第5話 ユニコーンとルティーヤー

「森の出口が見えてきました。もうすぐポポル村に着きますね」

「そうだな。そこにユニコーンとルティーヤーが居るんだよな?」

「そうです!」

「会うのが楽しみだ!」


 ポポル村はヤマの森を抜けるとすぐそこにあり、百世帯くらいが暮らしている小さな村だ。そこで俺たちの帰りをユニコーンとルティーヤーが待っているらしい。

 どんな奴か楽しみな反面、変な奴だったらどうしようという不安もある。そうこうしている間に俺たちはポポル村の入り口に到着した。


 到着するなり、おでこに角を生やし、青、紫、緑などが混じったカラフルな髪の色をした女が俺に話しかけて来た。

 その横には、赤髪でボーイ時代の布袋さんのような髪形をした男が立っている。

 女の方は十代後半。男は二十代前半くらいか?

 察するに、この二人がユニコーンとルティーヤーと思われる。


「遅かったじゃないですかぁ。まさか、ゴブリンごときに手こずったんですかぁ?」

「いや、かくかくしかじかで色々あってな――」


 ジズがこれまでの経緯を説明する。

 やはり、この二人がユニコーンとルティーヤーみたいだ。


「え――ッ! 記憶障害?」

「どうやらそうみたいなんだ。他のことは憶えているんだが、なぜかお前たちの事に関する記憶だけが曖昧になっている……」

「曖昧ってことは完全に忘れとるわけじゃなかっでしょ?」

「ああそうだ。お前たちの名前などは憶えている」


 ユニコーンは見た目通りギャルっぽい感じの性格みたいだ。それより気になったのが、九州弁で喋るルティーヤーだ! なぜ、九州弁なんだ?

 そう言えば、今まで普通に会話が出来ていたから気づかなかったが、ジズもゴブリンも日本語で喋っている!


 ――そうか! 『ミソロジーワールド』を製作したのは日本企業。だから、この世界も日本語ってことか!


「そうだ、ユニコーン。ジズの傷を治してやってくれないか? 俺と手合わせしたときに怪我をさせてしまった」

「手合わせぇ? ちょっと前に森の中から『バンッ、ピュー』っておっきな音がしたのはそれかぁ。おっけぇでぇす」


 そう言うと、すぐさまジズの傷を魔法で治した。

 治癒魔法のことで把握しておきたいことがある俺はユニィに尋ねる。


「治癒魔法はどの程度の傷まで治せる?」

「どんな傷でも治せますよぉ」

「じゃあ、腕や足が切断された場合は?」

「死んでなけば、復元できるんで問題ないですよぉ」

「じゃあ、瀕死までなら問題ないってことだな?」

「そうでぇす。あとぉ、毒などの状態異常も治せますぉ。スゴイっしょ」


 切断された部位も復元できるのか! ということは、即死さえしなければ完治できるってことだな。しかも、状態異常も治せるとはありがたい。


「ああ凄い。ユニコーンが仲間で心強いよ!」

「きゃぁ、配下じゃなく仲間って言ってくれたぁ。ウレシィィィ」

「ジズにも言ったが、俺はお前たちの主君だが配下ではなく仲間として接する。だからこれからは敬語じゃなくていいし、意見があるときは気軽に言ってくれ。周りにイエスマンしかいなかったら知らないうちに道を踏み外し、暴君もしくは愚者になるからな。そうならないように頼む」

「おっけぇ〜」

「ういっす」

「――あっ! ユリウスさまぁ。じゃあ、これからはウチのことユニィって呼んでっ!」

「ワイ(お前)だけこす(ズル)かったい。じゃあ、オイはルティーで!」


 ルティの喋り方は、九州弁の中でも長崎弁か!


「では私も、ジズゥとお呼びください!」


 これからは、この三人を愛称で呼ぶことになった!

 しかし、真面目そうなジズも愛称で呼んでほしいとは意外だったな。

 ユニィとルティのことが大体分かったので、ゴブリン退治のことを村長に報告しに向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る