第7話 野盗襲撃
――あれ? 王都に行くと行ってもどうやって行けばいいんだ!?
ゲームだと行ったことがある街がコマンド画面に表示されるから、あとは行きたい街を選択すれば瞬間移動できる。
――が、この世界はゲームの世界で合ってゲームの世界ではない。もはや、現実世界と言ってもいいだろう。
なら、移動手段は徒歩か? 鳥人のジズゥや竜人のルティは飛行可能だから、この二人に運んでもらうという方法もあるか!
だが何回も言っている通り、この世界の事が分からないうちは目立つ行動をしたくない。だから、飛んで行くことは無しだな。
仲間に【転移魔法】が使える奴がいれば転移魔法で行くこともできるだろうが、現時点では徒歩以外に方法が無しか……。
今後のために、転移魔法が使える奴を仲間にすることも視野に入れとかないといけないな。
もしかしたら、蘇生魔法みたいに転移魔法も存在しないかもしれないが……。
「面倒だが、徒歩で王都を目指す。道は分かるか?」
ゲームと同じなら二通りの行き方があるが、この世界も同じなのか分からないからジズゥにポポル村から王都まで行く道のりを尋ねた。
すると、ヴフ山を越えていく道とヴフ山を迂回していく道の二通りのルートがあると教えてくれた。
まだ確証はないが、地理はゲームの世界と同じのようだ!
早く着きたいなら山越え。時間がかかってもいいならヴフ山を迂回。さて、どっちのルートで行くか?
ジズゥたちと話し合った結果、俺たちは山越えルートで行くことになった!
◇◇◇
これがヴフ山か! 見た感じ、標高は東京にある高尾山くらいか? これなら余裕で山越えできそうだ!
何事もなく山頂に到着!
いや、途中でユニィが『やだやだやだ。もう歩きたくないィィィ』と、駄々をこねたか……。
あなた馬だよね? と内心思ったが、それはここだけの秘密だ。
山頂で少し休憩を取り、下山を開始する。
順調に下山していると、茂みの中から野盗と思われる集団が現れ、俺たちが通る進路を
これを見たルティが叫ぶ!
「なんやワイ(お前)らは?」
「見て分かんねぇのかァ? 野盗だよ、や・と・う」
野盗団の頭目らしき人物が俺たちをバカにする。
これを見た取り巻きたちが『ワッハッハ』と笑い、俺たちを小馬鹿にしてきた。
「その野盗団が私たちに何か用ですか?」
ジズゥが冷静に質問する。
「テメェらはバカかッ? バカなのか? 野盗がやることは一つしかねぇだろ? 分かったら、さっさとテメェらの装備品と金を出せッ」
――野盗の人数は、パッと見……九人。人間だけではなく、リザードマンとオークも居る。他種族の混成チームみたいだ!
人を見た目で判断するのは良くないが、野党団の装備品を見る限りどうみても強そうに見えん。
たぶん余裕で勝てるだろうが、一つだけ懸念がある……。
それは、この世界の住人と戦闘をしていないということだ! なので、俺……いや俺たちの強さがこの世界でどの程度なのか全く分からん……。
俺たちは強いと思うが、万が一ってことがある。やはり、慎重に戦った方が無難か?
なぜここまで慎重になるのかというと、俺はロールプレイングゲームでボス戦に挑む前にレベルを上げ、装備品やアイテムを揃え準備万端で挑むタイプだからだ!
蘇生魔法で復活が出来ない。つまり、死んだらそこで終了――。
だから慎重になるしかないのだ……。
――だが、主君である俺がジズゥたちの前でヘコヘコしていたら俺の威厳が無くなる。
野盗が見た目通りの弱さを願って、ここは強気に行くか――!
「お前らみたいなクズ野郎にやる金はねェな。死にたくなかったら失せろ」
「ハァ~、バッカじゃねェのお前。こっちはお前らの倍の数はいるんだぞッ。死にたくねェんだったら、さっさと金を出せ。マヌケ」
言葉遣いが悪かったが命は助けてやると警告してやったのに、野盗団のモブAがヘラヘラしながら拒否ってきやがった。
やれやれ、極力争いは避けたがったが無理か……。
野盗を言い換えると強盗。しかも、俺たちが殺されれば強盗殺人。
俺は殺人、詐欺、強姦を犯した者は死刑で良いと思っている人間だ。死刑を廃止という人もいるが、人間の性根は死なんと治らん。
だから、野党のこいつらがどうなろうと知ったことではない。
よって、躊躇なく殺すことに決めた――!
