第2話 状況確認

 ゴブリンの群れを探す道中、ふと疑問に思ったことがある。その疑問とは、なぜジズだけが擬人化しているのか? というものだ。


 どういうことかというと、俺がゲーム内で使用していた召喚獣はジズだけではない。だから、他の召喚獣も擬人化していてもおかしくはないはず。

 しかし、どこをどう見てもジズ以外見当たらない……。

 そこで、ジズに問いかけてみる。


「ジズ以外に俺の仲間はいるのか?」

「やはり我々に関することだけ記憶が飛んでいるみたいですね。私の他に、ユニコーンとルティーヤーがいますよ」


 ユニコーンは分かるが、ルティーヤー? そんな召喚獣は持っていなかったぞ……。

 ――んっ! 待てよ。俺の記憶が確かなら、ルティーヤーってバハムートの別名だったような……!

 なぜ名前が変わっているのかは分からんが、これなら合点がてんがいく。


「その二人はどこに居る?」

「ユニコーンとルティーヤーはポポル村で待機しています」

「他には?」

「他? ユリウス様の配下……いえ、仲間は私を含めて三人だけです」


 ……三人? 俺の手持ちの召喚獣はもっといたぞ。

 ――なぜ三人だけ? 仲間になった奴とならなかった奴の違いは何だ?


 ジズ、ユニコーン、ルティーヤーの三人の共通点は……使用頻度か? 他の召喚獣はほとんど使っていなかったからな。

 仮に使用頻度だとすると、よく使用していたリヴァイアサンとベヒモスの二体がいない。それと、そこそこ使用していたフェニックスもいない。

 一応、ジズに聞いてみるか。


「三人ということは、リヴァイアサン、ベヒモス、フェニックスはいないのか?」

「リヴァイアサン? ベヒモス? フェニックス? いえ、そのような者は知りません」


 ――知らない? なら、使用頻度は違うのか? 分からん。まぁ、分からんものはしょうがない……。

 ――ちょっと待った! フェニックスがいないということは……蘇生できないってことじゃないのか!?

 ――いや、召喚獣がゲームと同じ魔法を使用するとは限らん。要確認だな。


「俺の仲間がジズたち三人だけなのは分かった。あと、他にいくつか確認しておきたいことがあるんだがいいか?」

「はい、何でしょう?」

「もし、俺やジズが死んだ場合どうなる? 【蘇生魔法】で復活か?」

「ユリウス様はお強いので死ぬことが想像できませんが、万が一死亡した場合……生き返ることはできません。なぜなら、先ほどおっしゃられた蘇生魔法というものがないからです」


 ――蘇生魔法が無い? それで、フェニックスが存在しないのか!

 もしかして、リヴァイアサンとベヒモスも、何らかの理由があって存在しないのかもしれんな。


 ――それよりも今は、ってことの方が重要な問題だ!

 ゲームの世界だから最悪死んでも復活して何度もやり直せると思っていたが、死んだら終了とは……。これでは、現実世界と変わらんな。


 いや、武器や魔法を使用しての戦闘があるから、現実世界よりも死ぬ確率が高いかもしれん……。

 これからは、死んでも生き返れるから大丈夫という楽観的な感覚は捨てて行動しないといかんな。

 そうなると、仲間の能力などを把握しておく必要がある。


「ジズは【風魔法】。ユニコーンは【治癒魔法】。ルティーヤーは【炎魔法】を使うんだったよな?」

「そうです! 記憶が戻りましたか?」


 やはり、ゲームと同じ属性の魔法を使うのか!


「いや、何の魔法を使うのか覚えていただけだ。だが、使用する武器は憶えていないから教えてくれ」

「はい。私の使用する武器は槍で、ユニコーンは銃。ルティーヤーは剣です」


 そう言うと、ジズはポーチらしき物から槍を取り出した。


「ジズ、それは何だ?」

「これですか? これはマジックポーチです。異空間に道具などを収納できる魔道具です!」

「生物も入れることが出来るのか?」

「生物は無理ですが、死体なら可能です」


 異空間に収納して持ち運べるってことは、猫型ロボットが持っているポケットみたいなもんか!

 俺も欲しい。頂戴と言えばくれるだろうが、さすがにそれはダメだ。仲間として接すると言った手前、矛盾した言動になってしまう。


 都合よく、ポケットに入ってたりしないかな? 試しにポケット内を探してみる。すると、マジックポーチが入っていた! マジで入っているとは、ラッキ―!


 マジックポーチの中を確認してみると、ゲーム内で所持していたアイテム、お金、ギルドカードなどが入っていた。

 ――そうか! ゲームで使用していたアイテムボックスの代わりか……たぶん。


 そう言えば、ユニコーンとルティーヤーはポポル村に居ると言っていたな。なぜ、共に行動していないんだ? この事をジズに確認する。


「ところで、ユニコーンとルティーヤーはなぜポポル村で待機してるんだ?」

「全員でゴブリン退治に向かった場合、我々に索敵魔法を使える者がいませんのでゴブリンとすれ違う可能性があります」

「なるほど! その間に襲撃されては本末転倒だからな。それで、二人を待機させているのか」

「その通りです!」


 召喚獣が擬人化し、蘇生魔法が無い。そして、俺の知らない魔道具が存在する。

 この世界は『ミソロジーワールド』の世界のようだが、似て非なる世界かもしれん――。


 この世界のことを把握するまでは慎重に行動したほうが良さそうだ。

 とりあえず、現在の状況は大体把握できた。

 では、目的のゴブリンを退治に行くとするか。

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