第2話 状況確認

 ゴブリンの群れを探す道中、ふと疑問に思ったことがある。

 その疑問とは、なぜジズだけが擬人化しているのか? というものだ。


 どういうことかというと、俺がゲーム内で使用していた召喚獣はジズだけではない。だから、他の召喚獣も擬人化していてもおかしくはないはず。

 しかし、どこをどう見渡してもジズ以外見当たらない……。


 そこで、ジズに問いかけてみる。


「ジズ以外に俺の仲間はいるのか?」

「やはり我々に関することだけ、記憶が飛んでいるみたいですね。私の他に、ユニコーンとルティーヤーがいますよ」


 ユニコーンは分かるが……ルティーヤー!?

 そんな召喚獣は持っていなかったぞ……。


 ――んっ! 待てよ……。

 俺の記憶が確かなら、ルティーヤーってバハムートの別名だったはず……。


 なぜ名前が変わっているのかは分からんが、これなら合点がてんがいく。

 で、その二人はどこにいるんだ? 聞いてみるか。


「その二人はどこに居る?」

「ユニコーンとルティーヤーはポポル村で待機しています」


 ユニコーンとルティーヤーしか言わなかったが、他にはいないのか? 要確認だな。


「他は?」


 キョトンとした表情でジズが答える。


「――他? ユリウス様の配下……いえ、仲間は私を含めて三人だけです」


 ……三人!? ジズ、ユニコーン、ルティーヤーの三人だけ?

 いやっ、俺が使用できる召喚獣はもっといたぞ。他はどこ行ったんだ……。


 逆に考えると――なぜ、この三人だけが仲間なんだ? 仲間になった奴とならなかった奴の違いは何だ?


 ジズ、ユニコーン、ルティーヤーの三人の共通点は……使用頻度か? 他の召喚獣はほとんど使っていなかったからな。これなら合点がいく。


 だが仮に使用頻度だとすると、辻褄が合わないことがある。

 それは、ジズたちと同じくらいの頻度で使用していたリヴァイアサンとベヒモスの二体がいない……。

 それと、そこそこ使用していたフェニックスもいない……。


 一応、ジズに聞いてみよう。


「三人ということは、リヴァイアサン、ベヒモス、フェニックスはいないということか?」

「リヴァイアサン? ベヒモス? フェニックス? いえ、そのような者は知りません」


 ――知らない!? なら、使用頻度は違うのか……?

 分からん。まぁ、分からんものはしょうがない……。


 ――ちょっと待った! フェニックスがいないということは……蘇生できないってことじゃないのか!?


 ――いや、召喚獣がゲームと同じ魔法を使用するとは決まっていない。これも要確認だな。


「俺の仲間がジズたち三人だけなのは分かった。あと、他にいくつか確認しておきたいことがあるんだがいいか?」

「はい、何でしょう?」

「もし、俺やジズが死んだ場合どうなる? 【蘇生魔法】で復活か?」

「ユリウス様はお強いので死ぬことが想像できませんが、万が一死亡した場合……生き返ることはできないと思います。なぜなら、先ほどおっしゃられた蘇生魔法が存在しないからです」


 ――蘇生魔法が無い!? それが理由で、フェニックスが存在しないのか?

 もしかして、リヴァイアサンとベヒモスも、何らかの理由があって存在しないってことか……。


 ――それよりも今は、ってことの方が重要な問題だ!!!


 ゲームの世界だから最悪死んでも復活して何度でもやり直せると思っていたが、死んだら終了とは……。

 これでは、現実世界と変わらんな。


 いや、武器や魔法を使用しての戦闘があるだろうから、現実世界よりも死ぬ確率が高いかもしれん……。

 これからは、死んでも生き返れるから大丈夫という楽観的な感覚は捨てて行動しないといかんな。

 そうなると、仲間の能力などを把握しておく必要がある。


「ジズは【風魔法】。ユニコーンは【治癒魔法】。ルティーヤーは【炎魔法】を使うんだったよな?」

「――そうです! 記憶が戻りましたか?」


 やはり、ゲームと同じ属性の魔法を使うようだ!

 擬人化してるということは……武器も使用するのか?


 ――武器!? そう言えば、俺も手ぶらだ……。俺の愛剣【デュランダル】はどこに行った……?


 とりあえず、俺の武器は後回しだ。まずは、ジズたちの武器を聞いとこう。


「いや、何の魔法を使うのか覚えていただけだ。だが、使用する武器が思い出せんから教えてくれ」

「はい。私の使用する武器は槍で、ユニコーンは弓。ルティーヤーは剣です」


 そう言うと、ジズはポーチらしき物から槍を取り出した。


「ジズ、それは何だ?」

「これですか? これはマジックポーチです。異空間に道具などを収納できる魔道具です」


 なるほど、荷物になる物はマジックポーチに入れて持ち運びしているのか!

 めっちゃ便利な魔道具だな。異世界って感じだ。


 ということは、俺の武器もマジックポーチに入っているのか? と思ったが、マジックポーチなんて持っていない……。

 もしかして、ジズが俺のを持ってくれているのか? 聞いてみるか。


「俺のマジックポーチはあるのか?」

「――えっ! コートのポケットに入っていませんか?」


 コートのポケットに手を突っ込み探してみる……すると、マジックポーチが入っていた!


 マジックポーチの中を確認してみると、ゲーム内で所持していた武器、アイテム、お金、ギルドカードなどが入っていた。


 ――そうか! マジックポーチとは、ゲームで使用していたアイテムボックスの代わりだな……たぶん。


 次は、ジズの翼についてだな。

 どっからどう見ても鳥人なのに、ジズには翼がない。


「ジズには翼が無いが飛べるのか?」

「翼ですか? ありますよ。飛ぶとき以外は邪魔なので、普段は消しています」


 そう言うと、ジズは翼を出し、飛んでみせた。

 なるほど! 普段は邪魔だから消しているのね。


 そう言えば、ユニコーンとルティーヤーはポポル村にいると言っていたな。

 なぜ、共に行動していないんだ?


 この事をジズに確認する。


「ところで、ユニコーンとルティーヤーはなぜポポル村で待機してるんだ?」

「それはですね、全員でゴブリン退治に向かった場合、我々に索敵魔法を使える者がいませんのでゴブリンとすれ違う可能性があります」

「なるほど! その間に襲撃されては本末転倒だからな。それで、二人を待機させているのか」

「その通りです!」


 召喚獣が擬人化し、蘇生魔法が無い。そして、俺の知らない魔道具が存在する。

 この世界は『ミソロジーワールド』の世界のようだが、似て非なる世界かもしれん――。


 この世界のことを把握するまでは慎重に行動したほうが良さそうだ。

 とりあえず、現在の状況は大体把握できた。

 では、目的のゴブリンを退治に行くとするか。

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