第3話 ゴブリン退治
森の中を散策していると、ゴブリンが根城にしている洞窟を発見!
「サクッと終わらせましょう!」
「ああっ」
カッコよく返事をしたのは良いが――ここで俺は重大なことに気付く!
あれ、ステータス画面やコマンド画面が出ない……。どうやって戦ったらいいんだ? 魔法はどうやって使うんだ?
ゲームの世界に転移したら普通はコマンド画面が出るのがセオリーのはずなんだが……。
俺があたふたしていると、それを見たジズが心配そうに声をかけてきた。
「どうされました?」
「いやぁ、言いにくいんだが……戦い方が分からん……」
「――なんですとっ!」
剣は手に持って標的を斬る。魔法は呪文を唱える。ジズがそう教えてくれた。
いや、そうだろうけどさぁ、それが分からんと言ってるんだが……。
――そうか、そういうことか! コマンド画面が出ないのならジズの言う通り、剣で敵を切る。魔法を使うなら呪文を唱える。これでいいんだ!
行動を起こすのは俺。アバターをコントローラーで動かしている訳じゃないんだから、何も難しく考える必要はなかったんだ!
「もう大丈夫だ。ジズ、行くぞっ!」
「はい」
洞窟に向かって歩いていると、入り口付近に居たゴブリンが俺たちに気付く!
俺たちを敵と認識したのか、続々と洞窟の奥からゴブリンたちが出て来た。
視認できる範囲だけで数十匹はいる。面倒だ、魔法で瞬殺するか?
だが問題は、異世界転移してから魔法を使っていない。だから、キチンと発動するのか分からん。
それに、問題なく発動できたとしてもどれくらいの攻撃力なのか分からん……。
『ミソロジーワールド』では複数の属性の魔法を使用することが出来ない。つまり、炎属性を選んだ者は炎系のみしか使用できない。
要は一人一属性の魔法しか使用することができないってことだ。だから、水や雷属性などの他の属性魔法を使用することができない。
で、俺が使用するのは【宇宙魔法】。天体魔法と呼ばれることもある。
ちなみに、この魔法はプレイ時間が2万5千時間に達したときに特典で貰ったものだ!
名前から分かる通り、この宇宙魔法はゲーム内で超強力だ。だから、ゲーム通りの威力だった場合、この一帯の地形が変わる可能性がある。
この世界の事が分からないうちは目立つ行動は避けておきたい。そうなると、剣で切り殺すのが無難か。
ゲームと同じならゴブリンは雑魚モンスターのはず。そして、俺がアバター通りの強さなら剣技だけで余裕のはずだ。
それに、ジズは最強クラスの召喚獣だから何も問題ないだろう。
俺たちがゴブリンに斬りかかろうとしたとき――、
「ま、待ってくだされ」
と、年老いたゴブリンが叫んだ。
これを聞いた俺はジズに命令する――。
「ジズっ。待てっ」
「ハッ!」
――ゴブリンが喋った? いや、現に喋っている。知性があるのか?
待ってくれということは……対話を求めているってことかなのか?
いつでも殲滅できるだろうし、対話に応じてみるか。
俺たちは戦闘を停止して、ゴブリンの話を聞くことにした。
「武器を納めてくれたということは、対話に応じてくれると判断してよいのですかな?」
「ああ。で、あなたはこのゴブリンたちの代表者?」
「はい、
ゴブリンに名前があるのか!
言語を話すことができ、集団で生活。やはり、知性があるようだ。
「俺たちはこの森の近くにあるポポル村の村長にゴブリン退治依頼された者だ」
「依頼された……? ワシたちがその村に何かしたんじゃろうか?」
「いや、まだ何もしていない」
「――まだ?」
「そう、まだ。要は村が襲われるかもしれないから、その前に退治しておきたいってことだな。まぁ、害獣駆除みたいな感じか」
「……害獣駆除」
この群れの長が俺に尋ねたので、包み隠さず正直に答えた。
その後も話が続く。その結果、俺はゴブリン退治を止めることにした。
理由は、このゴブリンたちがポポル村を襲うことが無いと判断したからだ!
ポポル村が襲われるかもしれないから村を守るためにゴブリン退治を依頼されたわけだが、このゴブリンたちが村を襲撃しないのなら退治する必要が無い。
見た目が気持ち悪いという理由で、ゴブリンという種族は魔獣扱いを受けているそうだ。このゴブリンたちも住処を追われ、この洞窟に退避してきたらしい。
そして最後に、こう言っていた。『平和に暮らしていきたい』だけだと。
もちろん、嘘の可能性もある。が、信じやすい性格の俺はこの話を信じてしまった。
どうやら、この世界のゴブリンはゲームのゴブリン像とは違うみたいだ。これからは、ゴブリンに対する認識を改めないといかんな。
いや、他の魔獣も知性があるのかもしれないから、魔獣全部の認識を改めないといけないようだ。
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