第3章77話:格闘

精霊ネアが戦闘の構えを取る。


武器を持たず、無手むての状態での構え。


徒手空拳としゅくうけんか……?)


と俺は目を細める。


さっきはジャベリンを投げてきたから、てっきり槍で攻めてくるかと思ったが。


しかし、肉弾戦にくだんせんは望むところだ。


俺も念力格闘術で応戦おうせんさせてもらうとしよう。


俺は、壊れたミスリルソードを、無造作むぞうさに放り捨てた。


そして格闘の姿勢を取る。


「いくわよ」


とネアが告げて、地を蹴る。


地面すれすれを浮きながら滑空かっくうしてくる。


そのスピードは凄まじく、あっという間に俺の間合いに入ってくる。


「ッ!」


滑空した状態のまま、ネアがくるんと宙返ちゅうがえりをするように回りながら、俺のあごを蹴り上げようとしてきた。


その攻撃を、俺は身体をそらして回避する。


「シッ!」


どういう体幹たいかんの成せるわざなのか、ネアが空中でさらに身体をねじり、水平の蹴りを放ってきた。


その蹴りは、俺のひだり横顔よこがおを打ち抜かんと迫ってくるハイキック。


が、サイコキネシスを込めた腕で、俺はこめかみを守った。


「ぐっ!?」


ネアの素早い蹴りに、防御は間に合った――――が。


またしてもサイコキネシスの防護を、ネアの攻撃が上回る。


しのぎきれなかった威力が、俺の横顔を打ち、俺は横方向よこほうこうへ吹っ飛ばされそうになる。


「……ッ」


多少、吹っ飛ばされつつも、なんとか転倒せずに踏みとどまる。


だが、さすがにこめかみと横あごを打たれた衝撃が、脳震盪のうしんとうを起こした。


視界がふらつく。


(サイコキネシスの厚みが足りないか……!)


精霊ネアの強烈な攻撃力に、現在のサイコキネシスの防御では対抗できない。


もう少しサイコキネシスの強度を上げる必要がある。


「死になさい」


「!!」


ネアの声がすぐ耳元で聞こえた。


放ってくるのは俺の脇腹めがけた拳だ。


素早いパンチだったが、俺の反応は間に合った。


くるりとパンチを回避しながら、俺はカウンターで、ネアのこめかみに裏拳うらけんを叩き込む。


ズガッ!


と、俺の裏拳がネアに命中した。

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