「しょうがない、お前ら皆殺しだ」
「皆殺しだァァァ? それはこっちのセリフだ。バァァァカッ」
――そうだ! この機会に補助魔法を試してみるか!
「シリウス」
シリウスは、強烈な光で目をくらませる魔法だ。よって、辺り一面を激しく照らす。
しかし――ここで想定外の出来事が起こる!
「うわっ!」
――ちょっと待て! 何で術者の俺も食らうんだ……? 普通、こういうのは敵だけに効果を及ぼすんじゃないのか?
まぁ、敵も『目がァっ』と叫んでいるからヨシとしておこう。
しかし、敵味方関係なく効果範囲内に居る全員にダメージを及ばすとは……。この魔法は使えんな……。
――いやよく考えると、炎や雷などの攻撃系魔法は敵味方関係なく効果範囲内に居る全員にダメージを与える。なら、補助魔法も効果範囲内に居る全員に効果を及ぼすのは当たり前のことじゃないか!
光が収まると、野党団の頭目が叫ぶ。
「テメェとテメェの仲間も食らってるじゃねェか? テメェは何がしてェんだ?」
カッコつけて『皆殺しだ』と言っていたから、俺は恥ずかしさのあまり赤面してしまう。
「もぉぉ。ユリウス様ぁ、何やってんのぉ?」
「ショ、ショータイム前の余興だ、余興ぅ」
ユニィ、ナイスツッコみ!
場が戻ったところで仕切り直しだ。
「さぁ、死にたい奴からかかってこい――」
「何が余興だ。ボケ」
野党団は二人一組になり、俺たちと二対一の状況を作る。
敵は数的有利だから、当然そう来るよね。
で、俺の相手はモヒカンとスキンヘッドの二人組。頭目はというと、後方で待機している。
「死ねェェェ」
と叫びながら、モヒカンとスキンヘッドが一斉に斬りかかってきた。
なんだこいつら!? 遅い。遅すぎる! あまりにも動きが遅すぎて、ハッキリとこいつらの動きが見える。
これは……事故ったときに周りの景色がスローモーションに見えるあの感じだ。
俺はこいつらの攻撃を『ホイッ』とかわしながら、二人の首を斬り落とす。
――あっ! そう言えば、ユニィとルティの強さを知らない……。まさか、やられてないよな?
二人の方を見てみると、余裕で敵を殺していた! もちろん、ジズゥも余裕で敵を殺している。
この野盗たちはこの世界でどのくらいの強さなんだ?
まぁ、普通に考えてザコだろう。この程度の相手なら余裕で勝てることが分かったから、まずまずの収穫だな。
あとは、後方で待機している頭目を殺して終わりか!
「あとはお前だけだな」
「ま゙、待ってくれェェェ。降参だ。降参ッ」
実力差を認識したのか、野盗団の頭目が降参してきた。
「ハァァァアッ。それが降参する立場の人間の言い方かァ? このトンチキがァァァ」
頭目の言葉遣いが気に入らなかったのか、ユニィが言い方を改めさせる。
「こ、降参します」
命乞いをしてきたので見逃すことにした。
「これに懲りたなら、もう野盗なんて真似するなよっ」
もう二度と野盗みたいな人に迷惑をかける行為をするなよと言い聞かせていると、頭目が野盗になった
聞いた話を要約すると、このテペウ王国は貧富の差が激しく、最下層の人間は今日食べる物もないくらい貧しいらしい。それで、生きるために仕方なく野盗になったそうだ。
この手の話は現実世界でも良くある話だが、聞く限り相当ひどいことになっているらしい。まぁ、王都に行けば分かるだろう。
頭目に真面目に働けよと言い残し、俺たちは王都キニチへ向け出発する――!
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