第3章79話:戯言

ネアの殴打おうだが続く。


回転蹴かいてんげりが俺の脇腹わきばらを打つ。


さらに左拳ひだりこぶしを放ってくるネア。


それを俺は防ぐも、続くネアの右の拳で胸を殴られる。


「ッ!」


後ろにザザッと後退させられた。


直後。


ネアの足がムチのようにしなった。


ハイキックが飛んでくる。


俺はそのハイキックの直撃を食らって、地面に倒れた。


「ふう……」


ネアがひと息つく。


そして告げた。


「弱いわね」


ネアがあざ笑うように、続ける。


「この程度の強さで、私に勝つつもりでいたなんて……うぬぼれ、思いあがり、傲岸不遜ごうがんふそん。自己評価だけは無駄に高く、実力が伴わない。おのれを強者と信じる道化どうけ


ネアがボロクソに俺をけなしてくる。


「自分が劣等であると理解したでしょう? でも、あなたが特別なわけじゃない。人はすべからく小さき存在であり、精霊に管理される側。だからこそぬし刃向はむかうことを考えず、ただ与えられたエサをついばんでいればいいの。そして処分が決まったときは、黙って従えばいい。かしころす権利は、いつだってこちらにあるのだから」


倒れたまま、俺は動かない。


ネアの言葉を、話半分はなしはんぶんにしか聞いていない。


なぜなら俺の関心は別のところにあったからだ。


(サイコキネシスのレベルが上がった……)


実は戦闘中、ネアの攻撃を受けると、サイコキネシスの経験値が上がることがわかった。


だから、わざとネアに反撃せず、防御に徹することでサイコキネシスのレベルアップを図ったのだ。


そしていよいよ、サイコキネシスは進化を迎えた。


(サイコキネシスは、より高い次元へと成長した。また俺は、一段と強くなった)


そう思い、倒れたまま俺は、呵呵大笑かかたいしょうする。


「くくく、くははははははははァーッ!!!」


そして。


ふう、と深呼吸を一つした。


(そろそろ茶番は終わりにするか)


ゆっくりと起き上がる。


立ち上がり、服についた土をはらった。


「突然笑い出すとは。頭でもおかしくなったのかしら?」


とネアが言ってきた。


「いいや。俺は正常だ」


と答えながら、俺は告げた。


「これからお前を殺す。わざと攻撃を受け続ける手加減は、もう終わりだ」


するとネアが、小馬鹿こばかにしたように苦笑した。


「このおよんでそのセリフ……戯言ざれごとをほざく才能にだけは恵まれたようね」


そう告げるネアに、俺は不敵な笑みを浮かべる。


「戯言かどうかは、己の目で確かめてみればいい」


「言っておくけれど私は、まだ半分の力も出していないわよ」


「奇遇だな。俺も10パーセント程度の力しか出していないぞ」


俺は笑う。


ネアが面白くなさそうな顔で、俺を見つめる。


「……いいわ。ならば、戯言すら言う気になれないぐらい、徹底的に叩きのめしてあげる」


ふたたびネアが地を蹴る。


掌底しょうていを放ってきた。

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