第3章71話:高まる戦意

神殿騎士団の騎士や兵士たちが、困惑を示す。


この声は精霊が発したものであることは事実なのだが……


そもそも騎士団の人間には、それが本当に精霊の声なのか、判別がつかないからだ。


しかし、そんな騎士団へとげきを飛ばす者がいた。


「どうした!? 精霊の声が聞こえなかったのか!?」


雑木林から出てきたアレクシアである。


精霊に操られた彼女は、騎士団へと命令を発する。


「アンリを討てと、ネア様が直々に命じられたのだぞ! このめいに従わぬ者は、背信者はいしんしゃ汚名おめいまぬがれないものと思え!」


背信者。


神殿国において精霊にそむく者は、大罪人たいざいにんも同然。


ゆえに命令を拒絶する権利はない。


そして、アレクシアが『精霊ネアのご命令だ』と証言したのだから、さきほどの声が精霊のものであると、騎士団は認識した。


精霊から直々に使命を与えられたという事実が、騎士団の心に熱い火をともす。


「そうだよな」


「リースバーグ様が望むなら、応えなければ」


「精霊の仰せのままに!」


「アンリを討つぞ!!」


騎士団の兵士たちが気炎をあげながら、次々と剣をさやから引き抜いた。


戦意と士気がどんどん高まっていく。


俺はため息をつきそうな気分になりながら、精霊に向かって告げた。


「……ここまでお前に嫌われるようなことをした覚えがないのだがな、精霊ネア」


すると光のオーブが近づきながら、答えてくる。


「勘違いしないでちょうだい。別にあなたのことを嫌っているわけではないわ。ただ、排除すべき存在だと認識しているだけよ」


「同じように聞こえるが。……まあ、とにかくお前が、俺と敵対したがっていることはわかった」


俺は不敵に笑い、続けて告げた。


「神殿国による不誠実な仕打ち……一度は見逃してやったが、二度目はない。立ちはだかる者は全てねじ伏せる、という俺の信念に基づき、お前たちを虐殺する」


「愚かな。この状況で、あなたに勝ち目などあるわけないのに」


そんなネアの言葉に、俺は何も返さず、正面を向いた。


「もう後悔しても、遅いぞ。いったい誰に喧嘩を売ったのか、その身にわからせてやろう」


そう俺が告げた直後。


兵士たちの先頭にいた、男性騎士が叫んだ。


「斬り殺せえぇぇえええッ!!!」


次の瞬間。


気勢をあげる騎士団の兵士たちが、俺に向かって突撃を仕掛けて来た。

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