第13話 黒き稲妻と交戦

 翌朝、昼過ぎにグスマンたちがやってきた。


 一人見たことがない奴がいる。

 漆黒のマントを羽織っているから、たぶん黒き稲妻のメンバーだろう。


「あれェェエ、貴様はギルドで俺様に気安く声かけてきた勘違い野郎ォじゃねェか。なんでここに居るんだ? 邪魔だから今すぐ消えろ」


 俺と目が合うなり、グスマンが喧嘩腰で話かけてきた。


「お前たちが――」

「ワイらがここん来るって知っとったけんが、ワイらを待っとったとやろうが」


 相当頭に来ていたのか、俺の話を遮ってルティが口を挟んできた。


「俺様たちを待っていただァァァ? おい、聞いたかモラレスゥ。俺様たちとやり合いたいらしいぜ」

「ハハハ、このマヌケどもをぶっ殺してやろうぜ。おい、そこの女ァ。お前だけは殺さないでおいてやるから安心しろ」


 これを聞いたユニィが答える。


「キッッッッモッ」


 モラレスが、血管が切れそうな勢いでユニィに叫ぶ。


「キモ、キモいだと! このクソアマァァァ、もう命乞いしても助けてやらねェからな。覚悟しとけよ」


 ここで、黒き稲妻のメンバーと思われる男が口を開く。


「おい、お前ら。オレのことを忘れていないか?」

「すんません。バルデスさんのこと忘れてました。実は――」


 グスマンがさん付けで呼ぶってことは……こいつが黒き稲妻のリーダーか!?

 バルデスに説明が終わったのか、グスマンがこちらに話しかける。


「オウ、待たせたな。さぁ、やろうぜ」


 ルティがどうしてもと懇願していたので、一番手を任せることにした。


「そっちの一番手はだい(誰)や?」


 ビックリした顔でグスマンが答える。


「まさか、俺様たちとタイマンをやろうとしてんのか? ザコのくせに」

「何や? 一対三でやってほしかとや?」


 ルティの挑発に、グスマンがブチギレる。


「バカか貴様。逆だ逆。一対四でやってやるって意味だ。早く全員でかかって来い」


 ルティが、さらに挑発をする。

 

「ギャッハッハ、全員でかかって来いだァァァ? 数的不利で負けたときの言い訳や?」

「な、何だとォ! いいぜ、そこまで言うならタイマンでやってやるよ」


 ルティとグスマンの言い争いは終わり、タイマンでやることに決まった。

 タイマンする二人を残し、俺たちはゴブリンの住む洞窟の前に。黒き稲妻は、森の方へ移動する。


 グスマンがマジックポーチから大剣を取り出し、ルティに斬りかかる。これを左手で受け止め、グスマンの左脇腹に強烈なパンチを食らわす。

 ルティのパンチを食らったグスマンは、モラレスが待機しているところまでぶっ飛び、のたうち回る。


 この光景を見たユニィが、嬉しそう呟く。


「ありゃあ、内臓が逝っちゃったねぇ。プククゥ」


 ジズゥも嬉しそうに喋る。


「しかし、あの程度の実力でよくユリウス様をコケにできましたね」

「井の中の蛙ってやつだな」


 起き上がったグスマンが叫ぶ――。

 おかげで、離れている俺たちにもハッキリと叫び声が聞こえた。


「ちょ、ちょっとはやる……ようだな。ハァハァ。な、なぶり殺してやろうかと……思ったが……止めだ。俺様の……最強の魔法で……あ、跡形もなく消してやるぜ」


 ルティは右手を突き出し、来いというジェスチャーをしながらグスマンを挑発する。


「パンチ一発でハァハァ言いよるやっかっ。御託はよかけん、さっさと打って来い」

「い、いちいちかんに障る……野郎だ。し、死ねやァ。炎龍のブレス」


 放射状の炎がルティに向かって飛んで行く。

 この炎を見たルティが笑いながら叫ぶ――!


「ギャハハハ。こんションベン見てェな炎が炎龍のブレスだってェェェ? 見せてやるよ、本当の炎龍のブレスをよォォォ!」


 ルティが放った炎はグスマンの放った炎の倍の大きさが有り、グスマンの炎を飲み込み吸収する。

 そしてそのまま、炎はグスマンの方へ向かって行く。


 死を直感したのか、グスマンは『た、助け――』と叫ぶが、炎に飲み込まれ跡形もなく消滅した。

 さらに、近くにいたモラレスも巻き添えを食らい同じく消滅した。


 この光景を見たジズゥが笑みを浮かべながら喋る。


「跡形もなく消し飛んでしまいましたね!」

「ああ、あっけない最後だったな」


 ――って、俺の獲物であるモラレスも死んでしまったじゃないか!!!

 俺の怒りはどこにぶつければいいんだ……?

 恨みはないが、生き残ったバルデスにぶつけるしかないか。


 バルデスの相手を誰がやるかジズゥが確認する。


「バルデスはユニィがやる予定でしたが、ユリウス様がやりますよね?」

「えぇ〜! ウチがやりたかったけど、しょうがないかぁ」


 バルデスの相手を誰がやるか話し合っていると、『待てコラァ』とルティの叫ぶ声が聞こえた。

 慌ててルティの方を見ると、ルティが森の中に走って行くのが見えた。

 バルデスの姿が見当たらないので、森の中へ逃げたのだろう。


 状況判断が終わると俺は、ジズゥとユニィに指示を出す。


「ジズゥは森に引火した火を消化しに行ってくれ。ユニィは俺とバルデスを探しに行く」

「了解しました!」


 バルデスの捕獲に行こうとしたとき、俺のマジックフォンが鳴る。

 電話の相手はルティで、バルデスを捕獲したので今からこちらに来るという内容だった。


 数分後、消化に行っていたジズゥが戻ってきた。

 ジズゥをねぎらうと、現在の状況を伝える。

 その一分後、ルティがバルデスを連れて戻ってきた。


「こいつどがん(どう)します?」


 殺されると思っているのか、冷や汗をかきながらバルデスがわめく。


「お、オレに手を出したらククルカンさんが黙っていないぞ」


 ククルカンって、テペウ王国最強の冒険者と呼ばれる奴だよな!

 こいつに手を出せば、ククルカンが報復に来るってことか。

 ということは、この世界の実力者と対戦できるチャンス。つまり、この世界で俺の力がどの程度なのか知ることができるってことだ!


「確認するが、お前に手を出せばククルカンが報復に来るんだな?」

「あ、当たり前だ。オレは将来を期待されているナンバー2冒険者だぞ」


 この言葉を聞いた俺は躊躇なくバルデスの左腕を切り落とす。


「うぎャアァァ。オレの腕がァァァア」


 腕を切り落とされたバルデスが泣き叫ぶ。


「手を出してやったぞ。早くククルカンを呼べ」

「ぐわぁぁぁあ」


 泣き叫んでうるさいので、俺はバルデスの腕をユニィに治させる。


 信じていなかったわけじゃないが、本当に欠損した部位を治せるんだな。

 これなら万が一、ククルカンに半殺しにされたとしても大丈夫そうだ!


「腕を治してやったぞ。早くククルカンを呼べ」

「わ、分かったよ……」


 バルデスがククルカンにマジックフォンで連絡を取り、返ってきた返答は二時間後にここに来るとのことだった。

 これを聞いた俺たちは、ククルカンの到着を待つ。

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