第8話 王都キニチ
途中、野盗団に襲われたが難なく対処し、無事にヴフ山を越えた。あとは、王都キニチに繋がる街道を突き進むだけ。
小一時間ほど街道を歩いていると、遠目に王都が見えて来た――。
「ユリウス様。やっと王都が見えてきましたね!」
「ああ」
さすがに毎度毎度こんな風に徒歩移動するのはめんどくさい。これは、転移魔法を使える者を見つけたら仲間に加えたほうが良さそうだな。
そうこうしているうちに、テペウ王国の王都キニチに到着――!
王都はポポル村と違い、街が城壁で覆われている。そのため、通行門から王都に入るしかない。
――ここであることに気付く!
それは、王都に入るには税関みたいな検査を受けないといけないかもしれないということだ。
もし、身分証などが必要だったらどうする……?
まぁ、ここであれこれ考えてもしょうがない。とりあえず、列の最後尾に並ぶか。
門番が優秀なのか検査が簡易的なのか分からないが、一組当たり一分くらいで通過していく。
俺たちの前の組が王都の中に入って行くと、門番が俺たちを呼ぶ。
「次の方ぁ」
めんどくさいことにならないよう口が悪いユニィとルティには余計なことは喋るなと念を押し、門番の元へ向かう。
「住民なら身分証。商人なら通行許可証の提示をお願いします」
やっぱり、身分証的な物が必要か……。
現実世界でも他国に行く場合にはパスポートが必要だし、当然っちゃ当然か!
「身分証が無い人はどうすればいいんですか?」
「仕事? 観光?」
ここは観光と言ったほうが良さそうな気がする。
「観光です」
「なら、通行料30万エル払えば通れるよ」
門番に確認したところ、住民は身分証明書。商人は通行許可証を提示。身分証を持っていない人は、通行料を払えばキニチに入れるそうだ。
身分証が無くてもお金を払えばいいのはありがたいが……通行料の高さにはビビるな!
なぜ驚いているのかというと、ゲームの世界での1エルは1円換算。だから、キニチに入るために、一人当たり30万円もかかるということだ……。
――もしかして、ぼったくられている……のか?
他国がどれくらいの通行料を取るのか分からんから、この金額が適正価格なのか判断できん。
ただ幸いなことに、ゲーム内でのお金はカンストしていた。だから、お金はしこたまある。
なので、揉めて目立つのを避けるために四人分の通行料120万エルを支払って門を通過した――。
◇◇◇
「なんかいつ来てもすごい街並みだねぇ〜」
キニチの街並みを見てユニィが驚いていたが、俺はそれ以上に驚愕していた――!
なぜかというと、ゲーム内でのキニチは白色の外壁にオレンジの屋根で統一された街並みだったのだが、この世界のキニチは赤、青、黄などのカラフルな色をした建物が並ぶ観光地みたいな街になっているからだ!
地理やアイテム、魔法などは『ミソロジーワールド』と同一だが、どうやら世界観は俺の知っているものとは違うようだ……!
やはり、この世界は『ミソロジーワールド』とは別物の世界と思っていたほうが良さそうだな! キニチに来たのは正解だった。
夕暮れになってきたから、まずは宿を見つけるか。
適当に街中を散策していると宿屋があったので、ジズゥに宿泊料を確認して来てもらった。
「一泊いくらだった?」
「10万エルでした」
「ノーマルの部屋でっ?」
「はい」
スイートルームとかじゃなくて、ノーマルの部屋で10万エルもするのか! 高くないか? それとも、ここの宿屋が高級店なのか? 申し訳ないが、どう見てもビジネスホテルっぽい感じにしか見えんのだが……。
一応、他の宿屋の料金も確認してみるか。
確認した結果、二軒目の宿屋は一泊11万エル。三軒目の宿屋は10万エルだった。どうやら、一泊10万エル前後が相場らしい。
移動するのがめんどくさいので、最後に聞いた宿屋に宿泊することに決めた。
宿泊するのは良いが、さすがに男三人と女一人が一緒の部屋で寝るのはまずいんじゃないか? そこで、20万エル払って二部屋借りることにした。
「今日の寝床は確保したから、晩飯を食べに行くか?」
「はぁい」
適当に街を散策していると焼き鳥屋みたいな飯屋を発見!
「ここにするか?」
「了解っす」
俺たちが店内に入ると、『こちらの席へどうぞ』と二十歳くらいの若いウエイトレスに席に案内された。
席に座り俺たちはメニュー表を見る。
ビールが3千エル、焼き鳥が一本5百エル!
庶民的な店なのに、高級料理屋並みの価格設定だ。やっぱり、物価がかなり高いようだ。
「遠慮せずに、食べたいものを好きなだけ注文していいぞ」
「はい」
注文が決まるとジズゥが店員を呼び、オーダーを通す。
すると、すぐに人数分のビールが届く。
「ユリウス様。乾杯の音頭をお願いします」
「分かった」
乾杯の音頭か! これは絶好の好機じゃないのか!?
三国志が好きな奴なら一度は憧れる桃園の誓いの真似をやるぜ!
「俺たち四人、生まれし日は違えど死すときは同年同月同日を願わん。乾杯!」
「「「乾杯」」」
「何すかその音頭? バリカッコよかっすね」
ヤンキー気質のルティに、桃園の誓いが刺さったようだ。
「だろ!」
俺たちは談笑しながらメシを食べる。
気が付くと二時間が経過していた。
「ぼちぼち宿に向かうか」
会計を済ませ、俺たちは宿に向かう。
美しく切ない花火 オーストリッチマン @kikujiroumaru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。美しく切ない花火の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます