第4章100話:洞窟の隠し通路へ

逃げていくスキンヘッドの盗賊。


その背中を、俺は黙って見送る。


ノルドゥーラが尋ねてきた。


「始末しておかんのか?」


「放っておけ」


と俺は告げた。


わざわざ追いかけて抹殺するほどの敵ではない。


そんなことよりも、俺は目の前の洞窟に意識を向けた。


「竜玉を取りにいく。いくぞ」


「わかった」


俺とノルドゥーラは洞窟へと足を踏み入れる。





洞窟内部。


青い鉱石がたくさんあり、それらが発光しているため、内部は暗くなかった。


まっすぐ通路が続いている。


しかしある程度進んだところで、俺は立ち止まった。


「ここの壁だ」


「ん? 何もないぞ」


「隠し通路になっているんだ。強く攻撃すると壊れる」


そういいつつ、俺は武術の構えを取った。


念力格闘術によって回し蹴りを放つ。


すると。


壁が壊れて、隠されていた通路があらわになった。


ノルドゥーラが感動の声をあげた。


「おお……本当じゃ! こんなところに通路があるとはのう!」


この通路は、普通に洞窟を探索していたら、まず気づかない。


ゲーム終盤まで進んで、ある場所で、ヒントを得ることができる。


そのヒントを読み解くと、この隠し通路の存在を知ることができるのだ。


「いくぞ」


と俺は言って、足を進める。


隠し通路を歩く。


やがて通路を抜けた先にあったのは、巨大な穴であった。


穴の下には闇が立ち込めていて、何があるのか見えない。


俺は言った。


「ここに飛び込む」


「え……」


とノルドゥーラが嫌そうな声を漏らした。


「この穴……下が見えんぞ」


「そうだな」


「それだけでなく、何か下におるではないか。おぞましい気配を感じるのじゃが」


さすが上級ドラゴンである刃竜だけあって、ノルドゥーラは、穴の下に潜む存在について感知しているようだ。


「そいつを殺すことで、竜玉を得られるということだ。だから穴に飛び込まなければならない」


「めちゃくちゃ抵抗があるのじゃが」


まあ、穴に何があるのか知っている俺と違って、何も知らないやつが飛び込むとなると、勇気が要るだろうな。


穴の底がどれぐらいの深さかもわからないし、そもそも地面があるとは限らない。


地底湖や間欠泉だまりがあるかもしれない……と考えたら、なかなか飛び込むには躊躇するだろう。


「まあ飛び降りてみればわかる。安心しろ。たぶん美しい場所だ」


と俺は告げてから、お先にジャンプすることにした。


穴の中に沈んでいく。


「ほんとに飛び降りよった。むう、仕方あるまい」


ノルドゥーラも渋々しぶしぶ、俺の後に続いて、飛び降りた。



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