第14話 ククルカン(1)
「おい、そろそろ二時間経つばい。ククルカンって奴はまだかっ? もしかして、逃げたっちゃなかとや? ギャッハッハ」
「あ、アホ言え。ククルカンさんが逃げるわけが無いだろうが」
ルティとバルデスが言い合いをしていた――そのとき、突然『ズドン』という音が鳴り響き砂煙が巻き上がる。
一瞬の出来事だったが、空から人が降ってきたのが見えた。
この時間にこの場所に待ち合わせしているのはククルカンのみ。ということは、降ってきたのはククルカンか!?
まさか空から来るとは思ってもみなかった……。
舞い上がった砂煙の中から、ククルカンと思われる人物が不機嫌そうにバルデスを怒鳴る。
「つまんねェことで連絡しやがってよォ、めんどくせェ。で、そいつらがお前をイジメたって奴らか?」
「は、はい。そうです。ククルカンさんのお手を
――何だ! バルデスの野郎がククルカンに対してブルブル震えながら直立不動で受け答えしている。
ククルカンって、おっかない奴なのか?
砂煙が収まるとそこには、角を生やしオレンジ色の髪色で若い頃のボニータイラーみたいな髪型をした女が葉巻を加え、仁王立ちしていた。
そして何といっても、この強者感満載のオーラ。バルデスがビビるのは分かる気がする。
しかし、ククルカンが女だったとは……。勝手に男だと思っていたから、面食らってしまった。
見た感じ、竜人族で年は三十代半ばくらいか?
ククルカンが俺たちをじっくり見つめ、喋り出す。
「なるほどねェ。あんたら、ドエレーつえェだろ。わかる。わかるよォォォ。お姉さんにはねッ。ア〜ハッハッハッハ」
これは……お姉さんと呼んであげた方が良いのか?
「で、お姉さん。ここへは黒き稲妻の
「やだぁ。お姉さんって呼んでくれるのぉ〜。嬉しいこと言ってくれるじゃあないかっ。あっ、敵討ちだったな? 安心しな。ここへ来た目的は敵討ちじゃねェからよォ」
感情の起伏が激しい奴だな!
それよりも、敵討ちじゃない!? なら、何のために来たんだ?
「――えっ! ククルカンさん、オレらの敵討ちのために来てくれたんじゃないんですか……?」
バルデスが焦った表情で、ククルカンに尋ねた。
これに対し、ククルカンはめんどくさそうに答える。
「ハァ〜! 何でオレ様がお前らみてェなクズの敵討ちをやらないかんのだ。めんどくせェ」
これを聞いたバルデスは泣きそうな顔で呟く。
「そ、そんなぁ……」
「そんなによォ、敵討ちしてほしいならよォ、お前の武器を貸せ」
「えっ! 武器ですか? まさか武器を忘れたんですか?」
バルデスはマジックポーチから剣を取り出し、ククルカンに渡す。
――次の瞬間、俺は目を疑った。
なぜなら、剣を受け取ったククルカンは味方であるはずのバルデスの胴体を真っ二つに一刀両断したからだ。
それにしても、見事な剣捌きだった。
一太刀見ただけで分かる。こいつは相当強い――。
バルデスを切り殺して満足したのか、ククルカンが嬉しそうに喋り出す。
「これで静かになったな」
確かに静かになったが、同じ冒険者だろ? さすがに殺したらヤバいんじゃ?
このことが気になった俺はククルカンに尋ねる。
「同じ冒険者ギルドに所属してるんだろ? 仲間じゃないのか?」
「仲間ァ? さっきオレ様が言ってたのを聞いてただろ? こいつは、いやこいつら(黒き稲妻)はクズ中のクズってことをよォ。だから、仲間じゃあねェよ」
「だとしても、お姉さんが冒険者を殺したらまずいんじゃ?」
「適当に誤魔化すから気にすんな。んなことよりも、オレ様のことはククルカンでいい。けど、お姉さんと呼びたかったら呼んでもいいんだぞっ!」
何だこの女、掴みどころがないから良く分からん……。
「じゃあ、ククルカンと呼ばせてもらうよ」
「そうだ、お前たちの名前を教えてくれ?」
敵意は無さそうなので、俺たちは素直に自己紹介をした。もちろん、言える範囲でだが。
自己紹介後、ククルカンが黒き稲妻について話し出したので、あいつらがどんな奴らなのか分かった。
簡単に説明すると、自分より弱い奴には偉そうな態度、強い奴にはペコペコする典型的なクソ野郎。
そんな奴らだから、弱い奴がレアアイテムを手に入れたら横取りをし、言うことを聞かない奴には殴る蹴るの暴行を加える。
とにかく、やりたい放題する連中だったそうだ。
あまりにも素行が悪いので除名処分なども検討したそうだが、ナンバー2の実力があったため、やむなく白紙にしたそうだ。
和やかに会話していたが、ここでククルカンの表情が険しくなる。
「お喋りはここまでっ! さぁ、やろうか?」
「やろうか? って、俺たちと戦うってことか?」
「お前たちの他に誰がいる?」
何となくこうなるとは思っていたが、敵討ちはしないんじゃなかったか?
一応、確認しとくか。
「敵討ちはしないんじゃなかったのか?」
「ああ、その通り。これは敵討ちじゃねぇ、オレ様の夢のために確かめときたいだけだっ」
「夢のために確かめる!? 一体何を?」
「そいつぁ、戦闘のあとに教えてやるよ」
「……わかった。いいぜ、やろうか」
「ユリウス、お前は話がわかる奴だな! 気に入ったぜッ」
俺が戦うはずだったモラレスとバルデスは死んでしまったので、ククルカンとは俺が戦うことになった。
やっとこの世界の実力者と戦うことができる。これで、俺の強さがこの世界で通用するのか知ることができる。
ジズゥたちを戦闘の邪魔にならないように移動させる。
「さぁ、始めようか」
「ちょっと待て、このゴミが邪魔だ」
そう言うと、ククルカンはバルデスの死体を炎魔法で跡形もなく消した。
ククルカンは炎魔法の使い手みたいだ!
「待たせたな。さぁ、やろうか」
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