第12話 ゴブリンの洞窟へ

 ゴブリンの洞窟に向かうのはいいが、徒歩だと時間がかかる。というより、めんどくさいってのが本音だ。

 ジズゥが言っていたテレポート場に行ってみるか!


「ジズゥ、先ほど言っていたテレポート場の場所は分かるか?」

「東門の近くにあると言っていたので、東門に向かえばあると思います」

「東門か。じゃあ、行くか!」



   ◇◇◇



 アルバレスから歩くこと数十分、東門付近に到着。


「ユリウス様。見た感じ、あの建物がテレポート場じゃないでしょうか?」


 ジズゥが指を差した方を見ると、体育館くらいの大きさの建物がある。

 建物に近づくと『テレポート場』と書かれた看板を発見!


「ここで間違いなさそうだな。入るぞ!」


 建物内に入り、辺りを見渡す。

 すると、入り口近くに総合案内所みたいな受付を発見!

 テレポート場のシステムが分からないので、利用方法を聞くために総合案内所に向かう。


「すみません、ちょっとお聞きしたいんですが……?」


 受付にいた兎型の獣人のお姉さんに声をかけると、愛想く返事をしてくれた。


「はい、何でしょうか?」

「ポポル村に行きたいのですが、どうすればいいんですか?」

「……ポポル村ですか? 残念ながらポポル村には魔法陣を設置していないので、ポポル村にテレポートで行くことは出来ません」


 受付嬢にテレポート場のことを詳しく聞いてみた結果、次のことが分かった。


 一枚のドアで出発地と目的地を繋ぐことが出来る猫型ロボットの『どこでもドア』と違い、転移するには出発地と目的地の両方に魔法陣を設置して同期させる必要があるらしい。

 なので、ポポル村に魔法陣を設置していないから転移することが出来ないようだ。


 転移可能な場所は、テペウ王国内の主要都市、同盟国のタモアンチャン王国、ビラコチャ共和国の王都だけみたいだ。


 転移できないのならしょうがない。めんどくさいが徒歩で行くか……。

 問題は、今から出発したら夜になるってことだ。

 まぁ、このメンツなら夜道でも大丈夫か!


 俺たちはキニチを出て、ヤマの森に向かう。



   ◇◇◇



 ヴフ山の麓に着くころには陽が落ち、辺りが暗くなっていた。

 これなら飛んで行っても目立たんな。


 ジズゥたちに提案するか!


「暗くなってきたから、こっからは飛んで行きたいんだがいいか?」

「よかっすよ」


 ジズゥは俺を、ルティはユニィを抱え込んでヤマの森に向かって飛んだ!

 当たり前のことだが、徒歩より飛んで行く方が圧倒的に速い。

 そのため、三十分ほどで目的地のゴブリンが住む洞窟に到着した!


 よかった、ゴブリンたちは健在だ。争った形跡も見当たらない。まだグスマンたちは来ていないみたいだ。


 洞窟に近づくと、こちらに気付いたゴブリンが洞窟内にいる仲間を呼ぶ。

 すると、洞窟内からぞろぞろとゴブリンが外に出てきた。

 俺だと認識したのか、ゴブリンの長であるアトさんが一人でこちらに向かってくる。


「ユリウス殿じゃないですか? こんな夜更けに何用ですかな?」

「ちょっとアトさんに伝えたいことがあってなっ」

「伝いたいこと……ですか?」

「ああ。単刀直入に言うが、これからここに黒き稲妻というA級冒険者チームがアトさんたちの退治にやって来る」


 アトさんに俺たちがここに来た経緯を語った。


「――ワシたちを退治に!? 何があろうともワシたちを退治したいみたいですな……」

「ああそうみたいだ」

「やはり、引っ越しを考えないといかんですのぉ……。わざわざ報告ありがとうございますじゃ」


 アトさんは深々頭を下げ、俺にお礼を言った。


「いや、俺たちが守るから引っ越さなくていいよ。これから来る冒険者とはちょっとした因縁があるから、俺たちが返り討ちにする」

「ですが、来るのはA級冒険者なんですよね?」

「そうだが、たぶん大丈夫。だから、アトさんたちは大船に乗ったつもりでいていいよ!」


 勝負に絶対はないが、俺たちならA級冒険者ごとき楽勝だろ。

 俺は心配性。ゆえに慎重に行動してしまうが、同時に楽観的な性格でもある。これが裏目に出なければいいが……。


「では、お言葉に甘えさせて頂きますじゃ。ところで、晩御飯は食べられましたか?」

「晩飯!? いや、まだだが……」

「川魚と小動物の肉しかありませんが、よかったら食べてください」


 グスマンたちが来るとしたら明日だろうし、お言葉に甘えて晩飯を頂くか!

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