくれ」

「確認? 何を?」

「ユリウス、お前の仲間もユリウスと同等の実力なのか?」


 ユニィとルティとは本気で戦ったことが無いからなぁ。強いのは強いだろうが、俺やククルカンくらいの強さがあるのかは分からん……。


 何て答えようか迷っていると、『もう終わったんすか?』とルティが叫びながら近づいて来た。

 俺とククルカンが戦うのを止めたから近づいて来たんだろう。

 それにしてもナイスタイミングだ! ルティたちに直接喋ってもらおう。


「ククルカンが、お前たちの強さが俺と同等なのか知りたいらしいから教えてやってくれ」

「オイたちがユリウス様と同等? そがん(そんな)訳なかでしょ。オイたちじゃ、ユリウス様に全く歯が立たんばい。ばってん、ククルカンよりは強かばい」


 これを聞いたククルカンは納得いかない表情をし、ルティに話しかける。


「ほぉ〜、オレ様より強いだとォォォ。言ってくれるじゃねェか」 

「ハッタリじゃなかってことば見してやっけん。ユリウス様、ブラックホールでオイの魔法ば吸い込んでください」


 そう言うと、ルティは俺と距離を取るため離れて行く。


「ユリウス様ぁ、準備はよかですかぁ?」

「ああ、いつでもいいぞ。ブラックホール」

「ククルカン、魚んごと目ば見開いて見とけよ。炎龍王のブレス」


 ルティが放った炎龍王のブレスは、ククルカンが放った炎龍王のブレスより二回りほど大きな炎だった!


 ブラックホールが炎龍王のブレスを吸い込み終わると、ククルカンが喋り出す。


「いやぁ、参った。オレ様の炎龍王のブレスを軽く上回るとはな。想像以上だ。ジズゥもルティと同等の力があるのか?」


 この質問にジズゥが答える。


「あまり言いたくないですが、私の方がルティより若干弱いです……」

「ジズゥもルティとほぼ同等の強さか! いいねェェェ」

「ねぇ、ウチにも聞かないのぉ?」


 何も質問されなかったユニィがしびれを切らし、ククルカンに詰め寄った。


「何となくだが、ユニィは戦闘系じゃねぇだろ? だから聞かなかった。すまねぇな」

「……まぁ、その通りだからいいよ」

「よし、一通り終わったな。じゃあそろそろ、夢ってやつを教えてくれよ」

「ああ、このククルカンには夢がある!」


 どこかで聞いたことがあるセリフを吐き、ククルカンが喋り出す。

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